更年期世代の頭痛は放置厳禁!実は高血圧が原因?更年期の頭痛と高血圧との見分け方や違い|医師が解説
「40代になって、頭痛が気になるようになってきた」と悩む人は少なくありません。更年期の症状のひとつとして、頭痛があるのは事実ですが、それ以外にも重大な原因が隠れていることもあります。医師が解説します。
更年期の「頭痛」とは
頭痛という症状は、更年期の女性にも比較的よく認められる症状であり、日常生活上軽視出来ない症状の1つであると言えます。一般的に頭痛は、頭の中の病気(くも膜下出血,脳腫瘍など)に由来する二次性頭痛、あるいは頭痛の出現パターンが診断の決め手となる機能性頭痛とに分類されます。
機能性頭痛の代表は、片頭痛や緊張型頭痛です。このうち、片頭痛は30〜40歳代の女性、そして緊張型頭痛はいずれの年代でも女性の有病率が高いという特徴がありますので、更年期の女性で頭痛が気になる方は、その頭痛がいつ頃から認められるようになったか思い出してみましょう。
頭痛を引き起こす高血圧とは
高血圧というのは、その名の通り血圧が高い状態を指しており、偶然測った血圧が高いだけでは高血圧症とは言い切れず、繰り返して測定しても血圧が正常値より高い場合を意味しています。現在のところ、高血圧症は我が国において約4000万人以上にも及ぶ国民が罹患していると言われており、高血圧を制御することによって本邦における脳血管障害や心臓病の発症を抑制することが大いに期待されています。
高血圧症が長期的に持続することで動脈硬化が知らぬ間に進行して、脳卒中や心筋梗塞が引き起こされる、あるいは心機能が低下して心不全に罹患しやすいと考えられているため十分に注意を払うことが重要な視点となります。軽度の高血圧であれば無症状で経過することも少なくないために本疾患は放置される傾向がありますが、様々な合併症を未然に防止するためにも早期から意識的に治療介入することが肝要です。
高血圧は、大きく本態性高血圧と二次性高血圧に分類することが出来ます。一般的に、多くの方が罹患している本態性高血圧が発症する背景には生活習慣が密接に関与しており、日常的に塩分を取り過ぎる、肥満、運動不足、過剰なストレスなどが発症原因となります。血圧を上げる原因を特定できない本態性高血圧に関しては、何かしらかの遺伝的な異常を基盤として過食などの生活習慣因子や環境要因が加わって起こると言われています。
一方で、二次性高血圧とは高血圧を引き起こす器質的な原因を特定できるものを指しており、例えば腎性高血圧や内分泌疾患である原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症などの基礎疾患に続発して高血圧を来すタイプを意味します。それら以外にも、睡眠時無呼吸症候群に続発する高血圧や薬剤性に引き起こされる高血圧なども周知されています。
更年期の「頭痛」と高血圧との見分け方や違いは?
「40代になって、頭痛が気になるようになってきた」と悩まれる方は少なくありません。頭痛の原因はさまざまありますが、実際には更年期もそのひとつです。ただし、更年期の症状のひとつとして、頭痛があるのは事実ですが、それ以外の重大な原因を除外することが大切です。
一般には、最高血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、あるいは最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上であれば、「高血圧」と診断されることになります。多少の範囲であれば血圧が高くても、自覚症状を感じないのが通常ですが、血圧がかなり高い際には頭痛やめまい、肩こり症状などが典型的に認められます。実際のところは、これらの代表的な症状は血圧とは無関係によく経験されるものですから、高血圧は自覚症状が意外と当てにならない病気と言えるがゆえに、症状の有無に関わらずに定期的に検査や治療を受ける必要があると言えるでしょう。
高血圧の状態を放置していると、動脈硬化を悪化させて脳卒中や心疾患など死に至る重篤な病気の発症の引き金となり、慢性腎臓病などの重大な病気に繋がることになります。高血圧症では、合併症の出現に細心の注意を払うことが重要であり、心臓や腎臓の機能が徐々に低下して心不全や腎不全に陥ってしまうと呼吸困難や全身浮腫、不整脈、貧血症状などを生じて最悪の場合には死亡することも考えられます。最近の研究では、収縮期血圧(最高血圧)が10mmHg上昇すると後遺症が残存して長期リハビリを要する脳卒中疾患を発症するリスクが男性で約20%、女性では約15%程度高くなることが判明しています。
まとめ
これまで、更年期に「頭痛」が起こる可能性もあること、特に頭痛を引き起こす高血圧との見分け方や違いなどを中心に解説してきました。頭痛に関しては、更年期障害に関連して認められる場合もあります。
一方では、更年期によく見られる症状と考える前に、機能性頭痛である片頭痛や緊張型頭痛の可能性がないのかどうかを検討する必要があります。また、今までなくて急激に出現する頭痛の場合は、高血圧に随伴するくも膜下出血などの緊急対応が必要な病気の可能性もありますので、婦人科だけではなく頭痛診療の専門である神経内科や脳神経外科を受診されることを推奨します。今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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