快眠に導く食事|ぐっすり眠るために何を食べ、どのように暮らすべきか

 快眠に導く食事|ぐっすり眠るために何を食べ、どのように暮らすべきか
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夜ぐっすり眠れるように、ヨガマットの上でいろいろ試す人もいるだろう。だが普段の食事が睡眠パターンを乱しているとしたら、その努力も水の泡になってしまう。そこで、快眠を促す食事を紹介しよう。

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食習慣が睡眠の質に大きな影響を与えていた

近代アーユルヴェーダの父のひとりといわれるアチャリヤ・チャラカは、私たちが求める幸福や強さ、活力、知力、潜在力のほとんどは安眠によって決まると考えていた。それから2300年以上経った現在、多くの科学者たちがその説を支持している。
「睡眠は私たちの人生すべてに影響を与えている」と語るのは、アリゾナ大学で睡眠と健康に関する研究プログラムのディレクターを務めるマイケル・グランドナー博士だ。「体、精神、感情の健康維持には欠かせないものだ」。研究者たちは、睡眠不足は外見にも影響することも明らかにしているが、それについては、学術研究書を読まなくても納得できるだろう。
だが、食習慣が睡眠パターンに大きな影響を及ぼしていると言われたら、にわかには信じがたいかもしれない。「多くの人は、果物や野菜や全粒穀物から得られる必須のビタミンやミネラルが不足しているの」と言うのは、理学修士で米国登録栄養士、さらに米国栄養士会の広報担当を務めるエンジェル・プラネルだ。「おそらく、その人たちは昼も夜も体が本来の機能を果たせていないから、睡眠障害を引き起こしやすいでしょう」
それを裏付ける研究も始まった。『Journal of Clinical Sleep Medicine』に発表された研究によれば、食物繊維が少なくて飽和脂肪酸と糖分の多い食事は、浅眠や非回復性睡眠と関連しているという。非繊維質の炭水化物と糖分を大量に摂取すると、深部体温が乱れ、眠りを促すメラトニンという夜間に働くホルモンの分泌が減少すると研究者たちは推測している。

寝つきがよくなる食材とは

逆を言えば、食物繊維が豊富な食事は、回復をもたらす深い睡眠と関連していることになる。繊維質の多い食品は不健康な料理を減らし、メラトニンの分泌を促す可能性がある、と話すのは、研究チームの主任で、コロンビア大学栄養医学部の准教授を務めるマリー=ピエール・セント=オング博士だ。「確証を得るにはさらなる研究が必要ですが、糖質を減らして高繊維の食事を摂ることにマイナスな面はありません」。セント=オング博士は、できるだけ農産物や高繊維の炭水化物(特にキヌアやブルグアなど)を食事に取り入れることを勧めている。
寝つきが悪かったり熟睡できない人は、全体的に健康的な食事を摂ることに加えて、積極的に摂取するといい食品がある。食事と睡眠の関係における研究のほとんどが、セロトニン(リラクセーションや幸福感をもたらす神経伝達物質)の分泌を促したり、メラトニンやトリプトファン(セロトニンの生成に必須の睡眠をサポートするアミノ酸)を含む食品について言及している。
たとえば、『Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition』で発表された研究によると、4週間にわたって寝る1時間前にキウイ2個を食べ続けた結果、参加者の睡眠が大幅に改善されたという。キウイには、バナナやクルミと同様に高濃度のセロトニンが含まれている。さらに『Journal of Medicinal Food』で発表された研究では、メラトニンが豊富なタルトチェリージュースを朝晩約240㎖ずつ2週間飲み続けたところ、睡眠の質に改善が見られたという。また、ビタミンDとオメガ3脂肪酸も、セロトニンや睡眠の調整に大きく関わっていると指摘する研究結果もある。さらに食事に加えたい栄養素として、マグネシウム、カリウム、ビタミンB6がある。これらはセロトニンの生成を助け、神経系と筋肉をリラックスさせるので、体を睡眠状態に導く、とグランドナー博士は言う。
だからこそ、食べ物や飲み物の癒す力を軽視しないでほしい。温かいハーブティーや、スムージーやライスプディングなどの柔らかい食べ物は、眠気をもたらすコンフォートフードだ。『AmericanJournal of Clinical Nutrition』の研究では、GI値(血糖指数)の高い炭水化物を寝る4時間前に摂取したところ、より早く眠りにつける人がいるとわかった。炭水化物がトリプトファンを増やし、それによってセロトニンの生成も増えるためとみられている。このタイプの人は、ケーキやスイーツの場合とは逆に、メロンやジャスミン米、バスマティ米など栄養価の高い高GI値の食品を選んでみよう。また、メラトニンの豊富な食品(チェリーやバナナなど)が睡眠に及ぼす効果を試したければ、寝る1、2時間前に摂取するといいだろう、とグランドナー博士は勧めている。

良質な睡眠のための「適量」

何を食べるかに加え、食べる量も良質な睡眠への鍵となる。あまりに空腹だと逆に目がさえてしまうものだ。研究者たちは、快眠に必要な栄養素のすべてが判明していない段階で、偏った食事制限をすべきではないと注意を促している。逆に、食べすぎたり、胃にもたれるものや脂っこいもの、スパイシーなものをたくさん食べた状態で横になっても、胃酸が逆流して眠れないだろう。それに、消化に忙しくて体がリラックスできなくなる、と話すのは、コロラド州ボールダー在住のアーユルヴェーダ専門医のジョン・ドゥイヤーだ。いちばんいいのは、軽めの夕食として魚一切れと小皿やサラダ、繊維質の豊富な穀物などを、寝る2〜4時間前に摂ることだという。
眠る前にお腹が空いたときは、ヘルシーで軽めのスナックを食べるようにプラネルは勧めている。コップ1杯のミルクや、チーズ1片、スライスしたターキーは、トリプトファンを豊富に含んでいる。
快眠のために食事を見直すなら、今回紹介した食材を取り入れてみよう。どの料理にも睡眠をサポートする栄養素が含まれているので、緊張をほぐし、快眠への準備となるだろう。また、たっぷり時間をかけてマインドフルに食べれば、食事の効果がより高まる。「リラックスするには時間が必要です。つまりゆったりと穏やかに食べるということです」とドゥイヤーは言う。「何を食べ、どのように暮らし、どう眠るか……すべて調和が大切です。体本来の機能を高めるように努めましょう」

 

文●ヴィクトリア・クレイトンは南カリフォルニア在住のライターで、『アトランティック』などの全国誌に寄稿している。

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Text by Victoria Clayton
story by Victoria Clayton
translation by Sachiko Matsunami
yoga Journal日本版Vol.58掲載



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