メンタル不調による休職から社会復帰するまで|精神科医が教える、患者と患者家族に「してほしいこと」

 メンタル不調による休職から社会復帰するまで|精神科医が教える、患者と患者家族に「してほしいこと」
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メンタル不調を抱え、休職した患者さんはどんなタイミングで社会復帰できるのでしょうか。サポートする家族が復帰に焦ると、患者さんに伝わり、復帰が遠のく可能性も。今回は井上智介 著『どうする?家族のメンタル不調』(集英社)から、復帰のタイミングと条件のヒントをいただきましょう。

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社会復帰に向けて、まずは「体力をつける」

休職してからしばらく経ち、患者さんの調子も良さそう。次のステップとして、家族は「そろそろ仕事に復帰できるのではないか」と考えますよね。しかし、すぐに以前のように働けるとは限りません。家では普通に過ごせても、通勤、職場での労働となると、かなり体力を使います。

復帰には「精神的にとても安定していること」と「十分な体力」があることが必要です。患者さん本人と家族だけで決めず、主治医に相談して復帰のタイミングを考えるとよいでしょう。

体力を取り戻すために、ステップを踏んで、少しずつ活動量を増やしていきましょう。

Step1.簡単な家事(郵便物チェック、洗濯、など)や散歩
Step2.会社方面へ出かけ、図書館などで回復具合を試す

Step3.実際に通勤する時間、通勤する電車に乗って勤務先まで行ってみる

本人の「無理」は自信がないだけ?

上に述べたステップは、最初からうまくいくとは限りません。あくまでトレーニング期間と思って、期待した半分できれば上出来、つらそうなら無理をさせないことが大切です。ここで家族が復帰に向けて焦ると、患者さんも無理をしてしまうことがあるので気をつけたいポイントです。

復帰に向けての準備が整い、家族や主治医から見ても大丈夫そうだと思っても本人が「まだ復帰は無理」と拒むことがあります。患者さんは「復帰したところで、またすぐ休んでしまうんじゃないか」という不安から自信がないのです。その場合、家族は「あれもできたね、これもできたね」と実際にできていることを褒める、「頑張っているね」と本人の努力を認め、自信を取り戻すまでサポートしてあげてください。

一度、エネルギーが枯渇しうつ症状を発症すると、たとえ少しずつできることを取り戻しても「これは本当に自分の力でできているのか」と疑ってしまう気持ちもあるでしょう。「大丈夫だよ」と支えることが家族にできることです。

どんな条件で会社に復帰できるかを確認しておく

どのような条件で会社に復帰できるかは会社によってさまざまです。就業規則で、フルタイムで働けるようになってから復帰するよう定められているところがあれば、短時間勤務から復帰できるところもあります。

主治医は会社の就業規則には口出しできません。復帰の目途が立ったら、どのような条件で復帰できるかをあらかじめ会社に確認しておく必要があります。会社に産業医がいる場合は、患者さんに合った働き方を提案してくれるので判断を仰いでみてください。

どうする?家族のメンタル不調
『どうする?家族のメンタル不調』井上智介・著(集英社)

『どうする?家族のメンタル不調』著者プロフィール/井上智介
島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動している。産業医としては毎月30社以上を訪問し、一般的な労働の安全衛生の指導に加えて、社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた対話を重視した精神的なケアを行う。精神科医としてはうつ病、発達障害、適応障害などの疾患の治療だけではなく、自殺に至る心理、災害や家庭、犯罪などのトラウマケアにも力をいれている。

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文/松村翠

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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