ストレッチの習慣が動脈硬化、がん、炎症の予防と治療に有効|研究から明らかに
やるべきだとわかっているほどストレッチをしていない傾向がある?この研究で明らかになったことは、その状況を変えるかもしれません。
ストレッチは、何かとイメージが悪くなっています。長年、ストレッチの効果は柔軟性にのみ関係すると考えられてきました。解剖学的な身体的差異に対する理解と評価が高まったこともあり、柔軟性は以前ほど憧れられなくなりました。最近、関節の安定性、強化のためのワークアウト、アクティブな動きを称賛するインスタグラムの投稿を、曲芸風のヨガポーズを見るのと同じくらいよく見かけるようになりました。
ストレッチに魅力を感じない私にとっては、この変化はホッとするものでした。緩やかなストレッチは、私の興味を維持するのに十分な感覚を生み出すことはなく、深く受動的なストレッチや長く能動的なホールドは、たいてい関節に痛みを感じさせ不安定な状態にします。実際、5年前、私はストレッチを完全にやめたのです。
しかし、最近の研究では、ストレッチは可動域をはるかに超える健康上の利点があることが示唆されています。いくつかの研究では、ストレッチは心臓の健康、ケガの治癒、さらにはがんに対する身体の反応を強化することに関連するとされています。有意な相関関係があるかどうか、また、ヴィンヤサヨガのような積極的なストレッチか、陰ヨガのような消極的なストレッチかについては、まだ研究によって明らかにされていませんが、現時点では以下のようなことが分かっています。
ストレッチがもたらす3つの(驚きの)健康効果
1.心血管系の健康
2020年、国際学術誌の「インターナショナルジャーナル・オブ・エンバイロメント・リサーチ・アンド・パブリック・ヘルス(International Journal of Environmental Research and Public Health)」に掲載された研究により、定期的なストレッチは動脈硬化、安静時心拍数、血圧を低下させ、40歳以上の成人の心血管の健康を改善する可能性があることが示唆されました。メタ分析に携わった研究者は、ストレッチは動脈にプラークが溜まるのを防ぎ、動脈硬化の進行を防ぐのに役立つと結論付けています。
2.炎症の抑制
学術誌の「ジャーナル・オブ・セルラー・フィジオロジー(Journal of Cellular Physiology)」に掲載された研究では、軟部組織の損傷が治癒する過程で定期的にストレッチを行うと、過剰な瘢痕組織や線維化の発生が抑えられると結論付けられています。このことは、ストレッチが結合組織の治癒を促進し、怪我に関連する過剰な炎症を解消する可能性を示唆しています。これらの知見を踏まえると、ストレッチは筋膜を含む内部組織の損傷の治療プロトコルの一部として検討する価値があると思われます。この研究の著者は、推奨されるストレッチの形態として、特にヨガを挙げています。
別の研究では、定期的なストレッチが結合組織の炎症制御を改善する可能性があることが示されました。炎症は、傷ついたり感染したりした組織が、熱くなったり、腫れたり、痛んだりする自然治癒サイクルの一部です。しかし、炎症が長期間続くと、姿勢や動作の癖に変化をきたす可能性があります。ストレッチは、慢性炎症に対する既存の薬物療法に加え、有用な治療法であることが示唆されました。
3.がんに対する免疫反応をサポートする
最近の研究では、定期的なストレッチががんの治療や予防に一役買う可能性があるという希望が示されています。研究者たちは、毎日ストレッチを行うことで、他の治療法がないにもかかわらず、腫瘍の大きさが52%減少することを明らかにしたのです。この驚くべき結果は、ストレッチ、慢性炎症、免疫反応の間の相互作用によるものの可能性があります。この研究はまだ人間の患者には適用されていませんが、ストレッチは低コストで体に優しく、従来のがん治療の非侵襲的な補助となる可能性があるようです。
教えてくれたのは・・・レイチェル・ランドさん
レイチェル・ランドさんは、ヨガメディスンのインストラクターとして、ニュージーランドのクイーンズタウンでグループとマンツーマンのヨガセッションを提供し、またPractice.YogaMedicine.comでオンデマンドのヨガセッションも提供している。レイチェルさんは、解剖学とアライメントの研究を実世界に応用することに情熱を注いでおり、ヨガを用いて、生徒が強さと安定性、そして心の透明性を生み出すのを助けている。また、新しいヨガメディスン・ポッドキャストの共同司会者でもある。
ヨガジャーナルアメリカ版/「The Hidden Benefits of Stretching (That You’ve Definitely Never Heard of Before)」
AUTHOR
ヨガジャーナルアメリカ版
全米で発行部数35万部を超える世界No.1のヨガ&ライフスタイル誌。「ヨガの歴史と伝統に敬意を払い、最新の科学的知識に基づいた上質な記事を提供する」という理念のもと、1975年にサンフランシスコで創刊。以来一貫してヨガによる心身の健康と幸せな生き方を提案し続けている。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く