【体の使い方で変わる】立ち上るときに膝が痛い人のための「よっこらしょ」にならない立ち方

 【体の使い方で変わる】立ち上るときに膝が痛い人のための「よっこらしょ」にならない立ち方
AdobeStock

ある特定の動作をするときに、体のどこかが痛いとか違和感を感じるというのはよくあることです。これらの動作は大抵の場合、いつもの通りに何も考えずに行なっているものですが、無意識の裏側には筋肉を萎縮させてしまうような思い込みがあり、それが痛みや違和感の要因となっているのかもしれません。そこで、体の効率的な使い方を探求するアレクサンダーテクニークの実践者が、痛みや違和感といった体の「負」とそれにまつわる思い込みについて、解剖学的な視点を交えて考察します。10回目のテーマは「立ち上がるときに膝が痛い」です。

広告

膝に負荷がかかる理由は立つ=体を上に持ち上げるという思い込み

椅子に座っている状態や正座から立ち上がるとき、あるいは階段の上り下りで、膝が痛いというのはよく耳にします。痛くはないにしても、膝をかばうように立とうとして思わず「よっこらしょ」と声に出してしまうこともあるかもしれません。膝が痛い、膝をかばう原因のひとつとして、歳と共に膝の関節にある軟骨(曲げ伸ばしの際のクッションとなる)がすり減ってしまうこと、脚の筋肉量が衰えてしまうことなどがあるといわれています。そして様々なところで、膝に負荷をかけないことの重要性や脚力を鍛える体操が言及されています。

そもそも立ち上るときに、膝に必要以上の負荷がかかってしまうのはなぜなのでしょう。それは立つという行為に対する思い込みからくる、無意識の動作が働いているからだと考えられます。立ち上るという行為を体を上の方向に持ち上げることと定義してはしていませんか?

体を上に上げようと思うと動作の順番がごちゃまぜになる

シンプルな例として、椅子から立ち上るまでを考えてみます。椅子に座っているときには重心のほとんどは座面と接しているお尻にあります。そこから立ち上るには、重心を脚に移動させて、股関節や膝が伸びることで行為が完了します。ところが体を持ち上げようとする意識が強いと、この順番が崩れてしまいます。上に上がろうと思うほど、重心がお尻に残ったままの中途半端な状態で胴体を持ち上げようとするため、太ももや膝にばかり負荷をかけることになるのです。

立ち上るときに体を上へ持ち上げようと思うと
illustration by Mia Hotaka

また上の方向を思うと、どうしても首の後ろや背中に過剰な力が入り、股関節を含む胴体の動きが硬くなってしまうものです。そのまま立とうとすれば、膝への負担はさらに増します。

このように、体を上へ持ち上げなければと頑張る思いは全身の過剰な力みとなり、行なうべき動作の順番を忘れさせてしまうのです。

上へより斜め前へ、そして段階を踏んで動くことを意識する

まず、立とうとするときに上へ上がろうと思うのをやめてみましょう。その代わりに斜め前の方向を意識してみてください。そして次のように段階を踏んで動くことを意識しながら立ってみましょう。

1. 頭頂部は斜め前へ、膝は前へ向かって動くと思いながら、お尻から脚へ重心移動
2. 重心が足首の上に乗ってから、脚(膝や股関節)が伸びる

立ち上るときは斜め前へ、段階を踏んで動くことを意識する
illustration by Mia Hotaka

1.と2.のそれぞれでいちいち静止して、行なっていることを確認する必要はありません。立つ前に1.と2.を頭の中で想像するだけでも十分です。そうすれば、脳がこれから行なうべき動作を整理して適切な指示を体に出してくれます。

筋肉や軟骨の衰えなども関係するので、脚力のトレーニングはもちろん必要ですが、それに加えて膝に少しでも負荷がかかりにくい立ち方ができれば、さらに楽になるのではないでしょうか。

広告

AUTHOR

ホタカミア

ホタカミア

ライター、グラフィックデザイナーとして会社と自宅の往復に追われる中、ヨガと出会う。また、30代後半から膠原病であるシェーングレン症候群と咳喘息に悩まされ、病と共に生きる術を模索するようになる。現在は、効率的な身体の使い方を探求するアレクサンダーテクニークを学びながら、その考えに基づいたヨガや生き方についての情報を発信中。解剖学にはまり、解剖学学習帳「解動学ノート」の企画・制作も行う。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

立ち上るときに体を上へ持ち上げようと思うと
立ち上るときは斜め前へ、段階を踏んで動くことを意識する