意識的に動くために|解剖学的な断面「3つの面」を理解しよう
なぜこれらの断面を理解する必要があるか?
ひと言で言えば、固有受容のためだ。つまり、関節の位置や動きを感知できたり、目を閉じていても体がどこにあるかわかったり、何かをするための力の入れ具合がわかる身体能力のことだ。この固有受容感覚によって、私たちはグラウンディングしている状態や、バランスがとれている状態を感じられ、安全にヨガのポーズに入ったり出たりできるのだ。固有受容感覚は、アーサナのようにマインドフルに繰り返す動作によって徐々に培われる。
健康的な固有受容感覚を阻む原因のひとつに、無意識に行われる慢性的な体の癖がある。その癖の原因が、けがなのか使いすぎなのかは問題ではない。だがその癖がポーズに影響を及ぼし、同じ動作をするように習慣づけてしまうのだ。たとえば、あらゆる方向に自在に動くようにつくられている肩関節について考えてみよう。もしも好きな方向ばかりに動かしていたら……つまり、矢状面運動で両腕を前から上に伸ばすばかりで、横に伸ばす前額面運動を避けていると、やがてその癖によって関節のバランスが失われ、慢性痛やけがにつながる。
このような無意識下の癖から脱する方法のひとつは、普段避けがちな断面でのなじみのない動きや体勢をやることだ。それによって凝り固まっていた箇所がほぐれ、弱い部分が鍛えられる。3つの断面を意識しながらシンプルな動きをいろいろ試してみよう。特に、やったことのない動きについては、気楽に楽しむことだ。いらついたり、恥ずかしいという意識は何の助けにもならない!そうすることで新しい神経筋が発達し、よりバランスのとれた動きが習慣化されていく。やがて、ポーズをより効果的に実践できるようになり、バランスが改善され、関節も整うだろう。
ヨガを教えている人は、これら3つの断面(面の名前を言っても言わなくてもいいが)すべてを考慮しながらポーズややり方を伝えるようにすると、生徒たちはより健康でバランスの良い体を培えるだろう。また、これらの断面をもとにヨガの練習者のゆがみやバランスのとれていない部分を見つけることで、より効果的な指導ができる。
各断面上での動きの違いを理解して分析する一方で、本来の目的は体の分断ではないことを忘れないでほしい。体には3つすべての断面が同時に存在している。このワークで目指したいのは、3つすべての断面上で常にバランスがとれていて、全体を感じられる体の状態をつくりだすことだ。それこそが、マットの上でも外でも、身体的な感覚をより高める方法のひとつだと信じている。
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