【65歳以上、安全で効果的なシニアヨガの行い方】あれこれ疑問に理学療法士がアドバイス
ポーズは「静」か「動」どちらが良い?
答えは、シニアヨガの場合ポーズは静止せずに動きをつけた方が安全です。
筋肉の収縮様式には、大きく分けてこの3パターンがあります。
①等尺性収縮(アイソメトリック )
・・・筋肉の長さを変えずに活動する様式
②求心性収縮(コンセントリック)
・・・筋肉の長さを縮めながら活動する様式
③遠心性収縮(エキセントリック)
・・・筋肉の長さを伸ばしながら活動する様式
通常ヨガはポーズを静止してキープすることが多いので①が当てはまりますが、その際「バルサルバ現象」といって、呼吸を止めがちになり、特にシニアの方は血圧がどうしても上がりやすい傾向があります。高血圧の方も多く危険なため、ポーズは静止せずにフローで流れるように、イメージはラジオ体操のように動き続けたほうが呼吸もスムーズに流れやすいです。
また筋トレ効果も、実は③②①の順に高いことが明らかになっています。
一方で、関節運動が起こらない①が、シニアの方には最も安全で、運動時の痛みも伴いにくいとも考えられます。
「運動の4要素」で最も重要なものは?
運動の4要素とは、ヨガに限らず運動で重要となる4つの要素のことです。様々な定義がありますが、私はこの4つと考えています。
・柔軟性
・筋力
・バランス能力
・持久力
この4つの中でシニアヨガの場合最も重要なのは、「筋力」です。筋力は90歳や100歳で鍛えても向上が見込めることが研究で分かっています。また、筋力がついてきたら、バランス能力も付随して高まりますし、心肺機能などの持久力も養われます。適度な柔軟性も大切ですが、筋トレ効果のあるヨガポーズに積極的にチャレンジしてください。
上半身か下半身どちらを鍛えるべき?
先程「筋力」を優先して高めることが重要だとお話しましたが、さて上半身か下半身、どちらを優先して鍛えるべきでしょう?
答えは「下半身」です。全身の筋肉の70パーセントが下半身に存在します。筋肉量は20歳をピークに40歳から1年に1%ずつ落ちていくと言われています。特に下半身の筋肉量の低下が著明になります。ですので、下半身の筋肉を鍛えるヨガポーズをどんどん取り入れてください。座った姿勢や寝た姿勢でのポーズは下半身の筋トレ効果はなかなか見込めません。
まとめ
今回は理学療法士の視点から、安全で効果的なシニアヨガを行う上で知っておいてほしいポイントをお話しました。これらは私が病院で高齢の患者さんのリハビリを行う際も意識していることです。
若々しくお元気に見えたとしても、やはりシニアの方の場合様々な疾患やリスクを抱えている場合があるので、ヨガでは注意しなくてはいけないことがあります。それらを踏まえた上で、指導者にとっても参加者にとっても、楽しく有意義なシニアヨガのひと時を過ごしてもらえると幸いです。
参考:島田裕之,土井剛彦「認知症予防プログラム コグニサイズ入門」ひかりのくに,2015
園部俊晴「健康寿命が10年延びるからだのつくり方」運動と医学の出版社,2017
AUTHOR
堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。2006年に渡米し全米ヨガアライアンス200を取得。その後ヨガの枠をこえた健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士資格を取得。スポーツ整形外科クリニックでの勤務を経て、現在大学病院にて慢性疼痛に対するリハビリに従事する。ポールスターピラティスマットコース修了。慶應義塾大学大学院医学部博士課程退学。公認心理師と保育士の資格も持つ二児の母。
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