【男性の更年期】まずは知っておくことが大切。命に関わることもある「男性更年期障害」原因と注意点

 【男性の更年期】まずは知っておくことが大切。命に関わることもある「男性更年期障害」原因と注意点
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永田京子
永田京子
2022-12-22
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「男は強くなくては」といった刷り込みも症状を抱え込む一因に

では、男性ホルモン(テストステロン)は私たちの体の中でどういった役割をしているのでしょうか。保健体育の授業などで、男性ホルモンは男性らしい体を作る働きがあると学んだことがあるかもしれません。しかし、男性ホルモンの働きはそれだけではありません。

・骨や筋肉を発達させる
・内臓脂肪を抑える
・精子を作る、性欲を高める
・判断力・記憶力を高める
・免疫力を保つ
・骨密度を保つ
・動脈硬化を防ぐ

こうした働きで、私たちの体を守ってくれています。

この男性ホルモンが急激に下がって起こるのが、男性更年期症状です。男性ホルモンの急な変化には、年齢だけではなく身の回りの状況、つまり環境も大きく関わっています。最も症状が出やすい時期、55歳から65歳のころというのは、環境が大きく変化しやすい時期です。定年退職する、親の介護が始まる、子どもが就職して家から巣立っていく、などの変化がこの時期に重なります。こうした変化は、たとえ喜ばしいことであっても生活に変化を来たすことで知らない間に大きなストレスとなることがあります。

また、男性ならではの状況も関係します。男性は子どものころから「男の子だから弱音を吐いちゃだめ」「男の子だから泣くなんてみっともない」「男性はお金を稼いでこそ価値がある」と言われて育ってきた人も多いでしょう。その結果、弱音を吐きにくい、体調不良を口に出しにくい状況に身を置きがちです。さらに、女性の更年期には、閉経や月経周期の変化といった指標がありますが、男性にはわかりやすい指標がありません。そして、女性の更年期はよく知られている一方で、男性の更年期はまだよく知られているとは言いがたく、どこに相談に行けばいいかわからない、誰かに相談しにくい、また、相談する先も限られているのが現状です。このように男性は、女性以上につらい症状を抱え込みやすい環境に置かれているともいえます。

女性の更年期症状と似た症状が多いがうつ症状が特に出やすい

では、同じ更年期でも、男性と女性では症状は異なるのでしょうか。実は、症状の種類は女性とあまり変わりません。どちらの場合も、性ホルモンの低下とそれに伴う自律神経の乱れによって、様々な症状が起こります(下の図参照)。その種類は200種類とも300種類とも言われます。男性特有の症状として現れるのが勃起障害であり、これがひとつの更年期の指標になるかもしれません。

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資料提供:NPO法人ちぇぶら

女性と同じ症状が多いものの、注意しなければいけないのは、男性の場合は心の症状が出やすいという特徴があることです。日本の自殺者数は令和3年時点で約2万人*とされています。男性更年期の多い世代(50代、60代)だけを見ると約4000人、全体の5分の1にも当たります。もちろん全員が更年期障害によるうつ症状がきっかけとなっているわけではありません。しかし、当事者はもちろん、家族や職場などの周りの人が男性更年期の存在や症状を知っておくことで、少しでも身近な人の更年期障害に気づき、自殺者数を減らせるのではないかと思わずにはいられません。

*厚生労働省自殺対策推進室、警察庁生活安全局生活安全企画課「令和3年中における自殺の状況」(令和4年3月15日)

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永田京子

永田京子

NPO法人 ちぇぶら代表理事、更年期トータルケアインストラクター 1,000名を超える女性たちの調査や医師の協力を経て “更年期対策メソッド”を研究・開発・普及。口コミで広まり、企業や医療機関など国内や海外で講演を行い述べ3万人以上が受講。2018年カナダで開催の国際更年期学会で発表。著書「女40代の体にミラクルが起こる!ちぇぶら体操(三笠書房)」、「はじめまして更年期♡(青春出版社)」。



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