子どもが自分の感情をコントロールできるようになるために親ができること【後編】

 子どもが自分の感情をコントロールできるようになるために親ができること【後編】
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石上友梨
石上友梨
2021-10-21

どうやったら子どもの感情は発達し、自分で自分を癒し、律することができるようになるのでしょうか。2回に渡って、子どもが感情コントロールできるようになるために親ができることを紹介していきます。今回は後編です。

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前回から「子どもが自分の感情をコントロールできるようになるために親ができること」についてご紹介しています。子供の感情コントロールには親の共感が重要です。しかし、「子どもの感情をすべて共感していたら、わがままな子にならない?」と心配になるかもしれませんね。今回は、共感をしてもわがままにはならないこと。特に「ネガティブな感情」を大切にする重要さについてお伝えします。

共感しても子どもはわがままにならない

子どもの感情を共感したり認めたりすると「わがまま」になるのでは?と心配になるかもしれません。しかし、子どもの感情を認めることは、わがままではなく、感情コントロールする力につながります。他者から感情を認めてもらった経験がない子は、自分の感情を認めることが出来ません。そして、他者の感情を認める事も出来ません。子どもの頃にしっかりと感情を認めて受け止めてもらった経験を積むことが、成長した後に人を思いやる力につながるのです。

感情を感じることは「当たり前」のこと

ストレス場面でさまざまな感情を感じることは当たり前のことです。「負けて悔しい」「邪魔をされて腹が立つ」「うまく行かずにイライラする」など、すべて普通のことです。特に「怒り」については、良くないものと考えている人もいるでしょう。しかし、怒りはすべて悪いものではなく、正当な怒りもあります。例えば、理不尽に怒られれば、怒りを感じても当然です。大人の都合を優先してきちんとした説明がなかったり、感情や考えを頭ごなしに否定したり、不当に扱われていると感じれば、誰だって怒りを感じて当然なのです。

親の前だけ良い子になってしまう!?

子どもの感情を認めずにいるとどうなるのでしょうか。子どもは自分の感情を無視して、感情をなかったこととして切り離してしまうかもしれません。しかし、もともとあった感情を無視しても、感情は無くなりません。それは溜まりに溜まって、違うところで爆発することがあります。例えば、親の前では理想的な良い子でいても、学校や保育園など親がいないところで感情が爆発して、その場にふさわしくない行動を取ってしまうかもしれません。感情を切り離して、いつ爆発するか分からない爆弾を抱えることは、ストレスへの弱さにつながります。ありのままを認められずに、他人と比べられたり、理想の子どもになるようにプレッシャーをかけられたり、空気を読むように求め続けられることは、発達途中の子どもにとっては感情の切り離しにつながるリスクがあります。

感情は認めるが、行動はルールを守る

感情を認めることと、子どもを叱らずに言いなりになることは違います。例えば、子どもが自律できるようにサポートする事は親の大切な役割です。例えば、睡眠時間を削らないようにと、「ゲームは1日何時間まで」とルールを決めているとします。もし、「もっとやりたい」と子どもが暴れるからゲーム時間を伸ばしていたら、子どもはゲームをやりたい時は暴れることを学んでしまうかもしれませんね。そこで、感情と行動を分けて考えることが大切です。「もっとやりたい」という想いは共感しつつ、決めたルール(ゲームを何時間でやめるという行動)は譲らないことです。もちろん、お手伝いをしたらゲーム追加30分など、ルールを見直す柔軟さは必要です。しかし、ルールが先にあるべきです。暴れた後に、「さっきお手伝いしていたから、その分30分伸ばしていいよ。今からルールを変えよう」と後付けするのではなく、ルールを決めた上で守れるような先回りを意識しましょう。

ネガティブな感情を大切にすること

ポジティブな感情しか認めてもらえなければ、親に愛されるためにネガティブな感情を切り離してしまいます。子どもがあらゆる感情を大切にするために、ネガティブな感情にも共感を示し、言葉だけではなく態度で示しましょう。例えば、子どもが泣いたり癇癪を起こしたら、「悲しいね。泣いてもいいんだよ。」「怒って当然だよ」と言いながら、眉間に皺を寄せ、耳を塞いでいたら、子どもは自分のネガティブな気持ちを大切にしてもらっていると感じられないでしょう。どのような感情も認めて共感しましょう。そして、子どもがネガティブな感情をあきらかに感じていても表現しない時は、「あなたのつらい気持ちを知りたいと思っていること」を伝えたり、子どもが身体で感じているつらい気持ちを想像して代わりに言葉にしてあげましょう。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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