「マインドフルネスは意味がない」とやめる前に。マインドフルネスでよくある悩みについて心理師が解説
マインドフルネスをやってみたものの集中できなかったり、成果が見えなかったり「意味がない」と感じてやめてしまう人も多いようです。そこで今回は、マインドフルネスを実践し指導している臨床心理士が、よくある悩みについて回答します。
マインドフルネスとは
マインドフルネスとは、「今この瞬間に注意を向け、自分の感情や感覚、思考などに気づき、評価せずに観察すること」です。具体的には、呼吸や体の感覚に注意を向ける瞑想によってマインドフルネスの練習をおこないます。
マインドフルネスでよくある悩み
マインドフルネスを実践していく上で、下記のような悩みを感じる人が多いです。
集中できない
瞑想中に雑念が湧いてきて、なかなか集中できないと感じる人が多いです。しかし、雑念が浮かぶのは当たり前のこと。マインドフルネスは、頭を真っ白にするのを目指しているわけではありません。雑念が浮かんだことにもただ気づき、元の観察対象に注意を戻しましょう。
やり方が合っているのか分からない
ただ観察し、気づき、受け入れる。言葉では簡単ですが、やってみると合っているのか分からないと感じることもあります。やり方に正解はありません。探りながら色々と試していくことで少しずつ「何か」をつかんでいきます。気づいたものを受け入れることについては、雑念などに対し「そうなんだ」「ふーん」といった中立的な態度をとることがヒントになるかもしれません。
感情の浮き沈み
マインドフルネスを実践することで、自分の感情に気づくようになると、逆にそれがストレスになってしまうことがあります。気づきたくないものに気づいて落ち込んだり、イライラしたりするかもしれません。気づいた感情の強弱や感覚も観察し、受け入れていきましょう。
習慣化が難しい
瞑想やマインドフルネスの実践を日常生活に取り入れるのが難しいと感じることがあります。習慣化するコツは、無理なく続けることです。毎日のルーティンに合わせて実施することがおすすめです。例えば、通勤時、就寝前など決まった時間に短時間から始めていきましょう。
成果が見えない
マインドフルネスを実践しても、すぐに効果が感じられないと挫折感を味わうことがあります。効果はすぐに出ないし、強く実感できるものでもありません。成果を気にせずにただ続けることが大切です。
マインドフルネスは歯磨きみたいなもの
マインドフルネスは研究によって様々な効果が実証されています。そして、マインドフルネスに期待をする分、悩みは生じやすくなります。しかし、どのような効果も長く継続した場合のものです。脳の器質的な変化は少しずつ起こるため、時間がかかり、気づきづらいものです。半年、数年と長く続けていく中で、「そういえば変わったな」とふと気づく瞬間が来ると思います。一旦効果を追い求める気持ちを手放し、毎日の習慣としてただ続けていきましょう。そういった意味では「歯磨き」と似ています。歯磨きは虫歯予防などの目的があると思いますが、1日で成果が出るものでもありません。歯磨きによってどれくらいの効果があるのか分からなくても、習慣としてただ続けていると思います。そのくらいの気持ちで日々を積み重ねていきましょう。
マインドフルネスは様々な心理療法の要
マインドフルネスは多くの心理療法に取り入れやれています。例えば、弁証法的行動療法(DBT)、Acceptance and Commitment Therapy(ACT)などです。そして、マインドフルネスという言葉が使われていなくとも、感情や感覚に気づくことが、自己理解や変化を生む上で重要なステップであることは変わりません。私たちは気づいていること、受け入れていることしか変えていくことはできません。自分を変えていこう、向上していこうと思うならば、気づき、受けれることが必要です。特に、ストレスに気づかずに溜め込んでしまい身体に反応が出る人、感情に気づかずに振り回されてしまう人、自分自身の思考の癖や行動パターンによって同じような失敗、悪循環を繰り返す人は「マインドフルネス」の力が助けになるかもしれません。
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
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