メンタル不調の患者も家族も「共倒れ」にならないように|負担を分散させる「精神科訪問看護」とは
メンタル不調の患者さんは、家族だけで支えていかなければいけないのでしょうか。「精神科訪問看護」を利用して、家族の負担を分散させましょう。今回は、精神科医・産業医の井上智介さんによる著書『どうする?家族のメンタル不調』(集英社)をもとに、制度についてみていきます。
精神科訪問看護って何?
一般的な訪問看護は、看護師や理学療法士等が利用者の自宅を訪問し「血圧、脈拍、体温、病状のチェックなど」「排泄、入浴などの介助」「在宅での看取り」など、主治医の指示に基づいて療養上の世話や診療の補助などを行います。
精神科や心療内科にかかっている患者さんは「精神科訪問看護」の制度を利用することができます。サポート内容は、訪問看護と同様に健康状態のチェックや悩みに合わせた看護など。うつ状態がひどい場合は簡単な家事の手伝いを行うこともあります。
家族が同居していても利用に制限はかかりません。精神科訪問看護は各種健康保険を適用することができます。主治医の指示が必要なため、精神科訪問看護を希望する場合はまず相談してみましょう。
精神科訪問看護のメリット
精神科訪問看護のメリットは、第三者が治療のサポートに入ることです。家族が言っても怒り出して聞かないこと、たとえば薬の管理などは、看護師さんが聞くと素直に答えてくれる場合があります。
また、患者さんを支えなければいけないというプレッシャーを感じている家族にとっても、頼れる相手がいるのは安心できます。困りごとをちょっと口に出してみる、このような些細なアクションでも心の負担はぐっと軽くなるはずです。
訪問看護の情報は主治医と共有されます。「薬がゴミ箱に捨ててあった」「部屋がひどく散らかっていた」などの診察では見えない状況を知ることで、患者さんの治療に役立てることができます。
患者さんが支援を断る理由は?
家族にとっても、患者さんにとっても精神科訪問看護は非常に有益にもかかわらず、利用を断る患者さんがいます。担当の看護師と気が合わなかったり、家に入られるのが嫌だったり、理由は様々ですから、直接本人に断った理由を聞いてみるのがよいでしょう。
患者さんのそばに家族がずっといるわけにもいかず、訪問看護も拒否してしまうとなると、薬の管理がおろそかになって症状が悪化することも考えられます。自宅に患者さんを一人にしておけない、かつ訪問看護も嫌がるときは、入院を検討することも必要かもしれません。
メンタル不調をサポートするには、家族だけで悩みを抱えず、利用できる制度を使って負担を減らすことも大切です。「うちは対象外だろう」と思い込んでいるケースも多いですが、利用できるケースがほとんどです。まずは医師に相談してみてください。
『どうする?家族のメンタル不調』著者プロフィール/井上智介
島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動している。産業医としては毎月30社以上を訪問し、一般的な労働の安全衛生の指導に加えて、社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた対話を重視した精神的なケアを行う。精神科医としてはうつ病、発達障害、適応障害などの疾患の治療だけではなく、自殺に至る心理、災害や家庭、犯罪などのトラウマケアにも力をいれている。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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