眠らずに頑張るのは逆効果?アスリートの習慣から学ぶ、パフォーマンスを高める 「睡眠」とは

 眠らずに頑張るのは逆効果?アスリートの習慣から学ぶ、パフォーマンスを高める 「睡眠」とは
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頑張って準備したのに本番はイマイチ、たくさん練習してもヨガポーズが上達しない……。そんなあなたの睡眠時間は足りていますか?現役スポーツドクターである二重作拓也先生がパフォーマンスと睡眠の関係を紐解きます。睡眠を見直して今より「できる自分」を手に入れましょう!

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トップアスリートは10時間睡眠が当たり前

睡眠を知る上でまずは、人間の身体の多くの機能は「相反する作用で恒常性を維持している」という事実を理解しておきましょう。例えば、我々の骨は一定のように見えますが、骨をつくる造骨細胞(ぞうこつさいぼう)と骨をこわす破骨細胞(はこつさいぼう)が、「つくっては壊し」をくり返しています。内臓の働きや体温、代謝などをコントロールする自律神経系と言われるシステムは、交感神経系と副交感神経系、2つの系統が作用しあってバランスを取っています。

交感神経系が優位に働くと、身体はファイトorフライト(闘うか逃げるか)反応を見せます。これは大昔、野生動物などの外敵から身を守る必要があったため、危険を察知すると本能的に「闘う」または「逃げる」システムが体に備わっているのです。「戦闘モード、逃走モード」になると交感神経系が優位となり、身体も変化します。より多くの視覚情報を得るために瞳孔は大きく開き、筋肉に血液を送るため心拍数や血圧が上がり、消化吸収のために腹部の消化器や内臓に溜まっていた血液が筋肉に移動します。戦うためには酸素も大量に必要ですから気管支は拡張してガス交換も活発になります。「今から戦うぞ!」っていう時にトイレに行きたくなっては困りますから、消化管や泌尿器系の機能は抑制されるのです。

副交感神経が優位になるとこれらと逆のことが起こり、心拍数や血圧は下がり、抑制されていた消化器系や泌尿器系が活発に働き、摂取した栄養を分解、吸収、蓄積する作業に入ります。「食後はゆっくり過ごした方がいい」のは、副交感神経系を優位にするためなのです。

起きて活動している時間が長い人は交感神経系が優位な状態がずっと続き、基本的には戦闘モードで居続けることになります。そうするとアスリートであればパフォーマンスが、仕事効率が著しくダウンしてしまうのです。「睡眠を我慢してまでこんなに頑張ったのになぜ?」と思うかもしれませんが、本番で十分にパフォーマンスを発揮するには「睡眠」が不可欠であり、睡眠時間を削って練習や仕事をするのは身体的には「絶え間なく喧嘩をしている」「延々と逃げ続けている」状態に近づく行為なのです。

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Text by Ai Kitabayashi



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