コロナ禍の今、私たちが心と体のためにすべきこと|自律神経の乱れによる体調不良を防ぐために
コロナ禍で迎える二度目の春。気づかないうちに心と体に不調が現れている人もいるのではないでしょうか?
みなさん、春先は体調を崩しやすい季節ですね。特に長期的なコロナ禍で身体の変化や不調を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、コロナ禍と自律神経についてお伝えしたいと思います。
ポリヴェーガル理論とは
ポリヴェーガル理論とは、アメリカの精神生理学・行動神経学者のステファン・W・ポージェス博士によって提唱された自律神経に関する新しい理論になります。自律神経系は、内臓や血管などの働きをコントロールし、体内の環境を整える神経のことです。今までは自律神経は、交感神経と副交感神経が、相互に補完しあいながら、バランスを取っていると考えられていました。しかし、アメリカのポージェス博士は、副交感神経が大半を占める迷走神経は、2種類あることを発見しました。
1つ目の迷走神経は「背側迷走神経」というもので、横隔膜の下まで続き消化器などの内臓の調整を行なっています。背側迷走神経が適度に活性化しているとき、私たちは「リラックスモード」になります。しかし、過度なストレス時には、小動物が捕食動物の前で硬直するように、凍りつき反応を起こします。2つ目の迷走神経は、「腹側迷走神経」で、ほ乳類が進化の過程で獲得した新しい神経です。主に横隔膜よりも上の臓器や表情筋を調整しています。他者と交流する哺乳類ならではの神経で、他者との繋がりに使う「社会交流モード」の神経といえます。このように私たちの身体は、自律神経と2つの迷走神経によって調整されているのです。
コロナ禍による影響
慢性的な緊張状態
コロナ禍によって、私たちの自律神経系は様々な影響が起きていると予測されます。例えば、コロナウイルスに対する慢性的な不安感や緊張感を感じている方が多いと思います。警戒して感染対策を行うこと、将来への漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。そのような状態で私たちの交感神経は活性化します。慢性的な交感神経の活性化によって、イライラしていることが増えた、寝付きが悪くなった、睡眠の質が低下して夜間に目を覚ます、頭痛や腹痛など身体的な不調感を感じている方もいらっしゃるでしょう。また、筋肉に力が入っているため、肩こりなどに悩まされるようになった方もいらっしゃるかもしれません。
マスクの長時間着用による弊害
私たちはかつてこんなにも長期間マスクをつけ続けることはありませんでした。最近の研究では、マスクの着用により呼吸困難の感覚は増す可能性があるものの、激しい運動中に着用した場合でさえ肺機能が大幅に低下するという経験的証拠はほとんどないというデータがあります。しかし、マスクをしていることで、呼吸が浅くなったり、口呼吸の割合が増えたりといった場合があるかもしれません。浅い呼吸は交感神経の活性化につながります。また、マスクをしていることで、以前よりしっかりと笑顔などの表情を作らなくなった、表情を意識しなくなった方もいると思います。腹側迷走神経系は、顔の表情筋と繋がっています。マスクで隠れている顔の筋肉が使われずに緩んでいることが、腹側迷走神経系に影響を与えているかもしれません。
人との繋がりが減る
人との繋がりが減ることで、腹側迷走神経系が活性化される機会が減るのではないでしょうか。私たちは、人との関わりの中でアイコンタクトをしたり、コミュニケーションを取ることで、腹側迷走神経系を活性化させ、安心や安全を感じています。人との繋がりが減ることで、孤独感や不安感を感じやすくなるかもしれません。
私たちができること
それでは、今の私たちが取り組めることは何でしょうか。それは私たちの自律神経系に目を配り、身体の状態にしっかりと気づくことです。そして、今の自分にとって必要な行動を取ることです。
呼吸を意識すること
私たちは呼吸によって自律神経系を調整することができます。呼吸に意識を向け、鼻呼吸に切り替えたり、深くゆったりとした呼吸をしましょう。呼吸法やマインドフルネス瞑想もおすすめです。
つながりを増やすこと
人とのつながりを意識的に増やしましょう。対面で会うことだけではなく、自分にはどのようなつながりがあるか思い出したり、オンラインやSNSを通じて交流しても良いでしょう。ペットなど、動物との触れ合いもおすすめです。
顔のトレーニングや歌うこと
腹側迷走神経系を刺激するために、歌を歌ったり、表情筋を意識的に動かしてみましょう。マスクによる顔のたるみが気になる現在、表情筋を鍛えることは、腹側瞑想神経系のためだけではなく、美容のためにも良いのではないでしょうか。また、ボーやヴーのような震える音が腹側瞑想神経系の刺激なると言われています。例えば、震える音が含まれるようなヨガのマントラを唱えたり、音を出してみたりしても良いでしょう。
もし良ければ、今回の記事を参考に意識的に自律神経系を整え、体の不調を予防しましょう。
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
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