【家族のメンタル不調】薬を飲みたがらない…どうする?家族が知っておくべきこととは
家族がメンタル不調を抱えたら、症状がよくなるためにも「病院に行ってほしい」「薬を飲んでほしい」と思うでしょう。しかし、患者さんがそれを拒否する場合、家族としてどのように対応すればよいのでしょうか。今回は井上智介 著『どうする?家族のメンタル不調』(集英社)からヒントをいただきました。
病院に行きたがらない、薬を飲みたがらないは「よくあること」
メンタル不調を抱えた患者さんが病院に行きたがらなかったり、処方された薬を飲まなかったりするのはよくあること。家族から「病院に行ったほうがいいよ」「薬を飲んだほうがいいよ」と言われると、反発し言い争いになるケースも多く、患者さんを支える家族の悩みにもなっています。
初期の適応障害などであれば無理に病院を受診させたり薬を飲まなくても、ストレス源から離れることで症状が改善されることもありますが、すべての精神疾患がこれに当てはまるわけではありません。家族は根気強く説得するほかありませんが、難しければ主治医に相談をしましょう。
家族はときに患者のかわりに判断する役割も
症状が悪化し患者さんが判断できないとき、代わりに判断するのは家族です。病院を受診しない、薬を飲まないと症状が激しくなる患者さんはたくさんいます。その場合、主治医の判断でご家族と協力して患者さんに薬を飲ませることもあります。たとえば、食事に薬を混ぜるのも一つの手段です。
薬の副作用が強いときも、我慢せずに主治医に相談を。処方した薬を変更することはよくあることなので、嫌な顔をする精神科医はいないでしょう。副作用が嫌で薬を飲まない、病院を受診しないことのほうが、患者さんの負担が大きくなります。
うつ状態にある患者さんは判断力が落ちています。そのため、薬の管理を家族がサポートしたり、「こういう考え方もあるよ」と患者さんをアシストしたりすると、状況が好転することがあります。うまく主治医に頼りながら、患者さんの治療を見守ってください。
薬の効果は出てくるまでに時間がかかることを知っておこう
どのような理由から患者さんは薬を飲みたがらないのでしょうか。薬の効果は、患者さんが実感できるまでに時間がかかります。たとえば抗うつ薬だとおよそ4週間。一方で副作用が生じる場合は飲み始めてすぐに症状があらわれます。
見守っている家族は「なぜよくなるための薬を飲まないの」ともどかしさを感じるかもしれませんが、効果を実感できない期間も副作用がある薬を飲むことが嫌になってしまう患者さんがいるのです。また、薬を飲むことで自分が精神疾患であることを受け入れなければなりません。目には見えませんが、患者さんは不調の症状に加えてさまざまな葛藤と戦っているのです。
薬を処方されてから最初の1、2ヵ月は特に声をかけながら寄り添うこと、これが家族としてできることでしょう。メンタル不調の患者を抱える家族は、症状があらわれたとき以外にも患者さんをサポートしなければならない場面に直面します。普段の患者さんと比較して「なぜできないの?」と思っても、一度立ち止まって、家族としてできることを考えてみるのがよいかもしれません。
『どうする?家族のメンタル不調』著者プロフィール/井上智介
島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動している。産業医としては毎月30社以上を訪問し、一般的な労働の安全衛生の指導に加えて、社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた対話を重視した精神的なケアを行う。精神科医としてはうつ病、発達障害、適応障害などの疾患の治療だけではなく、自殺に至る心理、災害や家庭、犯罪などのトラウマケアにも力をいれている。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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