つらい肩こり解消エクササイズ|理学療法士が提唱!ストレッチじゃ効かない肩こりの治し方
常に「良い姿勢」をキープするのは間違い
デスクワークなどで猫背姿勢になったり、ソファーのような椅子にもたれ掛かるように座った姿勢が悪い姿勢だということは、もう誰もがお分りだと思います。では逆に、良い姿勢をずっと続けていれば肩こりは生じないのでしょうか?答えはNOです。問題は悪い姿勢をとることだけでなく、「姿勢を変えないこと」だからです。
私は2006年にニューヨークで全米ヨガアライアンスを取得しました。その第1回目の講義での冒頭のメッセージが、「Change shape」でした。「Change shape is energy.」常に形を変えていくこと、それがヨガの始まりであり、全てのエネルギーだと教えられました。あれだけ多くのヨガのポーズの起源は、何時間も何日も神様に祈るために、坐位や立位など次々と安定した姿勢を求めていったところにあると言われています。
そこからも分かる通り、常に良い姿勢をキープすることが良いことではなく、こまめに姿勢を変えることが重要になります。長時間同じ姿勢の作業をする際は、時々立ち上がったりストレッチをしたり、伸びをしたり歩いたり、姿勢を変えるといった「リセット」をする時間を設けることが大切です。そうすることで、筋肉内の循環が改善されて、疲労物質や発痛物質が滞りにくくなります。
肩こりを解消するエクササイズ
では実際に肩こりのエクササイズを紹介していきます。
①動的ストレッチ
まず動的ストレッチで積極的に筋肉の伸び縮みを繰り返すことで、筋肉を温めて循環を整えましょう。反復してその動作を繰り返すことがポイントです。
肩回し 30回×逆回し
肩甲骨にくっついているたくさんの筋肉をまとめて一気に動かしていきます。これで肩甲骨周囲の筋肉の循環が非常に良くなります。肩回しと言いましたが、回すのは肩甲骨です。左右の肩甲骨が寄ったり離れたり、肋骨の上を円を描くよう大きくスライドして動くのを感じましょう。肘の先で正円を描くようゆっくりと回してください。
肩すくめ 30回
僧帽筋上部と肩甲挙筋の収縮と弛緩の繰り返しを行います。肩こりを起こしやすいこの2つの筋肉(緑色の部分)を、両肩をすくめるようにして耳に近づけて(挙上)、一度めいっぱい縮めます。するとその後に筋肉の性質上緩もうとする反射が起こるので、両肩をゆっくり後ろにグルッと回し下げるように下ろします。
羽ばたき 30回
菱形筋の収縮と弛緩の繰り返しを行います。両手を頭の後ろで組み、両肘を大きく左右に開く→閉じる、を繰り返します。意識するのは、左右の肩甲骨の間(緑色の部分)です。肩甲骨が背骨に近付く内転と、肩甲骨が左右に離れる外転という動きにしっかり注目しながら行います。
②静的ストレッチ
動的ストレッチで筋肉内の血行が良くなったところで、静的ストレッチでゆっくり静かに時間をかけて筋肉を伸ばします。
手を上げ下げ
肩こりが最も起こりやすい僧帽筋上部と肩甲挙筋2つの筋肉を交互にストレッチしています。肘を下げた時には僧帽筋上部(緑色の部分)がストレッチされ、肘を上に挙げた時は肩甲挙筋(緑色の部分)がストレッチされます。僧帽筋上部は伸びる感覚が非常に分かりやすいですが、肘を上げた時に伸びる肩甲挙筋は、深層筋のため最初は伸びる感覚が分かりにくいかもしれません。私のように骨や筋肉に詳しいと、肩甲挙筋の走行通りの伸びが見事に気持ち良く感じ取れます。上で10秒、下で10秒キープを10回繰り返しましょう。
背中丸め
菱形筋をストレッチします。「胸張り」タイプの方は特にしっかり行いましょう。両手を正面で組んで前に伸ばします。ポイントは背中全体を丸めるのではなく、ちょうど赤い丸のアナハタチャクラの部分を引っ込めるように丸めます。10秒キープを3回繰り返しましょう。
胸伸ばし
大胸筋と小胸筋をストレッチします。「猫背」タイプの方は特にしっかり行いましょう。アナハタチャクラを天井に向けるような気持ちで開きましょう。両腕を外回し(外旋)させることでより縮まった胸の前(緑色の部分)がしっかり伸びます。10秒キープを3回繰り返しましょう
首の前側伸ばし
胸鎖乳突筋をストレッチします。「猫背」タイプの方は特にしっかり行いましょう。鎖骨の下あたりに両手のひらを添えて、下に撫で下ろすようにして、ゆっくり上を見上げましょう。頭を後ろに倒すことよりも、首の前側(緑色の部分)の伸びを感じることが大切です。10秒キープを3回繰り返しましょう。
最後に
肩こりのメカニズムや、身体の仕組みが分かると、エクササイズもより効果的に実践することができます。ヨガの中にもぜひこのエクササイズを取り入れてみてください。ただ、肩こりの症状の中には病気が潜んでいることもあります。心配な場合は自己判断せず早めに医療機関を受診してくださいね。
肩こりは、良い姿勢、効果的なエクササイズの継続、そしてこまめに「change shape」することで改善できる症状です。みなさん肩こりとサヨナラしましょう!
ライター/堀川ゆきさん
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。モデルやレポーターとして活動中ヨガと出会い、2006年にRYT200を取得。その後、健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士国家資格を取得し、慶應義塾大学大学院医学部に進学。現在大学病院やスポーツ整形外科クリニックで、運動機能回復のためのリハビリ治療に携わる。RYT200解剖学講師も務める。
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