検索するほど不安に…。不安な時に思い出したい、焦って行動するより大事なこと|心の専門家が解説

 検索するほど不安に…。不安な時に思い出したい、焦って行動するより大事なこと|心の専門家が解説
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石上友梨
石上友梨
2024-01-02

みなさんは、何か気になることがあった時にネット検索をすることが多いと思います。そんな時に検索すればするほど解決もせずに不安になった経験はありませんか?検索するたびに様々な情報が出てきて、中には矛盾した情報もあってまた検索する。その繰り返しで結局、解決しないまま不安な気持ちだけが強くなる…そんなネット検索について悩みがある人は今回の記事を参考にしてくださいね。

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情報がありすぎて眠れなくなってしまったAさんの事例

Aさんはインドでトランジットをして別の国に行く予定がありました。しかし、インドに一度入国する必要があるのか、それとも入国せずにトランジットできるのか分かりませんでした。SNSで検索すると、入国せずに大丈夫だったケース、入国したケースなど様々な情報が出てきました。いろんな情報がありすぎて検索するればするほど不安になり、前日は眠れなくなってしまいました。

「不安な気持ち」とは

不安は私たちの大切な感情の一つです。主に未来の出来事に対して何か気になることがある時、それがうまくいくか分からない時など、不安な気持ちは大きくなります。不安な気持ちは、私たちに「準備した方がいいよ」「気をつけて」などというサインを送ってくれます。一方で、不安な時は、心臓がドキドキしたり、胸の奥がぎゅっとなったり、呼吸が苦しくなったり、とにかく不快な身体反応を伴います。そのため、私たちは不安な状態を止めようと何かしら「行動」を起こしたくなります。例えば、ネット検索をする、不安なことを回避する、確かめてみるなどです。しかし、不安にかられた行動はうまく行かないことが多いです。不安な気持ちによって、悲観的な予想をしてしまい、余計な行動をとったり、焦って失敗してしまったりします。

不安な気持ちとの付き合い方

不安な気持ちが強い時は、「今、準備できること、解決できること」と「今、準備できないこと、解決できないこと」に分けましょう。そして、今準備や解決ができる問題はそのまま進めます。それが準備できたり解決できたりすると、当然不安は小さくなります。問題は、後者の不安です。後者は「付き合っていくしかない不安」になります。後者の不安に対しては、何をどう行動しても、不安は消えません。例えば、先ほどの事例では「インドに入って無事にトランジットできるのか」これはインドに行かないと分かりません。だからインドに着くまではその不安を感じ続けるしかないのです。

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様々な情報の中で何を信頼するのか

ネット検索をすると様々な情報が出てきます。その情報の中で、どの情報を信頼するか、どの情報の影響を受けるのか、考えてみましょう。矛盾した情報が出てきた時に、全てを同じレベルで信じてしまうと当然混乱します。SNSなど匿名の投稿の場合、その人がどのような立場でどのような経験を持って発信しているのか曖昧な場合が多いです。そのため、その情報が自分が欲しいものと一致しているのかは分かりません。例えば、インドの事例だと、実際にインドに入国した人の投稿でも、時期が違えば制度が変わっている可能性がありますし、航空会社の違いや時間帯、荷物の預け入れ状況など、状況が全て一致しているかまで分かりません。この場合、信用できるのは、インド大使館などのホームページに記載あるトランジットの条件くらいでしょうか。全ての情報を同レベルに見ないで、どの情報に注目するのか、意識してみましょう。

不安とうまく付き合う

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今解決できることだけを終わらせ、あとは解決できる時が来るのを待つしかありません。不安なことばかりを考え続けていると、何かを心から楽しんだり、集中して取り組んだりできなくなることがあります。不安な気持ちを一旦受け入れ、気持ちを切り替えていくことも大切です。別のことに注意を向けたり、あえて楽しいことを考えたり、目の前の作業を淡々とこなしたり、不安なことを考える代わりにできることを取り組みましょう。また、身体に働きかけて気持ちを落ち着かせるために、呼吸法やヨガを取り入れることもおすすめです。そして、不安に駆られた行動を取らないよう、自分の不安な気持ちをしっかりとモニタリング(観察)しておくことも重要です。不安に駆られたまま行動するとしても、「これをやることで本当に解決するのかな?」「後悔しないかな?」と一歩立ち止まって考えてみるのも重要です。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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