研究からわかった!人間関係が良好な人ほど、人種や性別、年齢に関係なく死亡リスクが低い!?

 研究からわかった!人間関係が良好な人ほど、人種や性別、年齢に関係なく死亡リスクが低い!?
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「人生を幸せにするのは何?」ハーバード大学による史上最長の研究をベースにした書籍『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(&books/辰巳出版)より、世界5地域で男女を対象に実施された研究からわかった「人間関係と死亡リスクの関連性」について一部抜粋してお届けします。

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筆者のマークは、『サイエンス』誌に掲載された驚くべき重要な論文を思い出した。世界五地域で男女を対象に実施された5つの研究を分析し、人間関係と死亡リスクの関連性を調べた論文だ。5地域には、ジョージア州エバンス郡とフィンランド東部が含まれていた。

1960年代に米国南部で育ったアフリカ系の女性とフィンランドの凍てつく湖の岸辺で暮らしていた白人男性では、人生のありようはかけ離れていたはずだ。少し考えれば想像がつく。5つの研究はすべて前向き縦断研究だった。本研究と同じく、時間とともに展開する人生を観察し続けたものだ。

他の多くの研究と同じく、男女の両方において、重要なのは地理と人種だった。平均死亡率はエバンス郡が最高で、フィンランド東部が最低だった。エバンス郡内では黒人のほうが全年齢層で白人より死亡リスクが高かったが、この差はフィンランドとエバンス郡の差よりも比較的小さかった。とりまとめると、こうした違いは際立っており、重要な意味があった。しかし、もっと重要な発見もあった。少し俯瞰して見ると、5地域の男女のデータには目立って共通するパターンがあった。人間関係が良好な人ほど、年齢に関係なく死亡リスクが低かったのだ。ジョージア州の片田舎に暮らす黒人女性であれフィンランドの白人男性であれ、人とのつながりが強いほど、どの年のデータでも死亡率が低かった。

人間関係
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場所や属性の異なる集団に一貫して見られる結果は、科学において「再現性」と呼ばれるもので、なかなかお目にかかれない貴重な現象だ。科学では、一つの研究で興味深い知見を得ただけでは、一件落着とはならない。とりわけ研究対象が人生のように複雑なものである場合、複数の研究において一貫性や同じ方向性のある結果が得られることが何より重要だ。再現性のある結果が得られてようやく、まぐれではないという確信が得られる。

5地域の研究分析論文の発表から20年余りが経った2010年、はるかに大規模なもう一つの研究によって、人間関係と死亡リスクの関連性は揺るぎないものになった。ジュリアン・ホルト=ランスタッドらは、世界各地(カナダ、デンマーク、ドイツ、中国、日本、イスラエルなど)で実施された148件の研究(合計被験者数30万人以上)を分析した。結果は、先の『サイエンス』誌の論文の内容と一致していた。年齢層、性別、民族を問わず、よい人間関係と長寿には強い正の相関があった。実は、ホルト=ランスタッドらは相関を数値として割り出していた。驚くことに、どの年のデータでも、良好な人間関係は生存率を50%以上高めていた。全研究を通してみると、他者とのつながりが最も少ない人の死亡率は、つながりが最も多い人に比べ、男性で2.3倍、女性で2.8倍高かった。喫煙とがんの相関に匹敵する強い相関だ(米国では、喫煙は予防可能な死因の筆頭とされている)。

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ホルト=ランスタッドの研究は2010年に完了した。その後も、ハーバード成人発達研究も含め、数多くの研究が、場所や年齢、民族、背景にかかわらず、良好な人間関係と健康にはつながりがあると裏付けた。大恐慌時代にサウスボストンで育った貧しいイタリア系移民の子どもの人生は、1940年にハーバード大学を卒業して上院議員になった人の人生とは違うし、現代の有色人種の女性の人生とはもっと違う。だが、人間であるという基本条件は同じだ。ホルト=ランスタッドらの研究のように数百件の研究を分析すれば、良好な人間関係がもたらすメリットは、地域や都市、国、人種が違っても大して変わらないことがわかる。もちろん、多くの社会に格差があるし、社会の慣習やしくみが多くの格差や苦痛を生んでいるのは議論の余地のない事実だ。しかし、人間関係が幸福と健康に与える影響力には普遍性がある。

書籍
「グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない」(辰巳出版)

この本の著者

・ロバート・ウォールディンガー Robert. J Waldinger
ハーバード大学医学大学院・精神医学教授。マサチューセッツ総合病院を拠点とするハーバード成人発達研究の現責任者であり、ライフスパン研究財団の共同設立者でもある。ハーバード大学で学士号取得後、ハーバード大学医学大学院で医学博士号を取得。臨床精神科医・精神分析医としても活動しつつ、ハーバード大学精神医学科心理療法プログラムの責任者を務める。禅の師でもあり、米国ニューイングランド地方はじめ世界中で瞑想を教えてもいる。

・マーク・シュルツ Marc Schulz
ハーバード成人発達研究の副責任者であり、ブリンマー大学の心理学教授でもある。同大学のデータサイエンスプログラムの責任者であり、以前は心理学科の学科長を務め、臨床発達心理学博士課程の責任者でもあった。アマースト大学で学士号取得後、カリフォルニア大学バークレー校で臨床心理学の博士号を取得。ハーバード大学医学大学院で博士研究員として健康心理学および臨床心理学の研鑽を積んだ後、現在は臨床心理士としても活動している。

【訳者プロフィール】
児島 修 Osamu Kojima
英日翻訳者。立命館大学文学部卒。主な訳書に、パーキンス『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』、ハウセル『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』(ダイヤモンド社)、リトル『自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義』(大和書房)、ケンディ『アンチレイシストであるためには』(&books)などがある。

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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