股関節が硬いことは悪い?悪くない?|ヨガ解剖学
第3の神話:強い臀部=安定した股関節
「お尻」または「臀筋」と言う時には通常、お尻の肉付きのいい部分、つまり大臀筋のことを指している。この大きくて力強い筋肉は、股関節を動かすうえで重要な役割を果たしている。大臀筋は、股関節の伸展と外旋の両方を行う。しかし、股関節を安定させようと思ったら、中臀筋に注目しなければならない。中臀筋とは、股関節の外側を覆っている扇状の厚い筋肉で、骨盤の上端部(腸骨稜)を大腿骨の先端につなげている。股関節を力強く安定させるには、中臀筋を強化する必要がある。ランジでは、中臀筋が前脚の股関節と腰を体の正中線の方に向かってしっかり固定させる。
中臀筋を働かせると、大腿骨頭が寛骨臼にぴったりと収まって股関節が安定する。反対に、中臀筋が弱いと、腰が横に飛び出たり傾いたりする。このような理由から、ヨガでは「お尻で骨盤を包むようにして」という指示が出される。
第4の神話:あらゆる問題は股関節から生じている
多くのアスリート(特に重量挙げ選手、ランナー、自転車競技選手)は、矢状面(しじょうめん)(体の正中線に平行に、体を縦方向に左右に分ける面のこと)での動きを頻繁に繰り返すために、大腿四頭筋が優位になりがちだ。ランナーの股関節が屈曲と伸展をどれほど繰り返しているのか考えてみよう。この動きを繰り返しながらランナーは脚を引き上げて前に出した後、後ろに戻しているのだ。大腿四頭筋と臀筋の強さに差がある場合、動きを繰り返すにつれてこの差がますます大きくなっていく。さらに、中臀筋が仕事を怠けていると、大腿四頭筋が股関節を安定させる役割を果たさざるをえなくなる。これは、きわめて効率が悪いだけでなく、長期的には骨盤のアライメントを狂わせ、ハムストリングを緊張させ、腸脛靭帯(いわゆるITバンド)に炎症を引き起こして、走力を低下させるさまざまな問題が腰と膝に生じてくる。
第5の神話:硬い股関節は力強い
どんな筋肉でも使いすぎと(ランナーの大腿四頭筋にみられるような)収縮の繰り返しによって硬くなるが、その反対に、十分使わずに衰えた筋肉もやはり硬くなる。一日中机に向かって座っていると、股関節の受動的屈曲によって、やがては股関節屈筋の力強さも長さも失われることになる。体は刺激(または刺激の不足)に順応するため、股関節屈筋が短く弱くなるのだ。同じように、中臀筋の硬さは十分であっても力が弱くなることがあり、すると安定性の欠如からさまざまな問題が引き起こされる。中臀筋の衰えこそが、ランナーにみられる使いすぎによる損傷の根本的な原因だ。残酷なことに、症状が体のほかの場所に現れる(ITバンド、膝または腰に現れることが多い)ため、たまにしか運動をしない人にとっては問題の発生源を正確に把握することが難しい。このことだけをとっても、ランナーやトライアスロン選手、重量挙げ選手にとっては中臀筋の調整に気を配る十分な動機となるはずだ。中臀筋の調整に気を配っていけば、皆さんの体はこの先ずっと活動的でよく動き痛みを感じさせないという形で皆さんに感謝するだろう。
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