【縫うマインドフルネスの実践法】ヨガ的「スローファッション」のすすめ

Natalia Khimich/ISTOCK, The Patternbase LLC/ISTOCK

【縫うマインドフルネスの実践法】ヨガ的「スローファッション」のすすめ

ヨガジャーナルアメリカ版の人気記事を厳選紹介!

衣替えの時期を迎え、私は去年のお気に入りのジーンズを引っ張り出した。さて、まだ穿けるだろうか。
ジッパーがすっと上がり、ジーンズはすぐに体になじんだ。でもお尻に大きな穴があいていた。継ぎ当てをしなければ。ジーンズの穴を見て喜ぶ人は少ないだろうが、私にとっては大好きな裁縫ができる絶好のチャンスだ。10代の頃は勢いよくミシンを踏んでドレスを縫い、1時間後にはそれを着てパーティーに出かけたものだ。でも近頃は時間をかけて縫う。私はこれを〝縫うマインドフルネス〞と呼んでいる。マインドフルネス瞑想と同様に、意図的に意識を集中させるのだ。瞑想では呼吸に意識を向けるが、縫うマインドフルネスでは一目縫うごとに指先にあたる生地や針や糸の感触に意識を置く。

私はジーンズを持って廊下を進み、縫製道具の収納棚に向かった。手に入る中でいちばん大きなサイズの棚だ。真ん中の段に置いてあるワインの木箱には型紙を、ガネーシャ柄の2つのランチボックスにはリックラック(平紐)、リボン、装飾品、ゴム紐を入れている。布は青、黒、赤、柄物の順に並べ、さらに冬用の柔らかいコーデュロイやベルベットと、暖かい季節用の手織りコットンやリネンを分けてある。籐編みの筒形かごにはお気に入りの端切れ布のコレクションが詰まっている。
私はひざまずき、端切れ布に一枚ずつ触れながら、継ぎ当てにちょうどいい大きさで、ある程度の伸縮性と強度を兼ね備えた布を探した。継ぎ当てする部分は実は去年と同じだ。毎年同じところに穴があいてしまう。私は端切れ布の中から、去年枕をつくったときに余った日本の伝統的な藍染め絞りの丈夫な布を選んだ。我が家では布が捨てられることはまずない。
縫い物中にふと注意がそれると、まるでヴィンヤササンスクリット語で〝配置する〞という意味)の練習のようだと感じる時がある。ヴィンヤサには〝始まる、持続する、終わる〞の3つの要素があり、一つが終わるとまた次が始まる。針が布に入り、布を通り抜けて、裏から出てくる様子に意識を向ける……。始まり、持続し、終わる。ジーンズの一部分が消え、今度は継ぎ当てが、一目縫うたびに、呼吸をするたびにその一部となっていく。

ヨガ的「スローファッション」の実践
瞑想では呼吸に意識を向けるが、縫うマインドフルネスでは一目縫うごとに指先にあたる生地や針や糸の感触に意識を置く。
photo by  Natalia Khimich/ISTOCK, The Patternbase LLC/ISTOCK 

縫い物を始めると、昔のことや裁縫を教えてくれた母を時々思い出す。最初は枕カバーの簡単な刺繡から始め、大きくなるにつれてミシンで複雑な衣類を縫う方法を教わった。裁縫好きなのは母ゆずりだと思うと心が満たされるし、持続可能なスローファッションに向かう世界的な動きについて学ぶきっかけにもなった。
手縫いや修繕や継ぎ当てなどの伝統工芸は、かつては貧しくて新しい服を買えない人々が習得する低レベルの技術と見なされていたが、この20年でインスタ映えする芸術としてもてはやされるようになり、おかげでファストファッションによる環境汚染や、大切な地球資源の浪費が注目されるようになった。綿花栽培の肥料、染色用の化学物質、合成繊維をつくる石油はすべて、大量の二酸化炭素や産業排水を生み出している。私も含めてスローファッションへの移行を支持する人々は、再利用され、再考され、再生されたスタイルの服を身に着けるようにしている。安価でトレンド重視、使い捨ての服を生み出すファストファッションの見直しを世界に促すことにもなるからだ。
だめになれば必然的に捨てられる安価なシャツ、ヨガパンツ、パーカ、靴を買うことは、残念ながらゴミ埋め立て地の拡大化や最低賃金以下の労働、繊維工場での危険な労働環境の後押しにつながる。また、衣料品で流行を追うという社会的な圧力が、ほんの一瞬だけ満足すると、また次の流行品が欲しくなるというある種の渇望感を生み出している。

1999年にあるヨガ講師と一緒にクラスを受けた時、彼は自分の数十年にわたるヨガ練習を「足の親指で床を押したときに胸骨に何が起こるかを探るもの」と表現した。言い換えれば、ヨガとは自分の行為が及ぼす影響に意識を向けることだ。
すべてがヨガになり得る。もちろん裁縫もだ。私は継ぎ当ての裏面を補強するためにジーンズを裏返しながら、いったい誰がこのジーンズの綿を収穫し、誰がそれを工場まで運んだのだろうと考えた。誰が藍を育てて、誰がこの生地を青く染めたのだろう?ヨガと同じく、スローファッションもまた、私たちはみな互いに助け合いながら存在していることを思い出させてくれる。 
最後に糸で玉留めをつくりながら、私はある種の一体感や、ヨガでサントーシャと呼ばれる満足を覚えていた。この完璧なジーンズでこれからの季節も乗り切ろう。

ヨガ的「スローファッション」の実践
photo by  Natalia Khimich/ISTOCK, The Patternbase LLC/ISTOCK 

【さらに詳しく】
ヴィンヤサ練習をもっと深めたいなら、シンディの6週間のオンラインコースSlow Flow:Sustainable Yoga for Lifeに参加しよう。
申し込み詳細はyogajournal.com/slowflowyogaへ。

文●シンディ・リーは、5冊のヨガ本の著者で、ヨガアーサナとチベット仏教を西洋で初めて実践と教育に取り入れたヨガ講師。1998年、ニューヨーク市にOMヨガセンターを設立。アメリカで最も影響力のある講師のひとりとしてヨガ、瞑想、サスティナビリティの指導に従事している。詳細はcyndilee.comヘ。

by Cyndi Lee
photos by Natalia Khimich/ISTOCK, The Patternbase LLC/ISTOCK
translation by Sachiko Matsunami
yoga Journal日本版Vol.75掲載

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部ロゴ

ヨガジャーナル日本版編集部

ヨガジャーナル 日本版編集部

RELATED関連記事

All photosこの記事の写真一覧

ヨガ的「スローファッション」の実践
ヨガ的「スローファッション」の実践
facebook

Yoga Journal Onlineをフォロー

Facebookページでいいね!する