情報の中から健康を選ぼう。あたりまえでない健康と、SLEをみんなごとにするヒント
渋谷:SLEのような指定難病の当事者の方がSNSや記事でリアルを発信することに、私はとても意義があると思っています。そうでなければ、私も宮井さんの存在や病気の症状のリアルについて知ることができませんでしたので。
宮井:そうですね。でも実は、病気についての啓発や情報発信について思うことは日々多いです。例えば「暴飲暴食などの不摂生をしていたから病気になるのは自業自得だ」と患者さんを責めるような風潮や病気に対する偏見や誤解が溢れていますが、当事者が置かれている環境を理解し、より生きやすい社会にするために、医師や専門家の方々にはこれまで以上に病気について正しい情報を発信してもらえるよう強く臨んでいます。
個人的な体験談はその人のものであって、体質や置かれている環境によっても様々異なりますので、参考程度にとどめてもらえればと思います。私も、病気のことだけでなく、幅広い視点で「健康とは」と向き合い、各々で考える力を養ってもらえるような発信をしていきたいです。
渋谷:ヨガジャーナルオンラインではヨガ以外の情報発信もしていますが、背景にあるメッセージは「知って、考えて、その上で自分にとってのベストな選択をしよう」ということです。記事を通して一人一人が考えて、アクションすることを促したい思いでは、宮井さんと共通していますね。
宮井:「知る」という意味では疾患啓発のイベントも意義がありますが、一方でそのイベントの様子を見ていて、啓発がエンターテインメントになりがちであることにも懸念があります。例えば、乳がん啓発の場合「まず検診を」と勧められている一方、SLEの場合、予防としての定期検診は現状として難しいです。経験者として伝えられることは「異変や不調を感じたらすぐ医療機関へ行くこと」。この場合、おそらく最初に行くのは内科だと思いますが、内科でわからない場合は膠原病内科を受診することも選択肢に入れて欲しいと思います。この行動が結果的に早期治療につながるのではないかと思います。
渋谷:発信上の課題といえば、疾患啓発にかかわるイベントに色々足を運んでいた折、がん患者の方とそうでない方との「線引き」というか、隔たりがあるように感じたことがあります。もちろん啓発イベント自体は意義のあることだと考えていますが、その病気を経験していない人にとっては遠いことと捉えてしまうような空気を感じたんです。
宮井:わかります。イベントによっては参加しにくい印象がありますよね。発信の仕方によっては一般参加者の方に響いていないこともあると思います。
渋谷:この隔たりへの課題感が、米国在住のヨガインストラクターRIKA KELLYさんとの乳がんの方を対象にしたコミュニティの立ち上げやコミュニティの方針を考えることにつながりました。この乳がんのコミュニティには、治療向き合いながら体に関わる活動に携わっている方が多い印象です。
乳がん経験者さん向けのコミュニティを立ち上げる前に開催した「闘病中の人のためのヨガ」には宮井さんも参加してくださいましたね。
宮井:はい。約18年ピラティスに取り組んできましたが、今年は改めてヨガにはチャレンジしているところです。今年は私自身の経験をふまえて、ヨガ・ピラティスによる運動療法の価値の発信にも力を入れたいと思っています。
渋谷:ヨガという提案も、その最もポジティブな面を挙げると「自分の心や体への気付きになり、自分の心と体の声を聴けること」です。ヨガを通して、それ以外の健康情報でも、読者の方が記事を読んで気づきをがあり、どうアクションするかという好循環をこれからも生み出していきたいですね。
AUTHOR
腰塚安菜
慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代から一般社団法人 ソーシャルプロダクツ普及推進協会で「ソーシャルプロダクツ・アワード」審査員を6年間務めた。 2016年よりSDGs、ESD、教育、文化多様性などをテーマにメディアに寄稿。2018年に気候変動に関する国際会議COP24を現地取材。 2021年以降はアフターコロナの健康や働き方、生活をテーマとした執筆に転向。次の海外取材復活を夢に、地域文化や韓国語・フランス語を学習中。コロナ後から少しずつ始めたヨガ歴は約3年。
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