「つらいニュースを見ると苦しくなる…」臨床心理士が教える【共感疲労】を軽くする方法

 「つらいニュースを見ると苦しくなる…」臨床心理士が教える【共感疲労】を軽くする方法
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石上友梨
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2023-11-13

悲しいニュースを見て、苦しくなっていませんか?そんなあなたは共感疲労をしているかもしれません。昨今は悲しいニュースが多く、テレビだけではなく、SNSを眺めている時も衝撃的なニュースがタイムラインに流れ込んできます。今回は共感疲労についてご紹介します。

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共感疲労とは?

共感疲労は、他人の苦しみや悲しみに対する過度の共感によって引き起こされる心が疲労した状態のことです。つらい状況にいる人の苦しみや悲しみに共感するあまり、自分自身の心まで疲れてしまいます。具体的な症状としては、無気力や気分の低下、イライラ等が考えられます。

現在は、インターネットを通じて世界中の情報をリアルタイムで知ることができるため、様々な悲しいニュースに触れる機会が多くなります。また、SNSなど個人が投稿した情報は、適切な制限がかかっていない場合があります。そのため、個人目線でよりリアルな映像となり、テレビニュース等の客観的な視点でモザイクなど制限がかかっている情報と比べて心の負担感やインパクトが強くなります。そして再現なく情報が流れてくるため、情報の過剰な摂取により、心理的な負担が増大し、心のバランスを乱す可能性があります。共感疲労は、現代社会において広く見られる心理的な問題の一つと言えるでしょう。

共感疲労をしやすい人

感受性が強い人や、他者に気を使い、他者を優先しがちな人は共感疲労しやすいと考えられます。感受性が強いと、他者の気持ちや言動に敏感になり、他の人よりも多くのことを感じ取り、それを自分のことのように感じる場合があります。そして、自分よりも他者を優先するため、自分のセルフケアは二の次で他者の心配ばかりしてしまうでしょう。共感性が高いことは、もちろん良い面もたくさんあります。しかし、それによって自分自身が苦しんでしまうことが多いのなら、上手な付き合い方を模索していきましょう。

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共感疲労を軽減するための対策

共感疲労に苦しむ人々は、しばしば苦しさでいっぱいになり、自分自身のストレスケアが疎かになりがちです。また、共感疲労によって、仕事や日常生活においても集中力や能率が低下し、人間関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。心の負担やストレスが溜まり、心の病気のリスクが高まる前に適切なストレスケアをしましょう。共感疲労を軽減するためには、以下のような対策が有効です。

情報の制限

悲しいニュースや過度に刺激的なコンテンツを見る機会を減らすことで、心の負担を軽減することができます。ニュースやSNSの使用時間や1日に見る回数を制限する、SNSでセンセーショナルな映像は制限をかけるなど、精神的な余裕を確保しましょう。

セルフケアの実践

日常生活において、適度な運動や良質で十分な睡眠、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。また、趣味やストレス解消法に時間を割くことで、心をリフレッシュさせることができます。共感疲労を感じている時ほど、いつもより早く寝る、体に良い物を食べる、休息時間を増やすなど、基本的な生活から見直してみましょう。

境界線を意識する

自他の境界線としっかりと意識することも重要です。自分の問題と他者の問題は分けて考え、その中で自分が他者に対して出来ることを考えてみましょう。あなたが他者の問題に対して全てを引き受けることはなく、まずは自分自身の心の健康を最優先に考えることが大切です。自分自身の健康があってこそ、他者をサポートすることができることを忘れないようにしましょう。

サポートを得る

身近な人につらい気持ちを打ち明けてみましょう。自分一人で抱え込まず、周囲に相談することで軽減する場合があります。身近な人に話しづらい場合は、心理カウンセリングなど専門家に相談してみることもオススメです。

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共感疲労は深刻な問題ですが、適切な対処法やケアを実践することで、心のバランスを保つことができます。自己と他者への思いやりを大切にしながら、心の健康を守るために必要な対策を積極的に取り入れましょう。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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