自然な曲線を大切にしよう|ためになる解剖学的知識
座位のポーズ|スカーサナ(安楽座)
ターダーサナの原理は座位での瞑想にも応用できる。私は長年、楽に座れるように自らも実践してきたし、生徒にも指導してきた。まず、胴体と大腿骨(太腿)の間の角度を120度にする必要がある。そのためには、クッションか折りたたんだブランケットの角に腰を下ろそう。こうすると、太腿を骨盤の下の縁より下げやすくなる。この角度が120度より狭くなると、骨盤が後傾しやすく、脊柱の配列が乱れる。すると腰椎が屈曲して、姿勢は不安定になって楽に座れなくなる。
スカーサナのバリエーション(安楽座)
ここで次のことを試してみよう。何重かにたたんだブランケットの角に座って、太腿が下向きに傾斜するようにする。太腿ではなく、骨盤をブランケットにのせよう。太腿もブランケットにのせてしまうと、何も使わずに床に座る場合との違いがほとんどなくなる。
次に、楽に足を組める姿勢を見つける。坐骨よりも少し前に座ってみよう。こうすると大腰筋が働き始める。そして、大腰筋が収縮することにより、腰椎が前方に引っ張られて自然な曲線を描くようになる。大腰筋は、腸骨筋と重なって大腿骨内側の小転子に停止している。歩行時には、大腰筋が太腿を前に出す動きを始める。言い換えれば、大腰筋が歩行時の股関節屈曲を引き起こしている。大腰筋は日常生活で過度に使われる筋肉であり、持久力がきわめて高い。何時間も歩くことができるのはそのおかげだ。座位で瞑想するときには、何よりもこの筋肉を直立させておくことが重要だ。
スカーサナのバリエーション(安楽座)
一方、坐骨より後ろに座ると体が前かがみになって、重力に逆らって体を支えるために傍脊柱筋群(脊柱の両側に縦に伸びている筋群)が一瞬にして過剰に働くことを求められて、筋肉疲労を起こす。傍脊柱筋群はブジャンガーサナ(コブラのポーズ)などの伸展(後屈)のほうが、効率よく働くことができる筋肉だ。次に、恥骨に注意を向けて、恥骨を床のほうに回転させよう。大腰筋はここでも主動筋となっている。この動きは、たくし込むのとは正反対の動きである。恥骨を下向きに回転させると、一瞬で骨盤がニュートラルな位置にくるため、脊柱が自然な曲線を描くようになる。恥骨を両脚の間に向けて回転させるのであって、脊柱や骨盤を前に押してはならない。くれぐれもこの違いに注意してほしい。脊柱や骨盤を前に押し出すと、大腰筋ではなくて背筋群が働くようになる。
ヴィーラーサナのバリエーション(英雄のポーズ)
最後に、両手の小指を太腿に当てて手のひらを腹部のほうに向け、腹部の近くに引き寄せる。肘を体側から少し離す。肩を下げる。恥骨と胸骨を遠ざけるように動かす。脚を組むのが辛い場合は、ヴィーラーサナ(英雄のポーズ)でブロックの上に座る。両脚の間隔は自然に任せる。必ずしも両脚を合わせなくてもよい。太腿と恥骨がどんな三角形をつくっているか観察しよう。そこが体を支える土台となる。恥骨を下向きに回転させることによって、脊柱が内側上方に引かれて、自然な曲線を描くようになる。
瞑想
瞑想をするには、あごをほんの少し下げて、脳内の1点をイメージしてそこに意識を向ける。目は閉じても半眼にして50cm程度先の床を見つめてもよい。穏やかな呼吸を2~3回しながら、呼吸に心の焦点と体の感覚を合わせる。このように姿勢を整えることによって瞑想状態が生み出されるのだろうか、それとも瞑想状態がこのような姿勢を生み出すのだろうか。私は両方が同時に起きるのだと考えている。
骨盤は上に伸びていく脊柱を支える植木鉢のようなものだ。骨盤のバランスがとれていると、脊柱は自然な曲線を描きながらのびのびと伸展できる。この瞑想の姿勢は、身体的にも精神的にも感情の面でも自分自身に戻ることを可能にする姿勢だと思ってほしい。真のバランスとは、自然の英知の現れである。立っているときも座っているときも、常に自然な曲線を大切にして、脊柱に自然の英知が現れるようにしよう。
指導/ジュディス・ハンソン・ラサター(博士号取得者、理学療法士)
1971年以来ヨガを指導している。『Restore and Rebalance』『Yogabody : Anatomy, Kinesiology,and Asana(邦訳:ヨガボディ ヨガと体の教科書)』など9点の著作がある。詳しくはウェブサイトへ。
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