眠らずに頑張るのは逆効果?アスリートの習慣から学ぶ、パフォーマンスを高める 「睡眠」とは

 眠らずに頑張るのは逆効果?アスリートの習慣から学ぶ、パフォーマンスを高める 「睡眠」とは
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アメリカのスタンフォード大学が行った研究によると、バスケット部員に毎日10時間睡眠を義務づけたところ、フリースローの成功率が9%アップし、逆に怪我をする選手の数は減るという結果になりました。睡眠とパフォーマンス向上は密接な関係にあることが示されたことで、アスリートには十分な睡眠時間の確保が推奨され、メジャーリーグやNBAではスタジアムやクラブハウス内にスリーピングルームや昼寝スポットがつくられるようになったのです。これまで日本のスポーツ界では選手のパフォーマンスが上がらない原因を、技術や体力、戦術の不足を原因と考える傾向があり、睡眠時間を削ってでも練習や自主トレをするといった傾向がありました。しかしそれは大きな誤解だったのです。スポーツでも、仕事でも、勉強でも「眠らずに頑張るよりしっかり眠る」「睡眠のチカラを借りて能率UP」が新しい常識となったのです。

ボストンレッドソックス 睡眠
米メジャーリーグのボストン・レッドソックスでは2013年からクラブハウス内にスリーピングルームを設置。photo by Getty Images

上達/成長を促す睡眠のチカラとパフォーマンス

睡眠が、なぜ上達や成長を促進するのでしょうか?そしてパフォーマンスの向上につながるのでしょうか?

トレーニングや練習では、筋繊維が破壊されます。「強くなる」とは筋肉の面からみると、「負荷をかけることで筋繊維が壊れ、その回復の過程で超回復という現象が起き、前の状態よりも筋肉は強く、太く再生される」という原理になります。この際、成長ホルモンがタンパク質の合成に関わるのですが、この分泌は睡眠中に主に行われ、午後10時から午前2時くらいに最大のピークを迎えるのです。

また運動スキルにおいても、睡眠不足が続くと神経細胞(ニューロン)の発火が遅くなると言われていて情報伝達に支障が出るため、一瞬の反応や俊敏なスピードが要求されるスポーツでは睡眠不足がもろにパフォーマンス低下につながってしまうのです。

せっかく練習で培った筋力もテクニックも知力も、睡眠不足が邪魔をしてしまう結果となるのがあまりに勿体ないですよね。

「精神的スランプからはなかなか抜け出すことはできない。根本的な原因は食事や睡眠など基本的なところにあるのに、それ以外のところに原因を探そうとする」。これは日本プロ野球史上唯一の3度の三冠王に輝き、日本の野球史にその名を刻んだ落合博満さんの名言であり、非常に示唆に富む言葉です。

次回は、誰でも真似できるトップアスリートの睡眠術についてお話しします。

教えてくれたのは…二重作拓也さん

挌闘技ドクター/スポーツドクター 富家病院リハビリテーション科医師  格闘技医学会代表 スポーツ安全指導推進機構代表 1973年生まれ、福岡県北九州市出身。福岡県立東筑高校、高知医科大学医学部卒業。8歳より松濤館空手を始め、高校で実戦空手養秀会2段位を取得、USAオープントーナメント高校生代表となる。研修医時代に極真空手城南大会優勝、福島県大会優勝、全日本ウェイト制大会出場。リングドクター、チームドクターの経験とスポーツ医学の臨床経験から「格闘技医学」を提唱。専門誌『Fight&Life』では10年にわたり連載を担当、「強さの根拠」を共有する「ファイトロジーツアー」は世界各国で開催されている。『Dr.Fの挌闘技医学』『Dr.F 格闘技の運動学』(DVDシリーズ)『Fightology(英語版/スペイン語版)』『プリンスの言葉』『Words Of Prince(英語版)』など著作多数。

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Text by Ai Kitabayashi



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