マインドフルネスができるってどんな状態?心理師が体験から考える、マインドフルネスの悩みと難しさ

 マインドフルネスができるってどんな状態?心理師が体験から考える、マインドフルネスの悩みと難しさ
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石上友梨
石上友梨
2024-11-29

マインドフルネスがうまく出来ないと悩んでいる人は多いのではないでしょうか。試しにやってみたけれど、「うまくできない」「よく分からない」と結局続かずに終わってしまった。そんな経験はありませんか?私自身もマインドフルネスがうまく出来ないと長い期間悩んでいました。今回はマインドフルネスを体感した経験について紹介します。

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マインドフルネスを頭で理解しようとしていた

私のマインドフルネスとの出会いは10年以上前の学生時代でした。友人の影響で何となく自分も取り組み始めました。心理師になった後、マインドフルネスは自分にも、クライエントにとっても必要なことだと気付き、しっかりと勉強を始めました。例えば、マインドフルネス瞑想の研修に参加したり、個別でレッスンを受けたりしました。呼吸に注意を向けることは出来ても、それがマインドフルネスになっているのか分かりません。マインドフルネスでは何を目指して、何をしているのかゴールがイメージできない。マインドフルネスの理論も、効果もやり方も理解しているはずなのに、いまいちピンとこない。よく分からないながらマインドフルネスに取り組むのは苦しいことでもありました。

旅をしながらマインドフルネスを勉強する

3か月ほど中国、インド、ネパール、タイと旅をする機会があり、そこでマインドフルネスの勉強をしていました。様々な国で様々な流派の瞑想を見て何かヒントになるかもしれないと期待をしていました。しかし、いろいろな瞑想があって「面白いな」「このやり方は好きだな、嫌いだな」という感想はあれど、マインドフルネスが何かは分からないままでした。ネパールで参加していた3週間のレッスンでは、周囲の人たちがうまく瞑想する様子を見て焦りを感じ始めました。先生が積極的に「身体の中で何が起きているのか」「何を感じるのか」を聞いてくる中で、私は嘘をつくのも嫌だったので「よく分からない」と答え続けました。

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身体を無視してきた

これほどまでに苦戦していた理由として、私が身体の感覚に意識を向けるのが苦手で、身体の感覚を無視してきたことがあります。例えば、スケジュールを詰め込むことで安心し、いくら体調が悪くても仕事も予定もこなしてきました。20代後半の頃はどんなに高熱でも出勤しており、白衣を着ると不思議と平熱まで下がったことを覚えています。断ること、休むことが苦手で、身体に出ていたストレス反応は無視をしていたのでしょう。そんな習慣がついていた私は身体の感覚を聞かれること自体に抵抗がありました。身体の感覚に意識を向けたら、気づきたくないものに気づくことになります。瞑想の先生に言われた「あなたは瞑想が嫌いなんだね」という言葉は今でも鮮明に覚えています。嫌いではないのに、自分に必要なことなのに、とてももどかしい気持ちでした。

手放した先に見つけたもの

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瞑想の勉強をやめてネパールのポカラという街に行きました。ヒマラヤ山脈が美しく穏やかな湖がある街です。そこで瞑想から離れてマッサージを受けたり、パラグライディングをしたりのんびりと過ごしました。ポカラから首都であるカトマンズに戻る長距離バスで私は車窓に向かってスマホを構え、必死に美しい田園風景を写真に収めようともがいていました。しかし、光が窓に反射するし、余計なものが映り込むし、景色はどんどん流れていきうまく撮れません。だんだんとイライラしてきました。そこでふと馬鹿らしくなり、「抗うのをやめよう」と思いました。うまく撮れないと必死になるのではなく、ただ車窓から流れる風景を眺めるだけ。ただ見て、ただ流していく。そうやって今この瞬間の五感を使って、目の前の風景を味わっていると、その田園風景がただただ美しく、心の底から感動しました。そして、「手放すってこんなに身体が楽なんだ」「抗わないとこんなに穏やかな心になるんだ」と思い、「これがマインドフルネスなんだ」と気づきました。私が、余計な執着を手放し、今この瞬間に注意を向け、ただ受け入れ、ただ味わうことを実感した体験です。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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