【頑張らない・ゆるい活動がポイントに】人気漢方家に学ぶ、中医学的な「冬から春にかけての過ごし方」
新年を迎え、今年こそ健康的に過ごしたい!と思っている方におすすめしたいのが、暦に沿った生活をする“健康養生”。立春や冬至といった二十四節気を意識しながら、その時期にあわせた暮らし方をすることが健やかな毎日につながる、と話すのは漢方家の櫻井大典先生。出版した書籍『二十四節気の暦使い暮らし -かんぽう歳時記-』(ワニブックス)の内容から、冬から春にかけての具体的な健康養生法をお聞きしました。
冬は防寒して頑張らないことが大事な養生
――前編では、季節や暦にあわせて過ごす健康養生について基本的な考え方をお伺いしましたが、今回は冬本番の今の季節と暖かくなり始める春に向けての過ごし方を教えていただこうと思います。
櫻井先生:まず、冬は頑張らないことが大事な養生ですね。というのも、前回お話したように養生というのは次の季節のための予防でもあるので、今この冬の時期に頑張りすぎてしまうと、春に不調が出てきてしまいます。春に不調になると1年がダメになってしまうので、冬の養生というのは実に大事なもの。暦というのは1年を通して考えますが、春は種をまいて発芽する季節。夏はそれが繁栄して、秋はそれを収穫する。冬は収穫したものを春に向けたエネルギーとして蓄える季節。そうすると、冬は頑張っちゃいけないし、春の発芽がうまくいかないと次の季節が全部よくない状態になることになりますよね。1日でいうと朝が1番重要にもなってきます。
――特に気をつけるべきことは?
櫻井先生:やっぱり防寒ですね。冷えは人間が活動する源である五臓の腎を弱らせることになりますから。腎が弱ると、生命活動力が低下して見た目はもちろん、体内の老化が早くなってしまう。防寒に気をつけて、体力温存に努めることが冬の養生です。特に、下半身の冷え。腰や足元の防寒に気をつけていただきたいですね。個人的には腹巻きとももひき、タイツは必須、くらいの気持ちです。くるぶしの靴下は全部捨ててくださいと言いたいです(笑)。
――旬の食材をとることも健康養生のひとつとお聞きしましたが、寒さが1年のうちでもっとも厳しい大寒(1/20~2/3ごろ)を迎えるにあたり、取り入れたい旬の食材を教えてください。
櫻井先生:体を温めてくれるものをぜひとってください。冬場によく食べられる鮭や牡蠣は、その効果があるのでおすすめです。あとは、黒糖生姜茶はどうでしょうか。冬の養生茶としてよく出されるものですが、もちろん砂糖にも効能があって、黒砂糖だと温める力や潤い補給する力があるので冬に最適。スライスした生姜とあわせて煮る、生姜のせんじ茶のようなものですね。でも、水分をとりすぎないように気をつけてください。よく1日に水を何リットル飲むといい、とか言われますけど、水のとりすぎが不調につながっている人って意外と多いんですよね。漢方では、胃腸は水分に弱いとされています。とればとるほど食欲もなくなるし、胃腸が弱ってくる。そうなると、全部が弱ってきてしまうんですよね。体が弱れば心も弱ってしまいますから。健康法で大切なのは、足し算よりも引き算。負担になるものを減らすことが一番大事です。胃腸が弱っているときは冷たいものや生ものを避ける。何か新しいものを取り入れて改善しようとしがちですけど、今やっている悪習慣を減らすことの方がよっぽど重要なのでは、と思います。
春はストレスを避けてゆるく活動すること
――春、暦でいうと立春(2/4ごろ)以降は、どんなことを意識するといいでしょうか。
櫻井先生:この時期は、活動し始めることですね。春は動き出そうとするエネルギーがあふれる季節なので、それにあわせて動いてあげること。冬に内側を向いていたエネルギーが外側に変わっていくので、できるだけ活動的に過ごすと調子が整う、と考えられています。ただイライラは不調のもとなので、そこには気をつけていただきたいですね。春はゆるく。自分のなかでルールを作るのも避けた方がいいと思います。活動しなくちゃ、やらなくちゃ、ではなく、ゆるい気持ちで散歩に出るとか、新しい趣味を見つけるとか。春は自分にも周りにも、そういった感覚でいることですね。髪型もタイトめに結ぶのをやめてみたり、ゆるい服を着てみたり。体にとっては、そういったささいなこともストレスだと思いますから。
――とはいえ、仕事や学校など、どうしても“やらなくちゃ”に縛られてしまうときもありますよね。
櫻井先生:中医学というのは、常に真ん中が大事、と考えます。「中庸」という言葉がありますけど、それを意識すると楽になるのかなと思います。年末年始グダグダしすぎてしまうのも、それで仕事に行くのがだるい、新生活がおっくう、といった気持ちを持つのも自然の流れだと思うんです。それに逆らうこともないし、その流れのなかでゆるく自分を真ん中に整えていく。ストレスを感じたり、頑張りすぎたな、と思ったりしたときはゆっくりお風呂に入ったり、自分の時間を作ったりして「中庸」にすればいいのかなと。食べるものも同じです。食べ過ぎてしまったら、次の日はおかゆで養生しようとか。お正月明けの七草がゆもその感覚ですよね。おせちなどのヘビーな食事を食べたあと、なかでも、葉野菜には解毒作用があるので、そういったものを食べて体内をきれいにしましょう、と昔の人はそれを文化のなかに組み込んできた。元気に暮らすために、そういったことを意識してみてはいかがでしょうか。自分のなかで調節してバランスをとること。どうやったら真ん中に戻せるかなと意識することが、養生になると思います。
自然の流れを意識した健康養生で毎日を元気に
――最後に改めて、暦とともに過ごすこと“健康養生”について、そのメリットを教えてください。
櫻井先生:会社や学校といった外の時間にあわせて生活している方がほとんどかと思いますが、人間はもっと大きなところ、自然の時間、自然の流れのなかで生きています。そこに目を向けてみる。季節を感じながら過ごすと、つまらない毎日がちょっと新鮮に感じられたり、健康とは?ということを改めて考えるきっかけになったりするのでは、とも思います。中医学や漢方を勉強しなくても、暦を見れば健康に過ごせるヒントがある。そのことを知っていただきたくて『二十四節気の暦使い暮らし -かんぽう歳時記-』という本を書きました。かわいい挿絵とともに、季節ごとの旬の食材や養生法をまとめましたので、1年通して日々の参考にしていただけたらうれしいです。冬至ならゆず湯、小寒なら七草がゆといった季節の楽しみごとや旬の行事も紹介しています。そういったものも楽しみの一つに、暦にあわせた健康養生で毎日を元気に過ごしてください。
教えてくれたのは…櫻井 大典さん
アメリカ・カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国・首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格取得。日本中医薬研究会に所属し、同志と共に定期的に漢方セミナーを開催。中医学の振興に努めている。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず新たな漢方ユーザーを増やしている。主な著書に、『こころとからだに効く! 櫻井大典先生のゆるゆる漢方生活』『こころの不調に効く! 気楽に、気うつ消し』(ともにワニブックス)、『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』(ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)、『予約の取れない漢方家が教える 病気にならない食う寝る養生』(学研プラス)ほか多数。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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