管理栄養士が教える〈血糖値の上昇を抑える正しい食べ方〉あなたの「ベジファースト」間違っているかも
野菜から食べることで食後血糖値の急上昇を抑える「ベジファースト」。ダイエットや健康管理のために、毎日の食事で実践している人も少なくないでしょう。でも、あなたの方法は間違っているかもしれません。この記事では食事指導に携わる管理栄養士が、ベジファーストの正しい方法を紹介します。食べ方にも配慮して、体にやさしい食事を摂ってくださいね。
そもそもベジファーストとは
ベジファーストとは、野菜から食べはじめることで食後血糖値の急上昇を抑えて、肥満や動脈硬化、糖尿病などを予防する食事法のことです。
食事を摂ると糖質が体に吸収されて、血液中の糖質の濃度を示す血糖値が上昇します。血糖値を下げるのは、インスリンというホルモンの役割です。インスリンは、血液中の糖質を脂肪に変えて体に蓄えることで血糖値を下げています。食後に血糖値が急上昇するとインスリンが大量に分泌され、糖質が多くの脂肪に変わるため太りやすくなるのです。血糖値が高い状態が続いたり、血糖値の急上昇と急降下を繰り返したりすると、糖尿病や動脈硬化のリスクも高まります。
そこで、血糖値を上げ過ぎない食事の摂り方が重要になるのです。食物繊維には、糖質の吸収を遅らせて、血糖値の上昇を緩やかにする作用があります。そのため食物繊維が豊富な野菜や海藻、きのこのおかずから食べはじめ、糖質が多いご飯やパン、麺類などの主食をあとで食べるベジファーストが、肥満などの予防に効果的とされています。
時間をかけて食べることが大切
ベジファーストに取り組んでいる人のなかに「とにかく野菜から食べればよい」と思い、野菜のおかずを2〜3口食べ、すぐに主食に手を付けている人はいませんか?実はこのような食べ方では、ベジファーストの効果はあまり期待できません。
食事をはじめてから5〜10分ほど経たなければ、血糖値の急上昇を抑制する効果は得られないとされています。そのため野菜から食べはじめても、5分以内に主食に手を付けていれば、血糖値の上昇抑制効果は十分に発揮されないでしょう。
時間をかけて食事を摂ることは、食べ過ぎの予防にも効果的です。満腹と感じるのは、食事を開始して血糖値が上昇し、脳の満腹中枢が刺激されるため。しかし脳が血糖値の上昇を感知するまでには、15分ほどかかると考えられています。野菜から食べはじめたとしても、食事開始から15分までの間に早食いして多量の糖質を摂っていては、血糖値の急上昇は避けられません。
よく噛みながらゆっくりとしたペースで食事を摂れば、食事量は自然と抑えられるでしょう。また食べ物を噛むと、脳から神経物質のヒスタミンが分泌されます。ヒスタミンが満腹中枢を刺激することでも、満腹と感じやすくなります。よく噛み、ゆっくり食事を摂ることで食べ過ぎを防ぎ、血糖値の急上昇を抑えましょう。
血糖値を上げにくい食事のコツ
血糖値の急上昇を防ぐには、次のポイントにも気をつけましょう。
・食物繊維が多い野菜の次は、たんぱく質が多いおかずを食べる
・糖質が多い野菜やおかずは、主食と同じタイミングで食べる
肉や魚、卵、乳製品など、たんぱく質が豊富なものを摂ると、小腸からホルモンの一種であるインクレチンが分泌されます。インクレチンの働きは、胃の運動を抑えること。食べ物の移動が遅くなるため消化吸収スピードが低下し、血糖値の上昇も緩やかになるでしょう。
インクレチンには、インスリンの分泌を促す作用もあります。食事はまず野菜、次にたんぱく質が多いもの、最後に糖質が多い食品という順番がおすすめです。
じゃがいもやさつまいも、かぼちゃ、とうもろこしなどの野菜には糖質が多く含まれます。甘辛い煮物のような砂糖やみりんを多く使ったおかずも、糖質が多めです。これらのおかずは食事の最初ではなく、主食と同様に食事の最後のタイミングで食べるようにしましょう。
ベジファーストは、とにかく野菜を最初に食べればよいわけではありません。血糖値をうまくコントロールするためには、よく噛んでゆっくり食べることが大切です。肥満を防ぎ、体に負担をかけない食べ方ができているか、見直してみてはいかがでしょうか?
【参考文献】
保健指導リソースガイド「肥満予防に『ゆっくり食べる』ことが効果的 よく噛んで食べるための8つの対策」
糖尿病ネットワーク「『炭水化物は最後まで残しておくべき』食べる順番で血糖上昇を抑える」
ロッテ「噛むこととメタボの意外な関係」
AUTHOR
いしもとめぐみ
管理栄養士。国立大学文学部を卒業後、一般企業勤務を経て栄養士専門学校に入学し、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して2022年に独立。食が楽しくなるレシピを発信するほか、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。
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