前編|発達障がいを描く漫画『ぴーちゃんは人間じゃない?』作者「苦しい時に命を繋ぎとめたもの」とは

 前編|発達障がいを描く漫画『ぴーちゃんは人間じゃない?』作者「苦しい時に命を繋ぎとめたもの」とは
石上友梨
石上友梨
2021-05-19
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障害自体には個性があるけど、個人のアイデンティティではない

ーー「発達障がい」をまだまだ理解していない人も多いと思います。どんなことを伝えたいですか?

「いろいろな物事に対して言えると思うのですが、やっぱり知る事がすごく大事だと思います。差別や偏見も知った上で差別してるのか、知らないままで差別してるかは全然違うことですよね。知らないだけなのに「嫌い」と思い込んで対話ができないのはすごくもったいないなと思います。発達障がいについても、まず知ってほしいという気持ちが漫画を描く原動力にもなっています。周りに当事者の方がいないのなら、ネットの文章でもいいし私の漫画でもいいから『こういう人がいるんだ』ということを知ることだけでも、意味のあることだと思います。」

ーー同じ行動をすることでも、知った上で行動を選択していることと、何も知らないで行動することは全く違いますね。

「はい、そのうえで決めつけることはしないでほしいです。発達障がいの種類や程度は、人によって特性も異なります。セクシュアリティも同じですが、グラデーションだと思います。 ADHD はこう、 ASD はこうという風に決めつけたりその人を障害という視点で捉えるのではなく、その人自身と向き合うようにすると、お互いハッピーになれるのではないでしょうか。」

ーーコミックエッセイにも特性と個性の話が出ていたと思います。「特性を個性として活かしましょう」と言われることがあると思うのですが「発達障がいは個性だ」という考えには違和感がありますか?

「個性と言われて嬉しいと感じる人がいることも事実だし、100%個性という言葉が悪いわけではないのですが、個性はポジティブなニュアンスが強いので、障害を抱えて苦しい思いをしてきた当事者にとっては、障害を前向きに生かそうと簡単に思えるようなものではなかったりします。障害自体にも色々な程度や症状があって、人によってレベルも困り具合もそれぞれですし、グラデーションだという意味では個性かもしれないけど、障害自体が個人のアイデンティティにはならないと私自身は捉えています。障害はその人の看板にはならないから、周囲の人が「障害は個性」と簡単に言ってしまうのは、当事者を傷つけることがあることも知ってほしいです。」

イーストプレス
『ぴーちゃんは人間じゃない? ADHDでうつのわたし、働きづらいけどなんとかやってます』(イースト・プレス)

インタビュー後編に続く

プロフィール/ぴーちゃん

ぴーちゃん
イラストレーターぴーちゃん

1997年生まれ。元美大生。普段はイラストレーターとして活動。WEBメディア「パレットーク」で働くインターン。 同メディアの記事「うちのインターン生はADHDです。」が話題を呼び、ADHDとうつを抱えてサバイブしてきた日々を描くコミックエッセイ『ぴーちゃんは人間じゃない?ADHDでうつのわたし、働きづらいけどなんとかやってます』 (イースト・プレス)が好評発売中。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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