インドの定番料理、滋養豊富な豆のシチュー「ダル」について学ぼう!
スパイスの効いたさらさらした豆のシチュー「ダル」は、イタリアでのパスタと同じぐらいインドではポピュラーだ。なぜこの滋養豊富な「ダル」が、昔からヨギたちの癒しの食べ物となっているのかを、マ サ チューセッツ州ノーサンプトン在住のライターヴァレリー・レイスが自身の経験を交えて教えてくれた。
インドやその他の地域で広く愛されている「ダル」
20代初めに住んでいたアメリカのアシュラムでは、いつも独特の香りが漂っていた。すぐに私は、その香りを成すものがお香、神聖なもの、ダルの香りだと突き止めた。ダルはスパイスの効いたさらさらした豆のシチューで、インドやその他の地域で広く愛されている。独身修行僧のいるこの厳格なアシュラムの料理人たちは、にんにくと玉ねぎの使用を禁じていたが、彼らはいくつかの香辛料がアグニ(消化の火)を高めることを知っていたので、ダルは香ばしい風味に満ちていた。挽き割りの豆をつぶしてクリーム状にし、ターメリック、クミン、コリアンダー、ショウガを混ぜて、熱々のバスマティライス(インドでよく食べられる長粒種の米)にかけて食べるのだ。午後じゅうヨガとボランティアワークにいそしんだ後、香り豊かなダルにスプーンを入れる瞬間は格別だった。
栄養豊富で、なおかつ簡単な調理でたんぱく質が摂取できる
最初にヨガに出会った時のように、この食べ物も栄養と満足とちょっとしたスリルを与えてくれた。何かが自分にとってよいものだとわかった時のあの感覚、いや、スリルよりもっとわくわくする感じだ。数年後、ダルに豊かさや癒しを感じるのは、単に自分がヨガでハイ(あるいは砂糖やセックス欠乏症)になっていたせいではないと気づいた。サンスクリット語で「分けること」を意味する「ダーラ」が語源のダルは、今も昔も変わらずヨガ修行者たちに愛されている。サトヴィック、つまり適度な量の純粋な食べ物とされているためだ。「ヨガ哲学では無節制を避け、適度な食事・ミターハーラを勧めているの」と語るカンタ・シェルクは、シカゴ拠点の食品科学者で、代々ヨガを修行する家庭に育った。ミターハーラは、サンスクリット語で書かれたハタヨガの古代教典、『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』で奨励されているヨガの教えの一つである。低価格で栄養価の高い豆は、この教えにぴったり合う。「ダルは、体に栄養を与えながら五感も喜ばせてくれるの」とシェルクは言う。つまり、ヨギたちのように体と生活のバランスを整えたい人には理想的な食べ物なのだ。ヨガと同様、ダルもインド中にある。廉価でベジタリアンフード、なおかつ簡単な調理でたんぱく質が摂取できるので、貧富や老若男女を問わず食されている。「ダルはすべてのインド料理のカギだから、必ずいつもあるのよ」とアヌピ・シングラは言う。彼女は新刊『Indian for Everyone』を含む3冊のインド料理本を書いている。
インドでは、香辛料の入っていないスープ状のムングダルを離乳食としている。消化しやすく栄養豊富だからだ。また古代インドの伝統的療法でヨガと関わりの深いアーユルヴェーダでは、トリドーシャの食べ物とされている。つまりすべてのドーシャや、健康を左右する様々な心身の状態に適合するということだ。インド人の親を持つ人々は、子供の頃は腹痛や風邪になると、まずはダルを与えられた、と話してくれるだろう。チキンスープのインド版なんだ、とインドの人々は言う。また、インドや欧米のヨギたちは、ダルをアレンジしたキチャリと呼ばれる、スパイス入りのレンズ豆のシチューと米とギー(精製したバター)を合わせたものを、朝食やファスティング中の唯一の食事としてとることが多い。
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