ヨガでもっと幸せな気分になる方法

 ヨガでもっと幸せな気分になる方法
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ヨガはいったいどのようにして、私たちの生命力を解き放つのか。なぜヨガによって毎日がより幸せに、活力に満ちたものになると言われているのか。ヨガ講師ロッド・ストライカーが説明してくれた。

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最近のヨガには、目が回るほどたくさんのスタイルややり方がある。たとえば、支えを使ったシンプルな姿勢をとり、キャンドルを灯した部屋で心身を休めるようなやり方をするヨガ。あるいは、生徒を身体的なキャパシティの限界ギリギリまで挑戦させるヨガ。リズミカルな音楽を大音量で流し、ビートに合わせて行われるヨガもある。体のアライメントにフォーカスするヨガもあるし、反対に心を中心に据えたやり方もある。あまりにもたくさんの種類があるので、ここにすべてをあげることが不可能なほどだ。

さまざまなスタイルのヨガがあり、それぞれ雰囲気や実体は違うだろう。だが、みなが共有しているあるひとつのクオリティがある。それは「効き目がある」ということ。この事実があるからこそ、人々はヨガをするのである。単純にいえば、教室に入ってきたときより、クラスを終えて教室を出て行くときの方が気分が良くなっているのだ。ここで問題にしたいのは「なぜなのか?」ということ。「いったいヨガはどのようにして効いているのか」できればそれを理解したい。アーサナが体に気持ちよさを残すのはなぜだろうか。ひとつには、それが副交感神経系を活性化するからである。おそらくこのことは耳にしたことがあるだろう。ほとんどすべてのアーサナの実践は、共通してふたつの要素を持っている。そのために副交感神経系が活性化されるのだ。ふたつの要素とは、まず筋組織を伸展し強化すること。もうひとつは呼吸にまで至る沈静化作用である。副交感神経は、神経系のなかでも心身を落ち着かせる作用を持つものである。筋肉にリラックスするように指令を出し、消化・吸収を促進し、免疫力を高め、より良い睡眠を手助けする――副交感神経はこういった働きを司っている。また、血圧は正常値になり、心拍数は下がる。副交感神経系は、ストレスによって生じた症状の多くをやわらげる。現代社会では、高い生産性を求められ、目まぐるしい生活を余儀なくされる。こうした日々を送るうちに生じたネガティブな副産物を中和してくれるのが副交感神経系なのだ。

しかし、じっさいには今日実践されているヨガの多くは、思うほどには副交感神経系の役に立っていない。副交感神経系を増強するためには、深いリラクセーションをうながすポーズを行う必要がある。たとえば前屈や、股関節を開くポーズがそうである。立位のポーズは控えて、代わりに座位のポーズ、あるいは仰向け、うつ伏せなど横たわって行うポーズを増やす。逆転のポーズも効果がある。リストラティブ・ヨガのときのように、ポーズを長めにホールドする必要もある。そしてより長い時間をかけて、ゆっくりとした完全な呼吸をする。動きの激しいヴィンヤサ、後屈や倒立、アームバランスなどは高い効果を持ってはいる。しかしこれらは、上に挙げたポーズに比べると、副交感神経系を刺激しないのである。ということは、ヨガをやることによって人々が感じているポジティブな変化は、神経系に与える好影響だけが原因なわけではない。それではいったい、「気持ちよくなる」「より良く生きられるようになる」といったことをもたらしてくれているのは何なのだろうか。答えは「生命力」である。ほとんどすべてのハタヨガは、体のなかの「プラーナ」、言い換えると「生命力の流れ」を活性化するのである。

ヨガは、鍼治療や太極拳や気功といった技術と同様に、プラーナに基づいているプラーナは中国の学問・文化においては「気」と呼ばれる)。こうした修練の場においては、プラーナは万物を支える本質的な力だと捉えられている。ヨギはさらに進んで、プラーナを知的に使うことが、精神的覚醒を促すために不可欠であると規定するところまでいった。『プラシュナ・ウパニシャッド』に「起源を知ることにより、さらにプラーナの物理的な実在を知ることにより、人は不死に至る」とある。別の言い方をすれば、人生の目的(と実践)は、プラーナの使用に熟達することによって実現されるということである。

プラーナハタヨガにおいて常にきわめて重要な役割を有している。古代のタントラ教の文書には、『ハタヨガ・プラディピカ』や『ゲーランダ・サンヒター』と同様に、生命力を増大させ、導き、制御するためのさまざまな技術が列挙されている。これらの文書のなかで、アーサナはハタのより深い実践のための基礎として描かれている。なぜなら、アーサナは容易に実践することができ、生命力の解放を手助けするからである。ポーズのプロセスは――ポーズを通して呼吸をすることで――プラーナの流れの詰まりを解消する。それぞれのポーズは、それぞれの仕方でプラーナを解き放つ。たとえば前屈は、落ち着かせ、沈静化し、根づかせるタイプのプラーナを増大させる。後屈は、より開放的で、活力を与えるタイプのプラーナの力を解き放つ。
クラスが終わったあと、気持ちが良くなる最大の理由は、プラクティスが、よりバランスのとれた、完全な仕方で、あるいは特定の精神的、身体的な必要に適した仕方で、生命力がはたらくのを助けるからなのだ。それぞれのアーサナが生命力にたいして影響を及ぼす原理については、ハタの伝統とアーユルヴェーダの双方において説明されている。これらの教えを学び、実践するほどに、私たちはどのポーズがどのような状況にたいして役に立つのかを知っていくことができる。ときに、それまで素晴らしいと感じてきたなんらかのプラクティス(あるいはスタイル)にたいし、だんだんそう感じなくなっていることに気づくことがあるだろう。それは、自分にとって変化のときが訪れていることを知らせるサインかもしれない。


「生命力」は、いわば宝の蔵である。自在に活用できるようになれば、プラクティスを通じてより多くを達成できるようになる。「プラーナのコントロールこそが究極の強さである」インドで尊ばれる聖典のひとつである『シュリーマッド・バーガヴァタム』は、こう述べている。まずはアーサナから始めて、プラーナのパワーの活用に慣れていこう。熟達すればするほど、ヨガのもつ無限のポテンシャルをもっとはっきりと知るようになるだろう。

 

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Text by ROD STRYKER
Translated by Miyuki Hosoya