『TIME』誌「世界で最も健康に良い食品50」に選出された油「ギー」を知ってる?作り方と効能
アーユルヴェーダで様々な方法で使われるスーパーフード「ギー」。アメリカでは「最も体に良い油脂ベスト5」の第1位に選ばれ、アメリカの『TIME』誌が選ぶ、世界で最も健康に良い食品50にも選定されたすごいオイルです。インド料理、スリランカ料理ではよく使われますが、日本ではまだまだ知られていないギーの魅力をアーユルヴェーダ著者のアカリ・リッピーがご紹介します。
健康美に欠かせないオイル、ギーとは?
ギーとは、無塩バターを精製して、水分・タンパク質・糖分を取り除いた高純度のオイルのことです。インド・スリランカ発祥の東洋医学アーユルヴェーダでは、様々な方法で病気の治療や健康増進法・美容法のためにギーを使います。
「脂質」というと、肥満が気になる人にはネガティブなイメージがあるかもしれませんが、脂質は「三大栄養素」の一つ。脂質は重要なエネルギー源になるだけでなく、細胞膜や核膜を構成するなど、体を作るために重要な役割を担っています。
近頃では、亜麻仁油が流行したり、オイル美容という言葉が流行るなど、徐々に「油」についての認識は変わってきていますが、「良い油」と「悪い油」を区別することが大切です。
控えるべき悪い油とは?
悪い油とは、大きく分けて2種類あります。人工的に作られた油である「トランス脂肪酸」と、「酸化した油」の2つです。トランス脂肪酸の有害性は日本でも知られるようになってきましたが、細胞膜の中に入り込み細胞の働きを狂わせ、栄養物質を食い荒らしてしまう危険な食品です。近年では、ガンや悪性リンパ腫の出現を引き起こすことが判明し、日本以外の多くの国で使用が禁止されています。しかし、残念ながら日本ではいまだにパンやお菓子の中に含まれています(ショートニングやマーガリン)。
また、どんなに良い油でも酸化すると、体内で活性酸素を増やし、細胞を傷つけるので「悪い油」になってしまいます。例えば健康に良いイメージがあるオリーブオイルですが、オリーブオイルは実から抽出しているので、光に触れたり、加熱すると酸化しやすい油です。亜麻仁油も同様で酸化しやすいので、健康のためと思ってとっている油が実は体内を傷つけていた……ということもありえます。
一方で、ギーの脂質の酸化反応は極めて低く、加熱調理にも使用でき、保存も常温で良いので、劣化しづらく使い勝手が非常に良いのがギーの特徴です。
ギーとは最高の脂質
ギーは、中鎖脂肪酸が多く含まれています。中鎖脂肪酸は一般的な脂肪酸と比較して消化吸収が4倍ほど高く、10倍のスピードで体内で分解され、エネルギーとして燃焼されます。つまり、脂肪になりにくいのでダイエット効果が高く、また海外ではスポーツ選手のエネルギー源としても重宝されています。味はバターに似ていますが、バターより長鎖脂肪酸が少ないため、バターの代用品として使っても脂肪が蓄積しにくいオイルです。
また、ギーはビタミンA、D、E、Kが豊富なので、肌や骨、脳、心臓、免疫系の機能に不可欠な栄養素を豊富に含んでいます。
しかし、何よりギーの魅力は「消化力を高めること」です。基本的に、全てのオイルは重性を持っているので、食べると消化に重く、負担をかけるのですが、アーユルヴェーダの古典ではギーは消化力を高めると記されています。特に、消化力が弱っていて、うまく消化できずに下痢や便秘を繰り返している人にとって、ギーは消化に負担をかけずに良質な脂質を摂取し、ビタミンなど他の栄養の吸収を高めるので、健康増進にも美容にも良い優秀なオイルです。便秘の改善にも効果的です。
ギーを作ってみよう!
ギーは、大きいスーパーやオンラインショップでも簡単に手に入りますが、自宅でも手軽にできるので作ってみても良いと思います。特に、市販のギーはクセのある臭いがある商品もあるのですが、手作りすると甘いお菓子のような香りになり、どなたでも使いやすいギーになります。
【材料】
無塩バター(質の良いもの。できればグラスフェッド。)
【必要な道具】
鍋、清潔な保存容器(ガラスがおすすめ)、茶こしやコーヒーフィルターなど。
① 鍋にバターを入れ、弱火〜中火にかけます。
② 火にかけるとすぐに、白い泡が出てきます。パチパチ大きい音が聞こえます。
③ たまにかき混ぜて、焦げていないのを確認しながら熱し続けます。
④ パチパチいう音が落ち着き、鍋の底に白い沈殿物が見え始めます。
⑤ 鍋の底の沈殿物が茶色っぽくなり、オイルが黄金色になったら完成です。焦げないように火から下ろします。(火を止めても温度は高いままなので焦げないように注意。)焦げ臭かったり沈殿物が黒っぽい場合は焦げてしまったので、その場合は残念ですが、失敗です。逆に沈殿物が白いうちは、まだ十分に精製されていません。
⑥ オイルから粗熱が取れたら、茶こしなどで漉しながら保存容器に移します。この時、白い泡がまだ多く残っていたら、先にスプーンなどで取り除くと不純物が入りづらいです。コーヒーフィルターで濾すと時間はかかりますが、よりしっかりと不純物が取り除かれます。
⑦ 漉し終わったら完成です。布などを軽く被せて冷まし、完全に冷めてから蓋をします。
常温で半年近く持ちますが、万が一、作るときに不純物が入っていればカビやすいので、念の為にできるだけ早く使い切りましょう。
AUTHOR
アカリ・リッピ―
アーユルヴェーダ著者・セラピスト。本場スリランカでアーユルヴェーダ医師のもと修行。帰国後、1万人の体質改善コンサルをしながら講座で実践的なアーユルヴェーダを指導。著書「アーユルヴェーダが教える、せかいいち心地よいこころとからだの磨き方」 (三笠書房)5刷。都内でサロン経営。大手企業の営業マンだった時の経験を活かし、「忙しい人でも無理なくできる」現代的なアーユルヴェーダを発信。
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