臨床心理士が教える〈心理カウンセリングの選び方〉どこで受けられる?何をする?

 臨床心理士が教える〈心理カウンセリングの選び方〉どこで受けられる?何をする?
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石上友梨
石上友梨
2024-11-17

カウンセリングを受けたことはありますか?おそらくほとんどの人がNOと言うかもしれません。日本ではなかなか馴染みがないカウンセリング。今回はカウンセリングとは何か、受けたい時にどう選べばいいか紹介します。

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カウンセリングとは?

カウンセリングとは、精神科や心療内科の医師による診察や薬の処方とは異なり、主に臨床心理士や公認心理師などいわゆる心理カウンセラーとおこなう心理療法です。心理療法とは、困っていることや悩んでいることを専門家との対話などを通して解決、または自己受容、自己変容していくものです。心理カウンセラーとは資格名ではなく、職業名のようなものです。そのため、選んだ心理カウンセラーがどのような資格を保有しているか、どのような経験を積んでいるかも確認しましょう。代表的な資格として、歴史があり最大の民間資格である臨床心理士や、国家資格である公認心理師があります。

カウンセリングはどこで受けられるの?

カウンセリングを受けたい場合は、医療機関やカウンセリングルームに問い合わせしてみましょう。医師による診察や薬の処方を合わせて希望する場合は、医療機関。カウンセリングのみを希望する場合はカウンセリングルームがいいでしょう。また、勤務先の産業カウンセラーや自治体の相談窓口、学生ならスクールカウンセラーを利用することが可能です。しかし、勤務先や自治体の場合は、回数に限りがあったり、「心理療法」ではなく、「相談」のみ可能な場合があります。心理療法だとより専門的に問題を解決していきますが、相談だとアドバイスがメインになることが多いです。自分のニーズにあった機関を選ぶことも大切です。

カウンセリングでは何をするの?

カウンセリングといっても、その内容は様々なものがあります。現在の困り事に焦点を当てるもの、幼少期など過去にも焦点を当てるもの、思考や感情、行動に働きかけるもの、身体や神経系に働きかける心理療法など、様々です。また、単独の心理療法を提供しているところや、複数の心理療法を組み合わせて提供しているところがあります。いくつか心理療法の具体例を紹介します。

認知行動療法

認知とは、物事の受け止め方や考え方のことです。行動は、その時々に自分が取る動作や振る舞いのことです。私たちは何か出来事が起こった時に、色々と考えたり、何か行動して対処しようとします。そして、様々な気持ちになったり、心臓がドキドキするなど、身体の反応が起きます。これらの認知、行動、感情、身体反応は相互に影響し合います。ネガティブなことを考えていると、どんどん不安になって、身体がそわそわして、気になったことをいつまでもネットで調べてしまう。そんな経験はありませんか?このような反応パターンを分析して、変えられるところ変えることで、悪循環から抜け出し、上手な対処法を身に着けていく心理療法です。

現在、多くの医療機関やカウンセリングルームで受けられるのは認知行動療法になると考えられます。他にも様々な心理療法があるので簡単に紹介します。

スキーマ療法

認知行動療法が発展して作られたのがスキーマ療法です。認知には浅い認知と深い認知があり、頭の中に瞬間的に浮かぶ浅い認知の元となるのが、深い認知であるスキーマ(信念、価値観)になります。スキーマ療法では、スキーマの成り立ちや影響を見つめ直し、生きづらさにつながるスキーマを検討して、新しいスキーマを獲得していきます。

EMDR

トラウマの原因となった出来事を思い出しながら目を左右に動かすといった刺激を加えることでトラウマを処理する神経生理学的なアプローチです。

自我状態療法

解離性同一障害やPTSDに効果があると言われている心理療法です。創造的なやり取りの中で、自分の中にある様々なパーツ(様々な自分)に働きかけていきます。

 

それぞれの心理療法についての詳細は、各協会や学会等をご参照ください。また、今回紹介した方法以外にも様々な心理療法があります。悩みの内容に合った心理療法を選び、それを提供してくれる機関を探すことで解決への近道になる可能性があります。

もちろん、自分には何が合うか分からなくても大丈夫です。カウンセラーと一緒に合う方法を探していくことができます。また、明確な悩みがなくてもカウンセリングを受けることが可能です。例えば「なんとなくつらい」「何を相談すればいいか分からないけど困っている」という方や、「身体的な不調が続いているんだけど、メンタルから来ている気がする」といってカウンセリングを始める方もいらっしゃいます。良かったらカウンセリングを検討してみてくださいね。

 

参考:

厚生労働省 e-ヘルスネット

一般社団法人 Ego State Therapy Japan

日本EMDR学会

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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