無理なポジティブ思考が仇に【慢性化する心の疲れ】どう対処すべきか|精神科医・川野泰周さんに聞いた

 無理なポジティブ思考が仇に【慢性化する心の疲れ】どう対処すべきか|精神科医・川野泰周さんに聞いた
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現代人は全員が「未病」と言ってもよいくらい、みんな疲れている

――今後も長期化しそうなコロナ禍ですが、心の疲れを少なくするために気をつけるべきことはありますか?

川野さん:コロナ禍といっても、人間の本質は変わりません。過剰に反応するのではなく、生活上で注意すべきことが一つ増えたな、と淡々と捉えるのがよいでしょう。私たちの生活スタイルは時代ごとに変わってきています。携帯電話の登場でもかなり変わりましたよね。それと同じだと考えてみてはいかがでしょうか。

よくマスメディアで使われる手法ですが、コロナで「何もかもが一変してしまった」と強調したりします。そうしたメディア情報に翻弄されて、破滅的な考えにならないようにしたいものです。地球レベルの視野で見ると、こういう歴史を繰り返しながら「ホメオスタシス」、つまり恒常性を保つようになっていることを意識すれば、心のなかがスッキリと整理されるのではないでしょうか。

――川野さんが実践しているマインドフルネスや禅の要素も、考え方を変えるひとつのきっかけになりますね。

川野さん:このコロナ禍で生きている私たちは全員が「未病」(病気を発症する前の段階)だと思った方がいいくらい、みんな疲れています。あえて未病だと思うことで、自分をケアしようという気持ちが生まれてくると思います。超高齢化の波の中、他者に全てのケアを頼れる時代ではなくなりつつあります。だからこそ、これからはセルフケアが必須になります。それには瞑想やマインドフルネスが非常に役立つことが期待されるでしょう。

マインドフルネスは、竹や笹のような心を目指すものだと考えています。つらいことにぶち当たったときに、それを上手に受け流して、新たな楽しみを見つけていく、それを糧として成長する。つらいことに耐えて、強固に立ち続けるコンクリートの柱のイメージではありません。

マインドフルネスを習慣として継続している方は「こんな状況だからこそ、気づけることがあった」というように、レジリエンスが高い人が多いと感じます。「コロナであれも奪われた、これも奪われた」と考えてしまう方は、減点法で物事を考えてしまう傾向があります。。そういった方々にこそ、レジリエンスを育むためのマインドフルネスが大切なのではないかと思います。

現代人、特に若い世代は自己肯定感を失っていることが指摘されています。その要因として、他人の視点でおこなわれた評価に基づいて、自分の存在価値を規定する傾向が示唆されています。人から褒められる、会社から表彰される、勲章をもらう、同世代の平均よりも収入が高い、といった他者目線の分かりやすい評価で自分の価値を決めていますから、どうしても承認欲求が高くなってしまいます。SNSに依存してしまうのも、ここに問題があるのではないでしょうか。

本当の自己肯定感というのは、自分で自分を受容する力に支えられています。そして自己を受容する心の在り方は、マインドフルネスを継続することでだんだんと育まれていくものなのです。

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Text by Mitsue Yoshida

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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