女優、ヨガ講師、ドッグトレーナー。滝裕可里はなぜ"三足のわらじ" で活動を続けるのか

 女優、ヨガ講師、ドッグトレーナー。滝裕可里はなぜ"三足のわらじ" で活動を続けるのか
Photo by Photo by Naoki Kanuka(2id)

13歳でスカウトされ、テレビや映画など多くの作品に出演してきた女優の滝裕可里さん。今年、前事務所を退所し独立。現在は、大好きな芝居に加え、発信者としてヨガインストラクター、ドッグトレーナーとしてマルチに活躍の場を広げています。芸歴20年以上の彼女が、三足のわらじで活動を続ける理由について伺ってきました。

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– 13歳から芸能界でお仕事をされているんですよね。

滝裕可里さん(以下・裕可里さん): はい。まだ地元の大阪にいた時の話なんですが、中学生の頃に、雑誌の「全国オーディションやります」という広告を見かけたのがきっかけです。グランプリ2名は、ニューヨークに行けるって書いてあって。友達と一緒に「ニューヨーク行きたいよね」という話になり、オーディションを受けました。

– ニューヨークが動機だったんですね! 

裕可里さん: 結局ニューヨークは行けなかったんですけど、特別賞をいただきました。その特典が半年間レッスン生として無料でレッスンを受けることができるというもので、大阪でレッスンをさせてもらっていました。その半年の間に、モデルのお仕事をしたことがあったんです。その時の写真を前事務所の社長さんが見てくださって、「映画のオーディションを受けてみない?」と声をかけていただきました。それがきっかけで、前事務所に所属し、最終的にオーディションにも受かり、中学2年生で東京の寮に入りました。

– 中学2年生で!10代前半で親元を離れるのには抵抗はなかったですか? 

裕可里さん: 全くありませんでした!ホームシックにかかることもありませんでしたね。20人くらい同じ事務所の女の子が住む寮だったんですが、寮母さんがいて朝昼晩のごはんも作ってくれましたし、そこから中学校に通って、帰ってきたらレッスンを受けて…というのを寮生と一緒にやっていたんです。本当に毎日刺激的でした。もちろん多感な時期でしたから喧嘩などもあり、いいことばかりではなかったんですけど、それも含めて寮生活をすごく楽しんでいました。

– すごくポジティブですね。

裕可里さん: はい。実は私の両親が、すごくポジティブなんですよね。人間って基本的にデフォルトがネガティブらしいということを最近、学んだんです。それも分かるんですが…1回何か落ち込むこととか、ショックだなと思うことがあっても、「そんなこと考えても仕方ないしな」と自然と思うんです。幼少期からそういうのが身についていたので、両親の影響が強いと思います。

「自分は誰なのか」空っぽになってしまう自分を変えてくれたもの

– 13歳で映画で主演デビューして、そこから着実に色々な作品に出演されてきましたが、女優の道に、ヨガの道を加えたきっかけは何かあったんですか?

裕可里さん: 女優業だけをしていると、自分が誰か分からなくなってしまったんです。色々なお芝居で色々なキャラクターになるので…例えば、医療系の作品であれば、医療の勉強をします。手術中の映像とかを見たり、医療器具の使い方などについて勉強するんですけど、撮影が終わったらその勉強していた日々がなくなります。そうすると、その都度その都度、空っぽになっちゃう自分がいたんです。

Photo by Naoki Kanuka(2id)
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– 役に入り込んで、なかなか抜けないという感じでしょうか。

裕可里さん: 私は、役作りを客観的に知るのではなくて、自分が実際にその中に入っていって知るというやり方をするタイプ。例えば、以前「べっぴんさん」という朝ドラに出演させて頂いた時に、戦前、戦時中、戦後のことを勉強しました。収録が終わった後にすごく抜け殻みたいになっている自分がいて、一方で戦争を扱ったドラマや映画作品などを見ると、自分がその時代を生きていたんじゃないかなと思うくらい感情移入してしまっている自分に気づきました。そこで「作品がない時の滝裕可里は、満たされていないの?」という疑問が自分の中に生まれたんです。でも、人生って「私の人生」なんですよね。自分が満たされていなければ、自分の生まれてきた意味って何だろうって思って。

– 自分を満足させることができるのは、自分ですもんね。

裕可里さん: それを考えた時に、体を動かそうって思ったんです。幼少期からフィギアスケートやダンスをやっていたので、もともと体を動かすのが好きで。 

– 確かに自分をご機嫌にするために自分の好きなことをするのは、最短距離ですね。

裕可里さん: けれど、それを考えた時はまだドラマの撮影とかも入っていて忙しかった時期だったので、どこかに行くのはスケジュール的に厳しい時期でした。それで、ふと10代の時に買ったであろう1度もやったことのなかったヨガのDVDがあることを思い出して、やってみたんです。

– ヨガのDVDがはじまりだったんですね!

裕可里さん: おそらく10年以上前のものだったと思うのですごく時代を感じるDVDでしたね。けれど、とりあえずその1時間くらいのシークエンスをやってみたら、すごく気持ちよくて!最後にシャバーサナが10分ほど入っていて、そのシャバーサナが「なにこれ、すごい!幸せ!」ってという感覚になったのをすごく覚えています。 

– DVDの練習で「幸せ」となるのもすごいと思います。すごく合っていたんでしょうか。

裕可里さん: 体を動かすのは大好きなので、運動したあとは基本的に「気持ちいい!」と感じるんですが、ヨガは別格でしたね。もともと何か一つのことに集中することが好きなのもあったかもしれません。逆に、一度にいろんなことを考えたり、やったりするのは苦手です。とにかく、シャバーサナを終えた後の、幸福感とか多幸感がすごくありました。

– 確かにヨガは集中すればするほど、恩恵を受けやすいかもしれませんね。

裕可里さん: そこから毎日、そのDVDでヨガを練習するようになりました。出演していた作品が一段落したタイミングで、実際に対面のレッスンを受けに行くようになりました。

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– ヨガをはじめて、何か変化はありましたか?

裕可里さん: 体は180度違います。幼少期にフィギアスケートをしていた頃にはいけなかった領域にいけるようになり、大人になっても関係ないんだと思いました。また、家族からは「健康になったね」と言われるようにもなりました。それは私も感じていて…若い頃はもっと貧弱だったんです。風邪もよく引いていました。不調って、急に不調になるというよりかは、小さなことの蓄積で不調が出ると思うんですけど、そういう小さな不調にすぐに気づくようになり、その都度ケアをするようにしています。自分の体と常に向き合えているので、大きな不調が全然出にくくなりましたね。そうすると、体の中につまりがないので、前よりも更にポジティブになっているかもしれません。 

それで、ヨガのレッスンを受ければ受けるほど、更に「ヨガが楽しい」「もっとちゃんとヨガを学びたい」となり、ヨガ歴半年でRYT200の資格取得の勉強をはじめました。それが、2018年ですね。

 

 

– すごい行動力ですね!ヨガの資格はとっても教えるに至らない人もいると思うんですけど、女優業だけでなくヨガインストラクターとしてもキャリアを積むようになったのはどうしてですか?

裕可里さん:  私は自分で練習する時も、毎回必ずシャバーサナまでやるタイプなんですが、毎回必ず最初に感じたのと同じ「幸せ」という感覚に落ち入るんです。もちろん、幸せになることだけが目的ではないんですけど…例えば、体のつまりや、滞りがない状態の本来の自分に出会えた時って「私、こんなに心地良い体だったんだ」と感じると思うんです。呼吸にしてみて「こんなに呼吸できるの?すごく気持ち良い」とか思えるんじゃないかな…私の場合は、これが本来の自分だっていうことを(ヨガを通して)知ったので、それをみんなに伝えたい!って思ったんですよね。

– 先ほど、同時に色々なことをやるのが苦手とおっしゃっていましたが、女優、ヨガインストラクター、それに加えてドッグトレーナーとしても活動して、辛くはないですか?

裕可里さん:  苦手なのにやってますよね(笑)全然辛くないです!楽しんでやっています。どれも私がやりたいことだし、私の中では全部つながっているんです。

 

原動力は「好き」と「伝えたい」

– 例えばどんなところがつながっているんでしょう?

裕可里さん: 例えば、ヨガは人を整えることだと私は思っています。ドッグトレーニングは犬を整えることなんです。犬を整えようと思った時に、人が整っていないと犬はムードを感じ取るので整わないんですよ。

– 犬って利口ですしね。説得力があります。

裕可里さん: 犬を含めて動物って言葉を持たないので、飼い主のオーラやボディーランゲージを見て会話をしているんです。だから、飼い主の心の状態が、バレてしまうんですね。そのために、私は飼い主さんにもヨガをお伝えするようにしています。「整った状態で、犬と向き合いましょうね」ってお話をしますし、それを大きく発信していきたいと思っています。女優業って芝居をするだけではなくて、自分を発信していくものだと私は思っているんです。その発信には、私の中ではヨガや犬のことも入っているんです。

– なるほど。影響力のある人の発信は、犬好きやヨガ好きの人以外にも届きやすいですよね。

裕可里さん: はい。実は、私が中学生の頃に、犬の殺処分について知る機会があって。日本は先進国なのに、殺処分数の多さが他の国よりも多いんです。一方で、ペットとして売られる犬の数もすごく多い。調べてみると、一度ペットとして飼ったんだけど、飼えなくなってしまい、保健所に連れて行く人が多いということが分かりました。日本って、簡単にペットを飼うことができるんです。全てはそうとは言えないかもしれませんが、お客さんがどういう人で、どういう環境でペットを迎え入れようかっていうのはペットショップからしたらあまり関係ないのかもしれません。けれど、いざ飼ってみたら、ペット禁止のマンションで飼って大家さんにバレて飼えなくなってしまったということがあったり…それって意識の問題だと思うんです。飼う側ももっと慎重になるべきだし、ペットショップも飼い主になる人の住んでいる場所などを含めてライフスタイルが、本当に犬を迎え入れられる環境なのかということを説いてほしいと思うんです。

– 知らなかったです。

裕可里さん: それで、自分に何ができるんだろうって考えた時に、私は発信できる職業でもあるから多くの人に発信していこうと思いました。けれど、きちんとした情報を発信するためには、きちんとした知識を持っていないといけないと思い、ドッグトレーナーの学校に通ってトレーニング資格を取得しました。生き物を扱うのでありとあらゆるケースがありますし、教科書で得ただけの知識って本当に知識だけでしかないんですよね。なので、犬のトレーニングもはじめたんです。

– 職業名は違うけれど、お互いがきちんと作用し合っているんですね。 

裕可里さん: そうですね。私には女優という立場があって、発信できる力ってある。微々たる力かもしれないけれど、犬に興味のない人とか、犬をトレーニングしようって思っていない人にとっても伝えることができる立場にいるのかなって。

– 3つのことを同時にやり続ける原動力は何でしょう?

裕可里さん: 私の場合は、どれも本当に好きだから一つに絞れなかったということもあるんですけど…興味があるものを深ぼっていったら見つかった。だから、原動力も「好き」という気持ちと、「伝えたい」という気持ちの2つです。私はヨガが好きだし、犬が好きだし、そして、お芝居が好きなんです。

– 好きっていう気持ちのパワーは偉大ですね!最後に、今後の目標について教えて下さい。

裕可里さん: 人と直接会う機会を増やしていきたいです。伝えることって、今の時代はありがたいことにSNSでたくさんの方に伝えることができるからそれももちろん続けつつ、人と直接会う機会はたくさんつくって生の声で伝えていきたいです。

– 楽しみです!では、これからは生身の滝裕可里さんにたくさん会える機会が増えていくわけですね。

裕可里さん:  はい。私も生身の人間に会いたいんです(笑)。私が伝えたいことは「自分自身を大切にしてね」ってこと。それって会って言われた方が温かみもあるし、伝わりやすいと思うんです。

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【プロフィール】滝 裕可里(たき ゆかり)

13歳でスカウトされ、2001年映画「Star Light」で主演デビュー。朝の連続テレビ小説「べっぴんさん」(小山悦子役)でもスピンオフ主演を飾り、その後も「仮面ライダービルド」など数々の作品に出演する。代表作に「ウルトラマンギンガS」(杉田アリサ役)などがある。ドッグトレーナー資格を活かし、保護犬預かりボランティアをするなど《より良い、犬との接し方》をSNSなどで発信。ライフワークであったヨガのインストラクター資格をヨガの聖地ウブドで取得し、一人ひとりに寄り添ったヨガレッスンなども行っている。Webマガジン ハレバレにて【滝裕可里のヨガ教室】動画連載中。

Instagram: @takiyukari_official

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桑子麻衣子

桑子麻衣子

1986年横浜生まれの物書き。2013年よりシンガポール在住。日本、シンガポールで教育業界営業職、人材紹介コンサルタント、ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーをする傍、自主運営でwebマガジンを立ち上げたのち物書きとして独立。趣味は、森林浴。



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