【正解は、ひとつじゃない】ヨガ、バンライフの実践者が「変わりたいけど変われない人に伝えたいこと」
心のシグナルに耳を澄まし、生き方の違和感に気づくたびに自分にとっての快適を探し求めて歩んできたNAOKIさん。インタビュー前編では、「ヨガ×バンライフ」というライフスタイルに行き着くまでの道のりと葛藤、そして自らを「ヨガ体現者」と呼ぶ理由を語っていただきました。
交通事故を機に手放した正義感。その先でヨガに出合う
― 今はヨガを伝えているNAOKIさんですが、ヨガに出合うまでの道のりを教えてください。
「ヨガを教える前は消防士をしていました。子供の頃から正義感が強くて学校では生徒会長、クラブではキャプテンを務め”ザ・真面目”が正しいと思っていました。神様が見ているから信号無視はしないとか、路上でタバコをポイ捨てする人に注意して殴られたこともあったけど、それが正義だと思っていたんですね。僕にとって消防士は正義を映す鏡みたいに見えて、自分にぴったりだと思い中学生くらいから消防士になると決めていました」
― どのタイミングで消防士のNAOKIさんがヨガと接点を持ったのですか?
「消防士になって6年目の時に交通事故に遭って、整形外科の先生からリハビリにヨガを勧められたのがきっかけです。ヨガは以前にやったことがあって、その時は全然面白いと思わなかったです。激しいトレーニングばかりしてきたので、静かに座っていられないしポーズの効果も感じられなくて。でも、消防士であることがアイデンティティだった僕は、仕事を休んでいると自分が何者かわからなくなり、早く職場に復帰したい一心でリハビリのためにヨガに通いました。振り返ると、僕には生き方の模範になるように自分に課してきたルールがあり、仕事を休んだことでルールに沿って積み上げた正義感がゼロになっていくような、人生の皆勤賞を失う感覚がありました。今思えば曲がった正義感だし、ストイックになりすぎて周りが見えていなかったと思います」
正解のある世界から、正解が一つじゃないヨガに魅了
― 改めてヨガをやってみて印象は変わりましたか?それとも全然面白くないまま?
「正直に言うとやっぱり楽しくなかったですね。先生が左脚を大きく後ろに引きましょうというけど、大きくって何㎝やねんて。前の人はつま先を正面に向けているけど横の人は45度に傾いているし、どれが正解やねんて。先生に毎回質問するんですよ。このポーズの脚幅の正解は何㎝ですかって。すると先生から気持ちいい幅で、と答えが返ってきていつも正解がわからない。
自分の人生を振り返ると公務員しかやったことがなくて、白か黒で物事をわけられる正解のある世界で生きてきました。目に見えるものしか信じられずスピリチュアルや宗教、占いも嫌い。だから正解が人によって違っていいヨガに触れた時、なんだこの世界は!と思いました。最初は面白くなかったけど、僕の中でガチガチに固まっていたものに亀裂が入っていくのを感じた時、ヨガが頭から離れなくなりリハビリが終わってもヨガスタジオに通い続けていました」
― 頭から離れなくなって、気づいたら消防士を辞めてヨガの人になっていた?
「すごく失礼かもしれないけど、ヨガに行くと毎回わくわくするのに、職場で10年先輩の姿を見た時にそう思わなかったんです。違和感を覚えた僕は、このアイデンティティを形成している仕事を手放せば、自分の中のキャンパスを真っ白に戻せると思って辞表を出し、タイムリミットを1年と決めてヨガにコミットする生活をスタートさせました。
仕事を手放す不安や怖さはありました。でも、交通事故で強制的に立ち止まり快・不快を自問自答する時間ができて、生き方の違和感に気づけたのはよかったです。止まらず社会の流れに乗り続けていたらきっと気づけなかった。ヨガで太陽礼拝をしてタダーサナに戻った時、違和感に気づき脚の位置をちょっと調整するのは、ベクトルが自分に向いているからできることです。そうやって気づいた違和感には素直に従ったほうが、物事が好転するのを経験則でわかっていたので消防士の職を手放すのに躊躇はなかったです」
― 踏み出した先にどんなヨガライフが待っていましたか?
「ヨガって何だろうというのを探求するには、まずヨガ界で一番すごい人が誰かを知る必要があると思いネットで検索したら、ケン・ハラクマ先生がヒットしたんです。ちょうどバリ島でのリトリートがあり、1カ月間衣食住を共にしたらケン先生から何かをもらえると思って勢いで申し込みました。いざ参加してみると世界中から訪れたアシュタンギの中で初心者は僕だけ。練習はきついしマントラを唱え始めた時はやばい宗教かと思いましたよ。得たものは何かというと、僕はヨガとはこうであるという答えを見つけに行ったけど、ヨガに正解は存在せず追求し続けるものだということを教えていただき、それが『ヨガとは?』に対するその時の答えです。帰国後、学んだことをアウトプットしないと加速度的な成長は難しいと言われたのを機に指導者資格を取り、生まれ育った大阪でヨガスタジオを立ち上げて3店舗まで拡大することができました」
― ヨガを伝える側になりヨガ歴も長くなった今、NAOKIさんの中で「ヨガとは?」の答えに変化はありましたか?
「ヨガとは何かを伝える時、”多角的”という表現を使っています。愛とは何かの答えが一つじゃないのと同じで、ヨガは誰かの経験を通して具現化、具体化されて言葉になるものなのでいろいろな答えを持ち合わせていいと思っています。ポーズを求めている人にはポーズを伝え、生き方そのものであると言うこともあり、今は目の前の人に合わせて抽象と具体のレンジを切り替えながら、ヨガとは何かを伝えています」
*後編【「生き方としてのヨガを伝えたい」ヨガ×バンライフ、ヨガを体現するノマド旅で見つけた「本当の豊かさ」】に続く
〈プロフィール〉 西川順喜(NAOKI)さん
自身が運転するバンで移動しながら、ヨガと瞑想、生き方を伝える。2022年3月から全国47都道府県をバンで巡りヨガを多角的に伝える「GOEN」プロジェクト始動。2022年11月からは、YOGA3.0という世界観を実現するためのオンラインコミュニティ「THE VILLAGE」を立ち上げる。コーヒー好きが高じて浜松で「NOMAD COFFEE STAND」もプロデュースしている。
HP:naokinishikawa.com
instagram:@nomad_yogi_naoki
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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