症状が悪化していなくても入院できる?知っておきたい「休息のための入院」とは【家族のメンタル不調】
「うつ症状の家族を一人にしておけない」「気分が落ち込んで、このままだと悪化しそう」、そんなときに患者さん(または家族)の希望で入院できる「レスパイト入院」(休息のための入院)があることをご存知でしょうか。今回は井上智介 著『どうする?家族のメンタル不調』から、症状が悪くなる前の入院についてお話しします。
「休息のための入院」がある
症状がひどくなると、その分治療に時間がかかります。そうなる前に、もっと軽い気持ちで入院を希望してもよいのです。「ちゃんとしっかり休みたい」「気落ちしているから、誰かに一緒にいてもらいたい」と患者さんの希望で入院することを「レスパイト入院」(休息のための入院)と言います。
世間一般では、精神疾患で入院と聞くと、あまりいい印象がありません。患者さんによっては行動制限を行う場合もありますが、「錯乱した患者さんが入院するところ」「一度入院したら簡単には出られない」というイメージはもう古いものです。症状がひどくなる前に早めにしっかり休息をとって、回復をはかりましょう。
精神科の入院制度には大きく分けて4つあります。
・任意入院:患者さんが自ら希望する入院
・医療保護入院:家族等の同意による入院
・措置入院:他者に危害を加える可能性があると判断された場合の入院
・応急入院:医療と保護が必要だが、家族等の同意が得られない場合に、72時間以内に限り入院
レスパイト入院はこのうち患者本人の希望による「任意入院」にあたり、健康保険が適用できます。
「悪くなる前に」「患者さんと少し離れたい」レスパイト入院する理由
たとえば、育児に疲れ心を病んでしまったお母さんがレスパイト入院することで、心身の回復をはかります。症状が悪くなる二歩ぐらい前で入院するイメージで、早めに行動することで気持ちを回復に集中させることができます。
レスパイト入院は、介護やその他の疾患の患者さんも行える入院です。患者さんの理由として「このままだと調子が悪くなりそう」、サポートする家族の理由として「家族の都合で一人にしておけない」「患者さんのサポートに疲れた」など、症状が悪化していなくても入院を希望できることを治療の選択肢として知っておいてください。
入院する病院は自分で決める
入院する病院の調整は基本的に患者さんとご家族になります。入院したい病院が見つかったら、主治医に相談して紹介状を書いてもらい、病院と連絡をとります。いざというときに、レスパイト入院がスムーズに行えるように、あらかじめ近隣の病院を調べておくとよいかもしれません。
『どうする?家族のメンタル不調』著者プロフィール/井上智介
島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動している。産業医としては毎月30社以上を訪問し、一般的な労働の安全衛生の指導に加えて、社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた対話を重視した精神的なケアを行う。精神科医としてはうつ病、発達障害、適応障害などの疾患の治療だけではなく、自殺に至る心理、災害や家庭、犯罪などのトラウマケアにも力をいれている。
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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