子どもの運動不足にはヨガが有効!理由と「子どもがやってはいけないポーズ」は?理学療法士が解説
やってはいけない!筋トレポーズ
チャトランガ
腕立て伏せに似たもので、上肢や体幹の筋力強化にオススメです。しかしコアの力がうまく使えないまま行うと、腰に負担をかけたり、翼状肩甲といって肩甲骨が浮き出る障害につながる可能性があります。
シットアップ
腹筋の強化に欠かせない上体起こしですが、足を伸ばして行ったり、反動をつけて行うとまだ未熟な腰椎への負荷が大きくなってしまいます。また、仰向けで脚を上に上げたところから床へ下ろしていくレッグダウンという腹筋の筋トレも同様に、腰椎へ負担をかけやすいです。ヨガではナバーサナなどのアレンジで腹筋強化する場合に注意が必要です。
ツイスト
テニスでサーブをしたり、サッカーでボールを蹴るなどの捻り動作に有効なトレーニングですが、背骨の椎体がまだ完成していない成長段階の子どもが脊柱を捻ると、腰椎分離症のリスクがあります。ヨガではヴィーラバドラーサナやアンジャネーヤーサナで上体を捻るようなアレンジは控えましょう。
ジャンプ
ジャンプ動作のあるスポーツのトレーニングや、下肢の筋力や瞬発力の強化になります。ヨガではジャンプ動作はほとんどないですが、まだ関節が未熟な子どもが行うと、特に膝関節に負担をかけてしまい、オスグッド・シュラッダー病という膝の疾患になるおそれがあります。私も子どものオスグッド病のリハビリをたくさん担当しました。
やってはいけない!ストレッチポーズ
スプタヴィラーサナ
正座から身体を後ろに倒して大腿四頭筋を伸ばすポーズです。柔軟性が低い子どもが行うと、腰へ負担をかけたりオスグッド病の原因になりやすいです。また膝を捻るので膝の靭帯にも負担をかけます。
ハラーサナ
背中の上部がストレッチされて気持ちのいいポーズですが、首への負担が非常に大きいポーズです。成長段階の子どもには不向きだと考えられます。子どもだけでなく、大人が行う場合ですら近年注意喚起されているポーズです。
ウパヴィシュタコーナーサナ
股関節の柔軟性を高める有名な開脚前屈です。反動を使わず自分でゆっくりと行う場合は大丈夫ですが、他人に背中を押してもらい無理な力で行うと危険です。反動を使ったり強い力で後ろから押されてしまうと、剥離骨折や靭帯や腱などの断裂のリスクが高まります。
首の後屈
首周りのストレッチとして、頭を後ろに倒して首の前を伸ばすことがあります。首は後屈には非常にデリケートにできていて、頚椎を必要以上に伸展させたり、猫背姿勢のまま頭だけ後ろに倒すようなやり方をすると、頚椎を痛めやすいので危険です。
まとめ
ヨガで子どもがやってはいけないポーズがあることが、意外だったかもしれません。
まだ筋肉や骨や関節が未発達の子どもたちの身体の使い方には充分な注意が必要です。
ただ、これらのポーズを一切禁止すべきいうわけではありません。子ども対象のヨガクラスや、家でやるエクササイズとして少しなら取り入れても良いと思います。
しかしここで紹介したポーズを、回数をたくさん行わせたり、スピードを上げて反動で行わせると、間違いなく障害につながります。
正しいやり方や別のオススメのポーズは次回のコラムで説明しますが、強度をできるだけ下げて、そのポーズをコントロールしやすい方法で必ず行いましょう。保護者や部活の顧問やコーチ、子どもの運動指導者には、未来ある子どもたちのために、このことをぜひ知っておいていただきたいです。
参考:
厚生労働省ホームページ 「身体活動・運動」(2)児童・生徒における現状と目標
文部科学省ホームページ「幼児期運動指針ガイドブック」
中野ジェームス修一「医師も勧める子どもの運動」徳間書店,2020
AUTHOR
堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。2006年に渡米し全米ヨガアライアンス200を取得。その後ヨガの枠をこえた健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士資格を取得。スポーツ整形外科クリニックでの勤務を経て、現在大学病院にて慢性疼痛に対するリハビリに従事する。ポールスターピラティスマットコース修了。慶應義塾大学大学院医学部博士課程退学。公認心理師と保育士の資格も持つ二児の母。
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