ハーバード大教授が教える、パートナーとの関係を改善するための3つの方法

 ハーバード大教授が教える、パートナーとの関係を改善するための3つの方法
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「人生を幸せにするのは何?」ハーバード大学による史上最長の研究をベースにした書籍『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(&books/辰巳出版)より、パートナーとの関係を改善するための3つの方法を一部抜粋してお届けします。

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愛の治療法はただ一つ。もっと愛することだ。

──ヘンリー・デヴィッド・ソロー(米国の作家、思想家)

パートナーとの関係を改善するための3つの方法

優しくしてくれていることに「気づく」

1つめは、パートナーが優しくしてくれていることに「気づく」こと。パートナーに感謝の念を覚えたいちばん最近の出来事は何だっただろうか? 相手がつくってくれた夕食? 肩を揉んでくれたこと? あるいは、パートナーに苛立ちをぶつけたときも、根に持たずにいてくれたことだろうか?

小さな行為を記録しよう。研究によれば、「感謝日記」をつけて感謝したことをしっかり記録と記憶に留めることは有益だ。パートナーがしてくれたうれしいこと、ほんの小さなことに注目して心に留めておくだけでもいい効果がある。人は他人のアラに目を向けがちだが、このシンプルな方法を実践すれば、パートナーの優しさに気づきやすくなる。感謝の気持ちを伝えると、効果はさらに高まる。そもそもパートナーと絆を結ぶのには理由があるし、関係が今の人生をよくしてくれているのにも理由がある──その理由を忘れないことが重要だ(それを言葉にすることも!)。人は感謝されると気分が良くなるものだ。

日記
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いつものルーティンとは違うことをする

2つめは、いつものルーティンとは違うことをすること。日常に追われていると、関係はマンネリ化するものだ。

毎晩、テレビを観ながら夕食をとる。
毎朝のメニューは、コーヒーとオートミール。
毎週日曜日は芝生を刈り、スーパーに行き、毎度同じ夕食をつくる。

いつもと違うことを試してみよう。ベッドに朝食を運んで、パートナーを驚かせてもいい。もしかして、もう何年も近所を散歩したことなどないのでは? それなら、夕食後はいつものルーティンをやめて、二人で近所を散策しよう。週1回の夜のデートを計画し、次に何をするかを交代で企画するのもおすすめだ(相手がサプライズ好きなら、新しいことに挑戦しよう)。

人はみな、習慣やルーティンにはまる。よくあることだ。だが、ルーティン化が行き過ぎると、生活の中でパートナーにきちんと注意を向けなくなるものだ。ルーティンをやめると、新しいものに目が向き、相手を新たな視点で理解し、すばらしさに気づく。また、相手が自分にとって大事な存在だと伝えるシグナルにもなる。

カップルの関係はいつだって「心のダンス」を学ぶ教室なのだ。

散歩
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観察と解釈のステップを実践しよう

3つめは、WISERモデル(※)を実践すること。親密な関係においては、とくに観察と解釈のステップが役に立つ。強い感情がこみあげてきたら、一息おいて、自分やパートナーの心の状態を観察すると、感情の背後にある理由がはっきり見えてくる。動揺しているときに心を鎮める方法を実践すると、関係の表面下にある濁った水が透明になる。

※感情の反応のスピードを落とし、心の顕微鏡で観察するための方法

まず、相手の言動が気に障ったら、即座に反応せず、一息ついて冷静に観察し、自分の反応やそのときに考えていたことを記録しよう。

次に、自分の感情を解釈して、何が起きているのかを理解しよう。なぜこの問題は自分にとって重要なのか? 今、自分は何を考えているのだろう? その思考はどこから生まれたものなのか? 育った家庭環境から学んだのか? 過去の人間関係から学んだのか? 自分の信仰と関係があるのだろうか?

次が難しい部分だが、パートナーの立場になってみよう。パートナーがこんなふうに激しく反応するのはどうしてだろうか? 相手にとってこれが重要な理由は何だろう? 相手はそれをどこで学んだのだろうか? その反応はどこから生じているのだろうか?

厄介な話題は切り出しにくいし、話しづらい。コミュニケーションをいつもと違う方向に導くのも簡単ではない。二人の間に、積年の不満が深く根を張っていることもある。まず、その話題について不安がある、という事実から切り出すといい。ここで役立つテクニックが3つあるので紹介しよう。

1つめは反復リスニングだ。パートナーの意図を自分が正しく理解しているかどうかを確認するのに役立つ。また、自分が相手に関心をもち、共感しようとしていることも示せる。具体的な方法を説明しよう。

まず、何も言わず、パートナーの話にじっと耳を傾ける。

次に、今パートナーが言ったことを、自分の判断を加えず(ここが難しいところだ)反復して相手に伝える。例えば、「こう言っていたけど、合ってるよね?」という具合だ。

2つめのテクニックは、相手の感情や行動の理由を理解していると伝えること。このこと自体が効果的だし、反復リスニングの効果をさらに高めてくれる。自分の洞察力をアピールすることではなく、理解していることを相手に伝えるのが目的だ。「あなたの気持ちや行動は理解できるよ」と伝えることで、共感と愛情の基盤(研究でも人間関係を良好にする力があることがわかっている)を育める。例えば、「気持ちが昂ぶるのもわかるよ」と言ってから、「人に優しくしようとしたからなのね」、と伝えてもいい。

3つめのテクニックは、その会話から少し距離を取ることだ。心理学で「セルフディスタンシング(自分自身と距離をとる)」と呼ばれるもので、他人を観察するように自分の心を眺めてみる。すると、その人(つまり自分)の頭にある考えは一時的なものにすぎないと気づくことがある。マインドフルネスとも共通点が多いテクニックであり、心理学者のイーサン・クロスとオズレム・アイドゥックが多数の研究を行い、有用性を示している。

これらのテクニックを組み合わせれば、話しづらい話題も切り出せるし、話がこじれても感情的になったりせず、相手を理解しようとしていることを落ち着いた態度で伝えられる。

自分たちの関係に合った独自の方法も積極的に編み出そう。怒りややるせなさ、怖れを感じたら、それがシグナルであることを忘れないこと。そういうときこそ、パートナーとコミュニケーションをとろう。表面的な感情の下にあるものを見て、パートナーも自分と同じくさまざまな葛藤と戦っていることを思い出そう。

人は誰でも、自分の強みや弱み、怖れや欲望、情熱や不安を人間関係にもちこむ。だからこそ、二人が踊る「心のダンス」は他の誰のダンスとも違ったものになる。

「私たちは本音を隠したりしないんです」とグレース・デマルコは2004年、レオとの関係について研究チームに語っていた。「衝突を感じたら、自分が感じていることを言葉で伝えます。意見がまるっきり違っていても、違いを尊重します。むしろ、この違いが必要なんです。例えば、彼は陽気なのが好きだし、私は落ち着いているのが好き。それでいいんです」

パートナー
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書籍
「グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない」(辰巳出版)

この本の著者

・ロバート・ウォールディンガー Robert. J Waldinger
ハーバード大学医学大学院・精神医学教授。マサチューセッツ総合病院を拠点とするハーバード成人発達研究の現責任者であり、ライフスパン研究財団の共同設立者でもある。ハーバード大学で学士号取得後、ハーバード大学医学大学院で医学博士号を取得。臨床精神科医・精神分析医としても活動しつつ、ハーバード大学精神医学科心理療法プログラムの責任者を務める。禅の師でもあり、米国ニューイングランド地方はじめ世界中で瞑想を教えてもいる。

・マーク・シュルツ Marc Schulz
ハーバード成人発達研究の副責任者であり、ブリンマー大学の心理学教授でもある。同大学のデータサイエンスプログラムの責任者であり、以前は心理学科の学科長を務め、臨床発達心理学博士課程の責任者でもあった。アマースト大学で学士号取得後、カリフォルニア大学バークレー校で臨床心理学の博士号を取得。ハーバード大学医学大学院で博士研究員として健康心理学および臨床心理学の研鑽を積んだ後、現在は臨床心理士としても活動している。

【訳者プロフィール】
児島 修 Osamu Kojima
英日翻訳者。立命館大学文学部卒。主な訳書に、パーキンス『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』、ハウセル『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』(ダイヤモンド社)、リトル『自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義』(大和書房)、ケンディ『アンチレイシストであるためには』(&books)などがある。

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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