【医師が解説】「瞑想が脳に与える変化」を科学的に検証!心身の免疫力を高める驚きの効果とは?

 【医師が解説】「瞑想が脳に与える変化」を科学的に検証!心身の免疫力を高める驚きの効果とは?
イラスト/セロトニン

心や体に、さまざまな恩恵をもたらす瞑想。その効果を脳科学の観点から紐解き、日常生活に取り入れやすい瞑想実践法とともにアドバイス。コロナ禍の今こそ、瞑想を始めるチャンスです!

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医師・金光先生が解説!瞑想が脳に与える変化とは?

瞑想によって活性化!セロトニンの作用とは?

1. 精神を安定させる「クールな覚醒」
神経伝達物質・アセチルコリンの過剰な働きを抑え、覚醒した中でも高ぶりすぎることのない、安定した精神状態をキープする。

2. 「交感神経の適度な亢進」で自律神経を調整
交感神経優位になりすぎない適度な状態を保つと同時に、過剰になると興奮状態となるドーパミンを適度に抑制し、平常心を維持する。

3. 医療現場でも応用される「痛みの軽減」
体の炎症を抑えたり、脊髄からの痛みの伝導路を抑制する働きがあり、医療現場でも偏頭痛などの治療薬に応用されている。

4. 自分へのこだわりを手放す「皮膚感覚の抑制」
感覚をゆるめる作用があり、皮膚感覚が抑制されることで、自分と外界との境界線が曖昧になり、自分へのこだわりがなくなる。

5. 「抗重力筋の促通効果」で良い姿勢を維持
延髄から下方へと分泌されるセロトニンが脳からの司令を強化。抗重力筋を使いやすい状態にし、良い姿勢を保ちやすくする。

脳内神経物質・セロトニンが活性化し、心身に作用

「脳科学の分野では、瞑想による脳の機能的、形態的な変化を報告する論文が、これまでに多数発表されています。これらの論文から瞑想を行うことで、個人個人に最適な、まるでオーダーメイドのような脳内ネットワークが形成されることがわかってきました」と金光裕幸先生。
脳内で発見されている神経伝達物質は60種類以上あり、意識、覚醒、認知、思考、記憶、感覚などさまざまな機能の調整役として働き、体全体に大きな影響を与えています。このうち、瞑想によって活発になるのが「セロトニン」。〝幸せホルモン〞ともいわれ、ストレスを軽減して免疫力を高めるといわれています。瞑想を行い、脳の前頭葉にある前頭前野が活性化されることで、このセロトニンの分泌が活発化し、脳内全体を巡ります(下の図)。
セロトニンの主な働きは5つあります。まず、第1の作用が「クールな覚醒」です。
「瞑想によってセロトニンが活性化すると、意識を覚醒する促進系の神経伝達物質・アセチルコリンの過剰な働きが抑制されます。すると、感情の情報処理が上手になり、必要以上に感情に振り回されることのない、節度のある覚醒状 態を維持できるようになるのです。体は起きているのに休息しているかのようなリラックス感を得られ、静かな湖面のような精神状態でいられる、ということですね」第2の作用は「交感神経を適度に高める」ことです。
「交感神経が優位になりすぎると心身共に疲れてしまいますが、セロトニンには交感神経を高めすぎない作用があります。それと同時に、快楽や意欲をもたらす報酬系の神経 伝達物質・ドーパミンの暴走を抑えます。ドーパミンは体にとって決して悪者ではありませんが、過剰な分泌は、興奮状態や依存症などのリスクを高めてしまいます。それを抑制する働きが、セロトニンにはあるのです」
第3の作用は「痛みの軽減」。炎症を抑えたり、脊髄からの痛みの伝導路を抑制し、痛みを和らげる働きもセロトニンの特徴です。「スポーツ選手が試合に集中しているときは瞑想状態に近いといわれていますが、試合中にけがをしても痛みを感じない、ということがあります。そのときに作用するのがセロトニン。医療の現場でも、偏頭痛や、腰痛などの慢性疼痛に処方する薬に応用されています」
そして、第4の作用が「皮膚感覚の抑制」です。
「セロトニンには、感覚をゆるめる働きがあります。ヨガクラスの最後にシャヴァーサナを行うとき、『体の表面とマットが一体になるのを感じてみましょう』と言われたことがありませんか?それが、皮膚感覚の抑制です。皮膚は自分と外界との境界線ですが、セロトニンが活性化し、その感覚がゆるむことで物質的にも精神的にも自分自身へのこだわりがなくなります」
最後に、第5の作用が「抗重力筋の促通効果」。抗重力筋とは、重力に対して背骨を支え、姿勢を維持する脊柱起立筋や腸腰筋、大腿四頭筋などです。「セロトニンは、大脳の下の脳幹にある背側縫線核、正中縫線核、大縫線核、延髄縫線核群から放射状に分泌されます。セロトニン自体には筋肉を収縮させる働きはありませんが、延髄から下りるセロトニンが脳からの指令を強め、抗重力筋を使いやすい状態にして、良い姿勢を保ちやすくします。姿勢が良いお坊さんが多いというのは、日常的に瞑想を行うことでセロトニンによる抗重力筋への働きかけが高まることを示していますね」こうしたセロトニンの作用は、瞑想に加え、呼吸や定期的な動きを繰り返すリズム運動、太陽の光を浴びることでも活性化するそう。瞑想実践法で心の免疫力の維持が期待できるセロトニンを活性化させましょう!

心身の免疫力維持にも効果的!瞑想と脳科学
脳幹にある縫線核から分泌されるセロトニンの流れ

瞑想歴 35年のシュミッツ先生に聞きました|コロナ禍の今、なぜ瞑想が大事なの?

「不安や心配を解決する唯一の方法が瞑想です」

コロナ禍では、いつも以上に不安や心配、悩みが増え、いろいろな思いや考えが頭の中を駆け巡るのではないでしょうか。ネガティブな思考や感情は、自分の意識レベルを上げることでしか解決できません。そのために必要なのが、瞑想です。瞑想を行うとセロトニンが活性化し、“心の免疫力”が上がることが医学的にもわかっています。すると、強さと優しさが心に備わり、自然とマインドを平穏に保つことができるようになるのです。また、“心の免疫力”が上がると、体の免疫力も自然と上がり、コロナ禍を健康に、幸せに過ごす力が高まりますよ。

教えてくれたのは...金光裕幸先生(写真右)
「亀戸水神森クリニック」院長。ヨガインストラクター。「ヨガスタジオ・シュミッツの森」で解剖学、呼吸解剖学、呼吸生理学を指導。現代的かつ、安全快適なヨガ指導者の育成に尽力する。

教えてくれたのは...シュミッツ千栄子先生(写真左)
ヨガ・呼吸法・瞑想講師。「ヨガスタジオ・シュミッツの森」代表。呼吸法の第一人者として全国のイベントやワークショップに招かれ、初心者にもわかりやすい呼吸法や瞑想を伝授。

心身の免疫力維持にも効果的!瞑想と脳科学
photo by Kenji Yamada 

 

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photos by Kenji Yamada
hair&make-up by Kyoko Suzuki
text by Minako Noguchi
yoga journal vol.74

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