心理カウンセラーが考える、10代のうちに知っておきたかったメンタルヘルスの知識5つ
心理カウンセラーとして働く中で、これをもっと前から知っていれば良かった…と感じることがあります。今回はその中から5つ、10代のうちに知っておきたかったメンタル ヘルス知識を紹介します。
1.睡眠の大切さ
体力がある若い年齢ほど、睡眠を犠牲にしがちです。しかし、睡眠は脳にとっても身体にとっても重要な役割があります。例えば、睡眠中に体は修復を行い、筋肉や組織の再生が進みます。免疫システムも強化され、病気に対する抵抗力が高まります。また、睡眠は記憶の定着や情報の整理に関係し、十分な睡眠をとることで、学習能力や注意力が向上します。睡眠を犠牲にして一夜漬けで勉強するよりも、しっかりと睡眠をとった方が勉強の効率が捗るかもしれません。そして、睡眠不足はストレスや不安を引き起こし、感情のコントロールが難しくなることがあります。最近気持ちが不安定だなと感じたら、まずはしっかりと睡眠を取りましょう。このように、良質な睡眠は心の健康を支えます。
2.考えるのが必ずしも良いことではない
認知力「考える力」が大切なのは当たり前です。しかし、考えることを優先しすぎてしまうことで、メンタルヘルスの不調につながることがあります。現在の困りごとを客観的に分析し、対策を考えることは重要ですが、過去に起きたことを後悔したり、未来の不確実なことをぐるぐると考えたりしたことはありませんか?このように、変えられないことや答えが出ないことを考え続けても、不安や落ち込みが強くなる一方です。考えることを意識的にやめることも、メンタルヘルスにおいて重要なことになります。そして、「考える力」と同時に、「マインドフルネス(ありのまま気づき受け入れる力)」を育てていきましょう。
3.感情は一時的なもので必ず小さくなる
感情に振り回されてしまった経験はありませんか?感情は一時的なものであり、変化するものです。とても強い感情も時間の経過とともに必ず小さくなっていきます。一時的な感情に振り回されて行動してしまうと後悔につながることがあります。感情をただ受け入れ、観察することで、その感情が一時的なものであることを実感できます。感情の波が来ても、無理に抑え込まず、客観的な視点を持ちながら流れるままに小さくなるのを待ちましょう。
4.断っても対人関係は維持される
嫌われたくないからと無理をして相手に合わせたことがありませんか?NOと断ることは、時にとても勇気がいることです。しかし、実際はNOと断っても予想していたような悪いことはほとんど起こりません。通常、人は相手の事情や気持ちを理解しようとします。そして、自分のニーズを大切にしつつ、相手のニーズにも応えることができる関係は、平等な関係性であり、より結びつきが強固なものになります。このように、断ることは必ずしも対人関係に悪影響を与えるわけではなく、むしろ関係の質を向上させることもあります。
5.自己批判はデメリットしかない
自分を責めてばかりいませんか?自己批判することで自分が高められると感じたり、自ら自分を責めることで、他人からの攻撃を防げると感じたりするかもしれません。しかし、自己批判はデメリットが多いです。例えば、自己批判が強いと、自己評価が低くなり、自己肯定感が損なわれます。そして、自己批判は身体のストレス反応を引き起こし、コルチゾールというストレスホルモンの分泌を増加させます。高いコルチゾールレベルは、長期的に健康に悪影響を及ぼすことがあります。そのため、長期化するとうつや不安の原因になることがあります。一見自分のためになりそうな自己批判でも、長期的に見ると自己批判自体がストレスや自己肯定感の低さなど、新たな悩みの種になることがあります。ストレスを減らし、健康的に生きるためには自己批判をやめることが必要です。
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く