情報の中から健康を選ぼう。あたりまえでない健康と、SLEをみんなごとにするヒント
宮井:「世界ループスデー」という日だからこそ、どのようにして確定診断を受けるまでに至ったのか発症当時の体験談をお伝えします。
SLEは20代から40代の女性の発症が最も多いと言われていて、私は46歳で発症しました。
確定診断に至る前の膠原病予備の状態で約10年過ごしましたが、発熱、倦怠感といった風邪の初期症状に似た状態でワンルームのベッドとトイレを往復する体力しかなく、この10年が発病時よりも心身共に辛かったです。
2019年にSLEを発病した約2週間ほど前に40度の高熱が続き、耳下腺の腫れや倦怠感を繰り返して、約10日ほど過ぎた頃、SLEの典型的な症状と言われている「蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)※」が出たので、これは間違いないと思い、膠原病内科を受診しました。
※蝶のような形をした皮膚の赤み。「世界ループスデー」のシンボルマークともなっている。
これまで膠原病予備軍と医師に告げられた時、SLEの確定診断を受けた時、再燃した時と過去3回の節目があったのですが、何年経とうと味わった痛みや辛さは忘れたことがありません。
病気と共に生きる上で、SLE当事者それぞれが持つストーリーがあります。この機会に是非、身近な人と健康について考えるきっかけにしてもらえると嬉しいです。
渋谷: 私は自分が「不健康だ」という気持ちはなく、健康実感はあるのですが、今一度この節目に考えたいと思っていました。健康に関する情報をもお届けしている側ですが、自分個人の話になると無頓着だったなと反省し、実は最近、忙しくて看過していた婦人科系の悩みに再び向き合って治療を始めたり、健康診断の結果を持って、生活習慣病クリニックに行き始めるというアクションをしたところです。
昨年12月に開催したイベント「Meetup for Wellness」に参加いただいた医師の新見正則先生が「どんなに健康的な暮らしをしていても、病気になる時はなる。だから自分を責めないでほしい」とお話されていて、そこでまた健康への意識が変わりました。今、病気でないからといって永遠にかからないことはないし、もし病気にかかっても、その時の自分にとって必要なこと、すべきことをするということが、何よりも大切ではないでしょうか。
生活の質(QOL)を高める選択肢のひとつに運動、ヨガ・ピラティスを考える
宮井:今年、2年5ヶ月ぶりに、ピラティスインストラクターの仕事に復帰しました。今、私は自分自身の経験をふまえて日々、年齢に合わせた運動によるメンテナンスが重要だなと実感しています。
私は現在SLEと突発性の大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)という病気と日々向き合う中で、ライフステージや体の状態に合わせて運動に向き合う目的が変わりました。
渋谷:「ヨガをやったから明日、劇的に健康になる」というものでもないし、セルフケアというより、単なる運動やフィットネス、「ダイエット目的で行うものがヨガ」というイメージもまだ残っている部分もありますから、インストラクターの方や発信者の方々と一緒にヨガ・ピラティスのハードルを下げていかねばと思います。
宮井:ヨガをスピリチュアルな観点で捉える方も多いですが、ピラティスと同様に体も心も強くなる感覚があります。この感覚は実際に続けてみないとわからないことですね。
サプリと違って高いお金をかけずとも体ひとつで体験できますし、ヨガやピラティスは、昨今、医療従事者さんも運動療法として積極的に導入しています。医療に携わる方にも実践していただき、その感覚や効果を伝えてほしいです。
渋谷 :健康に関する情報発信に携わる立場なので、科学的根拠やエビデンス、情報の正確さといった点には慎重になっています。一方で、先に紹介した医師の新見先生がお話しされていた「自分にとって気持ちいいことを続ければ、それもまた正解」というご意見にも深く共感できました。
宮井:ピラティスを教えている中で、ただ「運動をしよう」と言うだけでなく「年齢や今の自分の体調に見合うも運動を選ぶことが大切ですよ」とお伝えしています。ヨガ・ピラティスに抵抗を感じている方が「ちょっと始めてみようかな」と思うきっかけになれたら嬉しいですね。
渋谷:特にピラティスはリハビリを目的として始まり、筋力のない方が寝たままでもできるので、息が上がって苦しいといった心配もなく、そんなにハードルの高いものではない、誰もがとっかかりやすいものだと思いますね。
AUTHOR
腰塚安菜
慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代から一般社団法人 ソーシャルプロダクツ普及推進協会で「ソーシャルプロダクツ・アワード」審査員を6年間務めた。 2016年よりSDGs、ESD、教育、文化多様性などをテーマにメディアに寄稿。2018年に気候変動に関する国際会議COP24を現地取材。 2021年以降はアフターコロナの健康や働き方、生活をテーマとした執筆に転向。次の海外取材復活を夢に、地域文化や韓国語・フランス語を学習中。コロナ後から少しずつ始めたヨガ歴は約3年。
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