「年齢を重ねても、冒険をし続けたい」アリソン・クレイグさんのお話 #OVER70の人生哲学

 「年齢を重ねても、冒険をし続けたい」アリソン・クレイグさんのお話 #OVER70の人生哲学
松尾奈美
松尾奈美
2023-04-20
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——これまでの人生を振り返って、ご自身にとって一番のトピックスだと思える出来事は何ですか?

アリソンさん:私の中には、今までの人生の中で起こった出来事が数多く刻まれています。その中でも特に重要なのは、数々の冒険の中で、自分にとってのベストを尽くし「できた!」という達成感を味わえたことです。先ほど、50代で大型バイクの免許を取得したとお話ししましたが、オーストラリアの壮大なアウトバックをハーレーに乗って旅をし、満月の夜にエアーズロックに到着したり、地中海の青空に浮かぶ島々をボートで旅をしたりと、異国情緒溢れる旅の数々の思い出は尽きません。

また、決して忘れることができないのは、常に死と隣り合わせだった内戦下の暮らしです。長年住んだ中東では、戦闘機が村を空爆し、侵略軍が街をミサイルで攻撃して空を照らす中で、生まれて間もない子どもたちをこの手に抱きながら見た光景が、今も目に浮かびます。体や心だけでなく、魂が揺さぶられる体験をしました。

尊敬する両親を筆頭に、人生の冒険を通して出会ったかけがえのない貴重な人たちが、今も私の人生の中に存在し、また私が彼らの人生の一部に存在していることが幸せなのです。年齢を重ねても、私はこれからも冒険をし続けたいと思っています。新しい価値観を学び、異文化間の相互理解を深められる場所を探し続けたいと思っています。

——長い人生の中で、出会いと別れを繰り返してきたかと思います。特に別れに関しては、“喪失“と捉えるととても悲しくて辛いもの。別れをどのように捉えて、どのように乗り越えて来られましたか?

アリソンさん:喪失とは、友人や家族、パートナー、あなたにとって大切な人たちとの別れを意味します。自分にとって大切な人には、世界各地に飛び立つよりも、身近に居て欲しいと思うかもしれません。でも私は、かつてそうして世界に飛び立った1人でした。「もっと広い世界を体験したい」「自分の見識を広げたい」と好奇心旺盛で行動力に満ち溢れた若者だった私は、大学の卒業旅行に6ヶ月の予定で旅に出て、インドを皮切りに興味の赴くままに各国を巡り、ニュージーランドに帰ってくるまでに何十年もの時間を費やしました。そんな私の息子も世界に飛び立ったまま、まだ戻ってきていません。

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インドを旅していた、若い頃のアリソンさん。

最近、家族のような友人達が皆、他の国で新しいことや人生に挑戦するために旅立ちました。死というような永遠の別れではありませんが、彼らはもうここにはいないのです。だから、私たちは喪失に対処する方法を考えなければいけません。悲しむよりも前を向いて生きていくために、考えを転換し、連絡を取り合うように努力します。現代においては、メディアを活用すれば、お互いのライフスタイルを共有できる方法はいくらでもあります。

——アリソンさんが人生の中で大切にしているものがあれば教えてください。

アリソンさん:今、私の家にはモノが多すぎるんです。今までの人生を彩ってきた、一代記みたいなもので溢れかえっています。例えば、ペルーのマスク、タイのフルート、タヒチの貝のネックレス、日本の美しい陶器たち…どれも大切なお気に入りのモノ達ですが、最近になってようやく「少ないほうがより豊かである」と思うようになりました。今こそ、手放す時かもしれません。物質的なモノよりも、日々の言動や人との繋がりなど、物理的なスペースを取らないことにもっと集中することで、さらに心の豊かさや人生の幸福感が高まるのだと思います。

——「年齢を重ねること」は時としてネガティブに捉えられがちです。その誤解を解くために考えていらっしゃることを教えてください。

アリソンさん:私たちは年齢を重ねるごとに価値を高めていきます。誰もが自分のストーリーを通して人生の経験を誰かに教え、誰かを勇気づけることができるのです。人生において、これ以上の価値ある貢献はないでしょう。もちろん、若い頃のような体力や気力はないかもしれませんが、それ以外の強みがたくさんあるのだから、それに自信を持って欲しいですね。

取材後記

筆者はあるきっかけから彼女の家に住むことになり、今では母と娘のような関係です。彼女を側で見ていると、“生きがい“という言葉が自然と頭に浮かびます。人生において大切なことは、全ては自分の選択次第。それを最大限に活かすことで、当たり前の日常が幸せに変わることに気づくことができました。忙しくても好きなことに没頭できれば、何歳からでも、脳は活性化され、健やかで強い体と心を造ることができるのでしょう。

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松尾奈美

松尾奈美

ウェルビーイングコンサルタント。ニュージーランド在住。Hale Puleマイラ・リューインのもと、アーユルヴェーダとヨガの指導に携わり10年。アーユルヴェーダとヨガを通して、「女性の幸福度を高める」ための鍵となるWell-beingの4つの柱:食生活、ライフスタイル、睡眠とホルモン、エネルギーワークに基づくコンサルタント、情報を発信。



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