コンサート鑑賞者の心臓や生理機能はシンクロする!?【音楽が人の心を結びつける現象を科学的に解説】
音楽はなぜ存在するのか?一部の研究者は、音楽が人類の文化に広く浸透しているのは、音楽が人々を結びつけるからだと考えている。
学術誌『Scientific Reports』に発表された新しい研究によると、心拍数、呼吸、皮膚の電気伝導率などの身体的反応が、クラシックコンサートの聴衆の間でシンクロしていることがわかった。研究を率いたベルン大学の心理学者、ウルフギャング・ツァッハー氏は、「美的体験や、芸術や音楽への反応のような、非常に抽象的なことについて話す際、そこには常に身体との関わりがある。」と話す。この理論は「身体化された認知」として知られており、心は身体とつながっているだけでなく、身体が心に影響を与えるという考え方である。これは一般の人々でも直感的に理解できることではあるが、科学界では議論を生んでいる。その研究のため、ツァッハー氏らは3つのクラシック・コンサートを132人の聴衆を調査した。
身体的機能のシンクロ
研究者らは、オーバーヘッドカメラとウェアラブルセンサーを使って聴衆をモニターした。聴衆は開演前に自分の性格についてのアンケートに回答し、終演後にはコンサートが楽しかったかどうかやコンサート後の気分について回答した。
総評として、いくつかの指標で統計的に顕著なシンクロが見つかった。同じ音楽の一節中に、聴衆の心臓の鼓動が速くなったり遅くなったりし、「皮膚コンダクタンス 」のレベルにおいても同じ様子がみられた。皮膚コンダクタンスは、逃走・闘争反応と密接に関連している。この値が高い場合は興奮状態を示し、皮膚に鳥肌が立つことに結びつき、値が低いときはリラックス状態となる。研究者らは、「すべてのコンサートの観客が薄暗い照明の中で着席しており、パンデミックのために分散して着席していたことから、これは注目に値すると思われる」と記している。聴衆の呼吸の速度は揃ったものの、吸気や呼気が一致したわけではなかった。ツァッハーいわく、この発見は「身体化された認知」理論を支持する証拠であり、公共のパレードや軍隊の行進が参加者間の結束を高める助けをする背景理由ともなる。
コンサートが人々を結びつける
学術誌『Music & Science』に掲載された研究では、デンマーク弦楽四重奏団のコンサートにおける聴衆の体験を調査した。研究参加者のうち91人は観客席に座り、32人はライブストリーミングでの配信を視聴した。各楽曲終了後、演奏者や聴衆とのつながりを感じたかどうか、感動の度合いや、感情の動かされた強さについて尋ねるアンケートを用いて、聴衆の体験の調査を行った。客席にいた聴衆は、ライブストリームを視聴していた聴衆よりも、他の聴衆とのつながりをより強く感じていることがわかった。どちらのグループも、演奏しているミュージシャンとは同様につながりを感じていた。
動かないでいることも協力的な反応の一つ
この調査では、クラシック・コンサートの聴衆は音楽や 周囲の環境に適応していることが示されている。これは、動きの多いグループの一員であるときと同じくらいの団結力を生み出しているのだ。この結果は、音楽が暗示するように動くこと、つまり、ジャンルに適応し、音楽的に協力することこそが、一体感を生み出すことを示唆している。
出典:
https://phys.org/news/2023-11-miraculous-effect-music-concerts-people.html
AUTHOR
HIDEMI
ヨガ講師 /ヨガ翻訳・通訳者 色、音、言葉が好き。同志社大学国文学科在学中は日本語学を学び、中学生の頃から独自に英語の学びを深める。サロンモデルをしながら、ジュエリーブランド、コスメブランド勤務を経て、2015年よりヨガの指導を始める。外国人講師のWSやTTの通訳、テキスト翻訳等、ヨガ関係の通訳/翻訳業も行う。
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