仕事や学校のことを考えてしまって「眠れない…」原因と対処法は?臨床心理士が解説

 仕事や学校のことを考えてしまって「眠れない…」原因と対処法は?臨床心理士が解説
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佐藤セイ
佐藤セイ
2025-04-14

「仕事のことを考えると眠れない」「学校のことが頭から離れず寝つけない」と悩んでいませんか?今回は仕事や学校のことを考えてしまって眠れない原因と対処法をご紹介します。

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仕事や学校のことを考えてしまうと眠れなくなるのはなぜ?

仕事や学校のことを考えてしまうと眠れなくなる原因についてご説明します。

仕事や学校でのストレスが大きい

まず考えられるのが「仕事や学校でのストレスが大きい」ことです。

■仕事でのストレス

厚生労働省が令和5年に実施した調査では、社会人の82.7%が仕事での悩みやストレスを抱えていることが示されています。ストレスの中身としては、

・仕事の失敗、責任の発生

・仕事の量

・対人関係(セクハラ・パワハラを含む)

などが挙げられています。(※1)

■学校でのストレス

中学生・高校生・大学生を対象としたいくつかの調査を見ると、学校で生じる代表的なストレスとして

・学業(授業の課題や発表)

・人間関係(友達や恋人、家族との関係)

・就職や進路

・サークルや部活動

などが挙げられていました。(※2、3)

仕事や学校で強いストレスがかかると、本来リラックスするはずの夜にさえ、心身の緊張が緩まず、なかなか眠れない原因になってしまいます。

スマートフォンを見すぎてしまう

仕事や学校に関連する連絡が気になったり、仕事や学校のことを考えるのを避けようとしたりして、ついつい寝る前にスマートフォンを触ってしまう人がいます。

しかし、寝る直前にスマートフォンから発せられるブルーライトを浴びてしまうと、私たちを睡眠へと導くホルモン「メラトニン」の分泌が抑制されてしまい、なかなか眠れなくなってしまいます。

こころの病気になっている

仕事や学校のことが心身に大きな負担となり、うつ病をはじめとするこころの病気にかかり、その症状として不眠になっているケースもあります。

不眠が続くと、

→通常よりもネガティブな気持ちが起こりやすくなる(※4)

→仕事や学校で嫌な気持ちになりやすくなる

→仕事や学校での体験をネガティブにとらえ、落ち込んでしまう

→こころの病気が悪化し、症状としての不眠も悪化する

……と悪循環に陥ってしまいます。

眠れない
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仕事や学校のことを考えて眠れなくなったときの対処法

ここからは仕事や学校のことを考えて眠れなくなったときの3つの対処法を解説します。

呼吸法で心身をリラックスモードに

「呼吸法」とは、意識的に呼吸をコントロールし、心身をリラックスさせる技法を指します。

寝る前に呼吸法を実施し、心と身体の緊張を緩めると、眠りに入りやすくなります。

ここでは「4・7・8呼吸法」と呼ばれる方法をご紹介します。

1.4秒かけて鼻で息を吸い、お腹のふくらみを感じる

2.7秒間息を止める

3.8秒かけて口から息を吐き、お腹がへこんでいくのを感じる

4.1~3までの手順を繰り返す

仕事や学校のことで頭がいっぱいでも、少しずつ心が落ち着いていくのが感じられるはずです。

不安や心配を書き出すジャーナリングを試そう

「ジャーナリング」とは、自分の頭に浮かんでいることを次々に紙に書き出す方法です。

ジャーナリングの手順は以下の通りです。

1.環境を整える(リラックスできる場所、お気に入りのノートとペンの準備)

2.時間を決め、頭に思い浮かぶことをひたすら書き出す

3.決めた時間がきたら手を止め、ノートを読み返す

ジャーナリングに取り組むと、身体的な健康を高めるほか、

・ポジティブな思考の増加

・ネガティブな思考の減少

・意欲の向上

など精神面にも良い影響を与えることが報告されています。(※5)

専門家に相談する

仕事や学校のことを考えてしまって眠れない日々が続く場合、医師やカウンセラーなどの専門家への相談を検討してみましょう。

うつ病などのこころの病気が原因である場合、

薬物療法:薬によって不安な気持ちを和らげたり、眠りやすくしたりする

心理療法:ネガティブな考え方を緩和したり睡眠リズムを整えたりする

が効果を発揮することがあります。

さいごに

睡眠は心と身体の健康に非常に大切な役割を持ちます。

まずは「呼吸法」や「ジャーナリング」を試し、質の良い睡眠を確保しましょう。

それでも、仕事や学校のことを考えてしまって眠れない状態が長く続く場合には、ぜひ医療機関を受診してみてください。

参考文献

※1 厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」

※2 真船浩介・鈴木綾子・大塚泰正(2006)「大学生におけるストレッサーの特徴: 認知的評定、及び心理的ストレス反応との関連の検討」 学校メンタルヘルス 9, pp.57-63.

※3 厚生労働省「平成26年度全国家庭児童調査結果の概要」

※4 国立精神・神経医療研究センター(2013)「国立精神・神経医療研究センター・三島和夫部長らの研究グループが、睡眠不足で不安・抑うつが強まる神経基盤を解明」

※5 谷本拓郎(2023)「ジャーナリング(書く瞑想)の心理的効果に関する一考察-女子大学生への実践から得られる示唆-」 京都光華女子大学京都光華女子大学短期大学部研究紀要 60, pp.65-79.

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