女性ホルモンの変調を感じたら…更年期の不調に効く「3つの養生法」【漢方医学に学ぶ、更年期対策】
さまざまな不調が起こりやすい更年期。その上手な付き合い方や、楽に乗り切るための養生法について、漢方医の森裕紀子先生に、漢方医学の見地から教えていただきました。
更年期とうまく付き合う!漢方医学的養生法
更年期は体が大きく変わる時。食事や運動などを見直し、養生で体を整えましょう。
養生法1⃣食べ方:食の基本を見直そう
漢方の養生というと特別なことをするイメージがありますが、森先生が教えてくれたのは、とてもシンプルです。
「特定の食材が体に良いと聞くと、それが品薄状態になったりしますが、人によっては逆効果になっている場合も。たとえば、太っていない人が糖質制限を行うと、胃の調子が悪くなることがあります。流行りのスムージーも、お腹が冷えやすく、胃腸が弱い人には向きません。何か特別なことをする前に大事にしてほしいのが、食の基本。食事を規則的にとる、腹八分目にする、バランスよく食べるなど、当たり前のことが当たり前にできているか見直してみましょう」
◎チェックポイント
☑ 腹八分目
☑ 規則正しくとる
☑ 情報に振り回されすぎない
☑ 偏らず、いろいろ食べる
養生法2⃣健康チェック:体の声に耳を傾けよう
体の状態は季節によって変わり、その日の活動や食事、睡眠、心の状態にも影響を受けます。そんな体の変化を感じとることも大切と、森先生は言います。
「たとえば水のとり方。1日に2ℓ飲むと健康に良いからといって、何も考えずに毎日2ℓを飲み続けるのではなく、自分の体を信じ、小水の出方、汗のかき方などを見ながら判断しましょう」
森先生がすすめる観察ポイントは、健康のバロメーターといわれる排泄や舌。睡眠時間の確保も大切だそうです。
「疲れは眠らないと回復しません。睡眠はいちばん手軽で安いサプリなんですよ」
◎チェックポイント
☑ トイレの回数をチェック
☑ お小水&便の状態を確認
☑ 睡眠をしっかりとる
☑ 舌の状態を把握する
【健康なとき】
舌全体が淡紅色でうっすらと白い苔がついている。
【二日酔いやむくみがあるとき】
舌に歯型がつき、舌のふちがギザギザになっている。
【風邪の後や胃腸が不調のとき】
舌全体に、舌苔(ぜったい)がついて白っぽく見える。
養生法3⃣体力づくり:軽い運動を習慣づける
漢方医学的にみると、運動は「気」と「血」の巡りを良くし、汗をかいて余分な「水」を出す働きがあり、健康に良いとされています。ただ、頑張りすぎると「気」を消耗し継続できないため、軽めの運動から始めるのがよいのだそう。森先生のおすすめは散歩です。
「1日1万歩を目指して歩きましょう。それが楽にできるようになると体力がつくので、次のステップとして、習慣化できるような運動を見つけては。ヨガもいいですね。また、更年期以降は骨の強化も必要です。階段の上り下りやエア縄跳びなども取り入れたい運動です」
◎チェックポイント
☑ 1日1万歩を目安に歩く
☑ 階段の上り下りを意識的にする
☑ ヨガなどを習慣に
「あれ?」と思ったら「漢方ドック」もおすすめ
北里大学東洋医学総合研究所の漢方ドックでは、不調の原因や体質を、脈診、舌診、腹診という漢方特有の診察方法を用い、虚実、寒熱、気血水という漢方の概念により、総合的に診断します。不調がある場合や漢方医学の診断に興味がある方は受診してみるのもおすすめです。
<漢方医学的診察>
【脈診】【舌診】【腹診】
<漢方医学的な体質診断>
【虚実】病気に対する抵抗力・反応力を診断。充実していれば“実”、低下していれば“虚”と判断。
【寒熱】体の状態が“寒”なのか、“熱”なのかを判断。
【気血水】心身の健康な状態を維持するのに欠かせない“気血水”という3要素のバランスを判断。
男性にも更年期障害はあります
男性も男性ホルモンの低下による不調が起こることがあります。ただ、その減少速度はなだらかで個人差も大きいため、女性のように明確な時期はなく、40代以降であればいつでも起こりえます。主な症状は、やる気が出ない、よく眠れない、ほてり、性欲の低下などです。
教えてくれたのは…森 裕紀子先生
北里大学東洋医学総合研究所漢方鍼灸治療センター副部長。産婦人科専門医であり、漢方の専門医でもある立場から、西洋医学、漢方のメリット、デメリットを熟知し、最適な方法を選んで治療を行っている。
『更年期 ホルモンの変調を感じたら読む本』(法研)
更年期障害の基礎知識から、さまざまな不調に対する西洋医学と漢方の上手な使い分け、養生の仕方などをわかりやすく解説した本。
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