「○○したらどうしよう」予期不安をなくす方法は?心理師が教える〈考え方を変える対処法〉
「○○したらどうしよう」と心配していませんか?予期不安とは、未来に起こるかもしれない出来事について、起こる前から過度に心配してしまう心理状態のことです。今回は予期不安をなくす方法について心理師が解説します。
予期不安とは?
予期不安とは、未来に起こるかもしれない出来事について、実際に起こる前から過度に心配したり、不安を感じたりする心理状態のことを指します。予期不安は、実際に問題が起きていなくても、その可能性に対して心配しすぎることで心身に影響を及ぼします。
過去に一度電車で体調が悪くなった経験があり、予期不安により電車に乗れないAさんのケースを紹介します。Aさんは、電車に乗る際に「また具合が悪くなったらどうしよう」「途中で電車を降りると目立ってしまう」などと考え、不安を感じ始めます。考えれば考える程不安が強くなり、交感神経が優位になるので、身体に反応が出始めます。例えば、動悸、息苦しさ、胃の不快感、発汗などです。身体症状が強くなると「これはまずい」「やめた方がいいな」と考え、電車に乗ることを避けるようになります。これを「回避行動」と呼びます。回避行動が続くと、仕事や学校など日常生活に支障をきたします。「電車に乗らないことで安心感を得る」ため、予期不安がさらに強化され、乗ることへのハードルがどんどん高くなる悪循環に陥ります。
予期不安をなくす方法
Aさんのように予期不安は電車に対してだけではなく、人混みだったり、人前で発表することだったり、様々な場面で起こり、同じような悪循環に陥りやすくなります。予期不安をなくすためには、「考え方」や「行動パターン」にアプローチする認知行動療法がヒントになります。不安を引き起こす「考え方」や悪循環につながる行動パターンを変えていくことで、不安を軽減し、予期不安に振り回されないように工夫していきましょう。
考え方を変えるアプローチ
認知行動療法では、「不安を引き起こす考え方」に焦点を当て、これを現実的で柔軟なものに変えていきます。
考えのクセに気づく: どのような事を考えたらより不安になりますか?「電車に乗ったら具合が悪くなる」や「途中で降りたら変だと思われる」など予期不安につながる考えを特定します。
エビデンスを確認する: その不安がどの程度現実的かを検討します。例えば、「電車に乗ることで具合が悪くなったことは過去20回中1回だった」と振り返るなど、現実的に不安が的中する確率を考えることで不安を軽減できる場合があります。
現実的な考え方に置き換える: 「一度気分が悪くなったことがあるけれど、必ずまたそうなるわけではない」「途中で降りてもみんな気にしていない」など、現実に基づいたバランスの取れた考え方に変えます。変え始めは違和感があっても、何度も思い直すことで新しい考え方が馴染んでいきます。
行動を変えるアプローチ
予期不安は「回避行動」を引き起こしやすく、これが悪循環を長引かせる原因になります。行動パターンを変えることで、実際の体験を通して「予想していたほど怖いことは起きない」「なんとなかった」という実感を得られます。
リラクゼーションをする:日頃から呼吸法やマインドフルネスを練習します。このようなリラクゼーション法のポイントは毎日やることです。不安が強い日も、特に感じない日も毎日やっておくことで、慢性的な不安レベルを下げておきましょう。
徐々に慣れる:不安なことを避けるのではなく、少しずつ慣れるように行動しましょう。例えば以下のように無理のない範囲で小さな成功体験を積み重ねましょう。
1. 駅に行くだけで帰る。
2. 電車に1駅だけ乗る。
3. 電車に数駅乗る。
チャレンジをした後は、やってみてどうだったか振り返りしましょう。うまくいかない日があっても大丈夫です。少しハードルが高すぎたのなら見直しをして、自分にあったステップアップを作っていきましょう。自分一人ではうまく取り組めない時はカウンセリングを受け、公認心理師や臨床心理士などの専門家に相談することもオススメです。
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
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