"筋肉に焦点をあてた指示"がもたらすダメージとは|指示の生体力学的分析
データが意味すること
今回の結果は、これまで発表されてきた諸研究の結果とともに、橋のポーズをしている間に動きを指示されたほうが、筋肉に関する指示を受けるよりもバランスのとれた筋活動につながる可能性が高いことを示している。筋肉のバランスが悪いとけがにつながりやすいため、これは重要である。ヨガのポーズを行っている間にバランスの良い動きを心掛けることによって、けがのリスクを低減できる。ハムストリングの負荷を高めようとして「臀筋をゆるめましょう」と指示すると、実際は背面の負荷が高まることがわかった。特に背面にけがをしている人にこの指示を出すと、より悪化させる可能性がある。さらに、一定の筋肉を「働かせたり」、「ゆるめたり」するにはどうしたらいいか考えないようになると、神経系に細かい指示を出す必要がなくなり、心が落ち着いて呼吸の流れに集中できるようになって、練習を真の動く瞑想にすることができる。
私は生体力学研究所で得られた研究結果を踏まえて、橋のポーズを練習するときと指導するときに、自分に向かって次のように声をかけている。
●仰向けになり、かかとを床に下ろし、膝を曲げて足首の真上に揃える。
●足裏で床を押して、腰を真上に上げる。
●腕は、背中の下で手をつなぐか、背中の下でストラップをつかむか、ロボットの腕のように肘を曲げて上腕をマットに下ろしたまま指先を上に向けるかのいずれかを選択する。
●膝を前に押し出しながら、位置を変えずにかかとをお尻のほうに引く(等尺性に引くので、実際はかかとを動かさない)。
指示の生体力学的分析
私は自論を実例で示すために、研究パートナーのジェーナ・モンゴメリー(PhD)が橋のポーズで次の指示を受けたときに、どんな反応が起きるか観察することにした。
「臀筋を働かせてください」 (内側の指示/筋肉に関する指示)
「臀筋をゆるめてください」 (同じく、内側の指示/筋肉に関する指示)
「膝を押し出して、位置を変えずにかかとを後方に引いてください」 (外側の指示/動作の指示)
指導
ロビン・カポビアンコ博士
20年以上にわたって、動きの神経制御に関する科学的研究に、ヨガの研究、実践、指導の経験を取り入れている。
ジェーナ・モンゴメリー博士
外力や装置、特に補装具や支援技術が人の動きに及ぼす影響を探る研究を行っている。
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