これからも表現が私を自由にしてくれる。バレエダンサーから看護師へ。生きやすい場所へ向かう今の心境

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私たちの自由な選択
腰塚安菜
腰塚安菜
2024-06-28
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きっかけはネット検索。ケアに携わり人を支える仕事へ

ーーバレエ一筋だったこよみさんですが、将来の仕事のことを考え始めたターニングポイントは何歳だったのでしょう。

こよみさん:自分の場合、20歳くらいだったと思います。19歳の時に単位制の高校に入り直し、卒業は22歳だったんですが、すごくまっさらな気持ちで「自分はバレエ以外だったらどんな職業に向いているのかな」と思って、ネット検索してみたんです。

ーーネット検索ですか。そこで、バレエを続けることは選ばなかったんですね。

こよみさん:自信がなかったんです。やっぱり、成功するのはひと握りの世界やし。私は病院で看護師さんに怪我でお世話になって、入院の経験もあったので、医療には興味を持っていました。そこから3ヶ月、本気で勉強をして看護学校の試験に合格しました。

ーーネットがきっかけでも、人を支える仕事に行き着いたことに驚きます。過去の怪我や病気も考慮して選んだと伺っていますが、今のリアルなお仕事の状況はどうですか。

こよみさん:今は週4日勤務で、病院ではなく、地域のデイサービスに通っています。初めは病院務めもしていたのですが、内科系に配属されたことが希望と合わなくて。私が本当にやりたかったのはスポーツ外科だったんです。

ーー看護師さんというと病院で働いているイメージが真っ先に思い浮かびますが、そのような現場なのですね。配属の希望も、これまでのバレエや怪我の経験が生きていると感じました。

こよみさん:仕事では、高齢者の方のサポートをしています。デイサービスにはお風呂に入りに来る目的で来る方も多いので、まず、いらした方の健康チェックをします。採血や点滴とおいったような大きな医療行為はしないけれど、看護師の観察力が必要となります。高齢者の方が、ドクターがいなくてもご自宅で健康的に暮らすにはどうしたらいいのかという視点が基本的に必要です。そして、介護している家族のサポートも仕事のひとつです。

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週4日、病院ではなく地域のデイサービスで看護師として働いている。

ーー高齢者の方々の直接的な支えになるお仕事ですね。

こよみさん:そうですね。でも、今はパートで、給与面では安定していないので「変えたい」という気持ちが大きくなってきています。職場は人間関係がいいので続けられないこともないのですが。

ーーこのままでも維持できそうだけど、現状は変えたいということですね。誰しも次に行く時は何らかの後押しが必要ではありますね。

こよみさん:今の職場では正社員の枠が埋まっていて、正社員になることが難しいので悩んでいます。ですが、仕事を欠勤していないで続けられていることは自分で自分を褒められる部分なんじゃないかとも思います。本当は副業でなにかしたい思いもあります。でも本業が看護師で、他に何が務まるのかと。頭の中は「どうしよう」でいっぱいです。

ーー夜勤の看護師さんも大変ですが、副業で看護師さんという肉体労働と掛け持ちするのは、どんなに体力がある人でもきついと思います。

こよみさん:こうして表に出ていると元気そうに見えている私ですが、お休みの日にぷっつり切れてしまうこともあります。元気でない時は何もかも放棄して寝続けてしまうことも。「今日は大丈夫かも」という日は、朝起きて、ちょっと朝食を準備して、昼にはお買い物に行って、帰宅して料理する。そんな普通のことができていれば「偉い」と思うようにしています。

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腰塚安菜

腰塚安菜

慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代から一般社団法人 ソーシャルプロダクツ普及推進協会で「ソーシャルプロダクツ・アワード」審査員を6年間務めた。 2016年よりSDGs、ESD、教育、文化多様性などをテーマにメディアに寄稿。2018年に気候変動に関する国際会議COP24を現地取材。 2021年以降はアフターコロナの健康や働き方、生活をテーマとした執筆に転向。次の海外取材復活を夢に、地域文化や韓国語・フランス語を学習中。コロナ後から少しずつ始めたヨガ歴は約3年。



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