更年期の動悸、実は更年期症状ではない場合も?命に関わるような病気の可能性もある。違いは|医師解説

 更年期の動悸、実は更年期症状ではない場合も?命に関わるような病気の可能性もある。違いは|医師解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-04-07

更年期症状のひとつでもある動悸。ですが時に、更年期症状と片付けられない場合があります。医師が詳しく解説します。

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更年期の「動悸」とは

動悸とは「心臓の鼓動に敏感になって、不快感や違和感を自覚する状態」のことを言い、女性ではよくある症状です。女性ホルモンは、脳の視床下部によってコントロールされていますが、更年期になると卵巣の機能が衰え女性ホルモンの分泌がうまくできなくなります。卵巣の機能が低下・停止しているのにもかかわらず、視床下部は「女性ホルモンが減った」という情報をもとに性腺刺激ホルモンを出し続け、ついには視床下部がパニックに陥ってしまいます。視床下部は、自律神経や免疫系の中枢でもあるので、自律神経のバランスも崩れてしまいます。自律神経は、拍動や呼吸などをコントロールしているため動悸や息切れなどの症状が引き起こされてしまいます。更年期障害による動悸が疑われたら、ホルモン充填療法を試みたりや桂枝茯苓丸、加味逍遥散、当帰芍薬散などの漢方の処方などを処方します。

動悸を引き起こす心臓の病気とは

動悸を引き起こす原因としては、不整脈、不整脈以外の心臓の病気、貧血やホルモン分泌の疾患、高血圧、低血圧、薬の副作用、カフェイン・アルコールの摂取、ストレスなどが挙げられます。激しい運動をした時や緊張した時などに、一時的に強い拍動を感じることは通常の反応であり、問題ありませんが、動悸症状が長い期間続く、あるいは動悸以外の症状(息苦しさや倦怠感など)が合併している場合は、一度医療機関で検査をしてみるようにしましょう。

一般的に、正常な脈拍数は1分間に60〜100回とされていますが、何らかの原因により脈拍が一定でなくなる状態のことを不整脈といいます。具体的には「脈が速い(頻脈)」「脈が遅い(徐脈)」「脈が不規則」などが挙げられます。心臓は、全身に血液を送り出すポンプとしての役割を担っていて、脈拍のリズムは、右心房の「洞結節」から出る電気によって決まり、電気は心房を通って「房室結節」に辿り着くことで心室を動かして血液を全身に送り出しています。心臓は1日に約10万回動いているのですが、その中で一回でも乱れたものがあれば、それは不整脈とされていて、不整脈そのものは、健康な人でも気が付かないうちに起こっていることもよくあります。

不整脈
不整脈や不整脈以外の心臓の病気、高血圧、薬の副作用など様々な原因が考えられる。たかが動悸と放置せず、病院へ。photo by Adobe Stock

不整脈の中でも、特に期外収縮は正常なリズムの中に時々不規則な拍動があらわれるものをさします。不整脈の中でも最も多く発生するものです。期外収縮は、主に洞結節ではない別の場所から電気が早めに出てしまうことが原因となり発生します。脈拍を測っている途中に脈が飛んだと感じたり、胸がドキドキする・胸がつまるような感じがするなどの自覚症状があらわれることもあります。期外収縮を指摘された人のうち、およそ95%は治療の必要がないといわれていますが、期外収縮は、心筋梗塞や心筋症でも発生することがあり、その場合は危険な不整脈に移行することがあるので注意が必要です。

更年期の「動悸」と心臓病との見分け方や違いは?

女性ホルモンの分泌が低下することで、心拍や呼吸などをコントロールしている自律神経のバランスが崩れ、動悸や息切れなどの症状があらわれます。そのような際には、呼吸を整えて、深い腹式呼吸をして、リラックスすることを心がけましょう。

不整脈を症状から簡単に自分で確認できるチェックリスト内容としては、安静時に胸がドキドキして動悸することがあるか、脈が乱れたような感じがするか、階段を昇る際や速足で歩くと息切れするか、常に倦怠感があり疲れやすいかなどが挙げられます。不整脈には生理的なものもあり、9割の人は治療の必要はない不整脈であるといわれていますが、中には適切な治療を行わないと命にかかわるような不整脈もあります。不整脈の治療方法は確立しているため、きちんと治療をすれば不整脈を抑え安心して生活することができます。健康診断で不整脈を指摘された、あるいは普段の生活で動悸や息切れなど気になる症状があれば、まずは循環器内科など専門医療機関で適切な検査を受けるようにしましょう。

動悸の症状があっても、必ずしも治療が必要だというわけではありませんが、検査の結果、動悸を起こす原因となる病気が見つかった場合や、動悸の症状により日常生活に支障をきたす場合などは、原因に応じた治療が行われます。一般的に病院を受診することが望ましい目安として、強い動悸や立ち眩み・めまいを覚える、また安静時に胸痛や息切れを自覚するなどの症状や所見を認めることが挙げられます。不整脈は早期発見することで病状の悪化を防ぐことができますし、最悪の場合として考えられる突然死を未然に予防することにも繋がりますので、特に家族や親戚で心臓病を患っている方がいる場合や突然死した人が存在する際には前向きに受診しましょう。

まとめ

これまで、更年期に「動悸」が起こる可能性もあること、特に動悸を引き起こす心臓病との見分け方や違いなどを中心に解説してきました。動悸とは、心臓の鼓動が普段よりも大きく強く感じたり、早く感じたりする症状のことを指します。エストロゲンなどの女性ホルモンは脳の視床下部からの命令によって卵巣から分泌されており、更年期になると、その卵巣機能が低下して視床下部からの命令がうまく伝達されなくなります。このような状態になると、自律神経に深く関与する視床下部が正常に機能しなくなり、自律神経のバランスが崩れてしまいます。

心拍は、自律神経によってコントロールされているため、動悸などの症状が引き起こされます。動悸は更年期の症状だけではなく、心臓病など別の病気の症状として出る場合もあり、自分だけで判断せずに専門医に一度相談してみることをおすすめします。動悸は特に治療の必要のないケースも多いですが、重大な病気が隠れていることもあるため、気になる症状があれば医療機関を受診し、適切な検査・治療を受けるようにしましょう。特に、胸の痛みや圧迫感、息切れの症状がある、脈拍数が1分間に120回以上、もしくは45回未満である、家族に心疾患や突然死、繰り返す失神、けいれん性疾患の病歴がある、運動による動悸で意識消失症状があるときは、早めに医療機関を受診しましょう。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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