【知らないと損!暦×漢方の養生法】漢方家に学ぶ、季節の変わり目を快適に過ごす「生活習慣と食べ方」
冬至や立春など聞きなじみはあるけれど、実はあまりよく知らない、という人も多いのではないでしょうか。これらは、二十四節気と呼ばれる季節の区分。漢方家として活躍する櫻井大典先生は、この24の季節と暦にあわせた養生が健康的な毎日につながる、と話します。養生とはどんな過ごし方なのか、櫻井先生にお話をお聞きしました。新年を機に、次の季節に備えながら今できることを楽しんで過ごす“健康養生”を始めてみませんか。
知っておくとお得な暦×漢方の“健康養生”
――季節と暦にあわせた毎日の“健康養生”を紹介する書籍『二十四節気の暦使い暮らし -かんぽう歳時記-』(ワニブックス)を出版された櫻井先生。まずは、この暦に沿った生活、養生とはどういったものなのか、教えてください。
櫻井先生:もともと中医学は「季節の養生」と言われるほど、季節や暦を重視します。中医学のバイブルと呼ばれる『黄帝内経(こうていだいけい)』の冒頭にも、季節に沿った生活習慣を保つことが健康寿命を延ばし、人間が与えられた生命を全うできる生き方である、ということが書かれています。そもそも暦というのは天候を知るものであり、農業と関連しています。毎年この季節にはこういうことが起こるから準備をしておこう、など災害が起きないように備える。そのベースが暦でした。人間も自然の一部ですから、そういった天候の大きな変化を作物と同じように受けている。そう思うと、暦というのは自然の植物や動物と同じような生活スタイルを日々に落とし込んでいくきっかけ、ということになります。こういう風に季節が変わっていくから、そのために今準備できることを環境にあわせてやっていくと、毎日をより健康に、快適に過ごすことができる。それが健康養生の考え方ですね。
――現代人が忘れてしまいがちな感覚でもありますね。
櫻井先生:そうですね。おばあちゃんの知恵袋的な感覚。昔の人はみんな知っていたのに、といったことでもありますね。冬至にはカボチャを食べて、ゆず湯に入るんだよ、とざっくりとしたイメージはあると思うんですけど、なぜ?どんな効果があるの?という部分まで知っている人は少ない。暦は健康を考えるうえですごく重要な指標になっていて、暦に沿った養生を意識すれば毎日をより元気に過ごせる。知っておくとお得、と思っていただきたいです。
養生=予防。季節の変わり目の不調にも!
――本書には季節ごとの養生法が細かく紹介されていますが、改めての気付きも多いですね。
櫻井先生:暦にあわせて過ごすこと=養生ですから。そんなに難しいことでもないんですよ。冬の時期は朝日が昇るのも遅いし、日が暮れるのも早いですよね。それにあわせて、早く寝てゆっくり起きることがとても重要になります。というのも、冬場の冷えは体にも心にも大敵。だから、太陽が出て気温が上がってから活動し始めよう、というのが“養生”なんです。とはいえ、お仕事や家事で決まった時間に起きないといけない人も多いと思いますから、そのまま実行するのではなく睡眠時間を十分にとって部屋を暖めてから起きる、と考えるといいかもしれませんね。
――季節の変わり目の不調も改善につながるのでしょうか。
櫻井先生:もちろんです。最初にお伝えしたように、養生というのは備える、つまり予防のこと。ペンキがつかないように養生テープを貼っておく、と同じで「転ばぬ先の杖」が養生なんですね。生きるを養うために、今から準備をしておく。今を元気に過ごすためはもちろんですが、その先の季節をより快適に過ごすために養生する。その考えで環境にあわせて生活していると、季節の変わり目にも順応しやすくなります。先ほど、冬は早く寝てゆっくり起きることが養生だと言いましたが、それは活動的に動いた方がいい春に向けてエネルギーをためておく、ということでもあるんですよ。
旬の食材は快適に過ごすための自然からのプレゼント
――本書では、旬の食材を取り入れることも養生に大切だとありますが、旬の食材をとるべき理由を改めて教えてください。
櫻井先生:旬の食材、つまりその地域でとれるものは、その環境で快適に暮らすための自然からのプレゼント。これを取り入れるともっと楽に過ごせるよ、というものが旬になっていると僕は考えています。食材ごとの効能も季節に沿っているんですよ。例えば、秋になり乾燥してくると喉が渇いたり、空咳が出てきたりするので、喉の潤い補給に特化したナシが旬を迎えます。地域ごとに特色がある旬のものもありますよね。北海道では鮭がたくさんとれますが、鮭というのは体を温めて元気にして胃腸を整える、という効能があるので、寒い地域にはぴったりの食材です。一方、沖縄だと豚が有名ですが、豚は肉類のなかでもクールダウンさせる力や発汗に伴う潤いを補う力があるので、沖縄には最適ですよね。夏のスイカも同じです。天然の漢方薬と言われるスイカは、体にこもった熱をとる力と潤い補給力が強いので、発汗過多の夏にぴったり。全部、理にかなっている。環境にあわせて、より過ごしやすくなるための食材が旬なので、食べない選択肢はないのかなと思います。
――旬の食材をとるときに気をつけることはありますか。
櫻井先生:今は農業技術が進み、一年中いろんな野菜が食べられるので旬の見きわめ方が難しくなっているのかなと感じています。一般的には、安くなっている時期。そこが旬なので、ぜひ安くなっているものを食べてください。今だとスーパーで山積みになっている白菜などがおすすめですね。いち早く旬のものを食べる必要はないので、旬のはしりを高い金額で買わなくてもいいのかなとも思います。今の時期だとイチゴですよね。イチゴの旬は4~5月。こもった熱をとって喉の痛みを和らげたり、イライラを沈めたりする効能があるイチゴは、ちょうど温かくなってそわそわしたり、ストレスを感じる人が増える4~5月にぴったりなんですよ。
――購入時にしっかりと意識したいところですね。
櫻井先生:調理するときも、難しいことはしなくていいと僕は思います。単純にフライパンで焼くだけでもいいし、レンジで蒸すだけでもいい。できるだけ、加熱してとってほしいですね。
体内の温度は大体37.5から38℃くらいなんですけど、これは人が活動しやすく、消化酵素がちゃんと働ける温度なんです。この温度より低い冷たいものをたくさん食べると、胃腸が働きにくくなり、消化のためにより多くのエネルギーが必要になるので余計に疲れるんですよね。できるだけ加熱して食べることもポイントだと思います。旬がない肉類についても、季節や気候にあった効能のものを選ぶといいでしょう。暑い時期はクールダウンする豚肉、冬場は温める力の強い牛肉や鶏肉、羊肉、という感じです。食べる方の体質によって変わってくるので一概には言えませんが、寒い時期は体を温めるものを、暑い時期はその逆を意識するだけで、かなり過ごしやすくなるはずです。
教えてくれたのは…櫻井 大典さん
アメリカ・カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国・首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格取得。日本中医薬研究会に所属し、同志と共に定期的に漢方セミナーを開催。中医学の振興に努めている。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず新たな漢方ユーザーを増やしている。主な著書に、『こころとからだに効く! 櫻井大典先生のゆるゆる漢方生活』『こころの不調に効く! 気楽に、気うつ消し』(ともにワニブックス)、『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』(ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)、『予約の取れない漢方家が教える 病気にならない食う寝る養生』(学研プラス)ほか多数。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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