【若返りの医学】たった1分でも効果はある?研究結果が証明!死亡リスクを下げる適度な運動のルール

 【若返りの医学】たった1分でも効果はある?研究結果が証明!死亡リスクを下げる適度な運動のルール

「健康のためには適度な運動をしましょう」と言われても、どれくらい運動したらよいかわからない…という方も多いのでは? 『若返りの医学 ―何歳からでもできる長寿法』(さくら舎)より、研究結果をもとにした、死亡リスクを下げる運動のルールについてご紹介します。

広告

たった1分でも運動効果はある

運動の効果を得るには、どのような運動をどのくらいすればいいのでしょうか。

これまで、「健康のためには適度な運動をしましょう」といわれ、「適度な運動」の目安として、ウォーキングなどの中程度の有酸素運動を週に150分、できれば3〜5回程度に分けて行うことが推奨されてきました。これを裏返すと、適度な運動でなくては健康効果が得られないというようにも感じます。しかし、これも古い常識です。

近年、アメリカのコロンビア大学によって発表された研究報告によると、立ち上がって身体を動かすだけで、どんな運動でも、またどのような強度であっても、死亡リスクを減少させる効果があることがわかりました。また、1日のうちの、座って過ごす30分間を軽い運動に置きかえるだけで死亡リスクが17%下がり、さらに中程度から激しい運動に置きかえると運動の効果は2倍に上がり、死亡リスクは35%低減しました。しかも、1分や2分といった短い時間であっても、運動による恩恵を得られたとも報告されています。

軽いストレッチ
AdobeStock

またこれまでは、激しい運動をすると呼吸量が急増して体内で活性酸素の発生をうながすため、激しすぎる運動は逆効果とされてきました。運動強度がきつすぎると心房細動や冠動脈疾患などの深刻な心臓病のリスクが上昇することを示した研究報告もありました。しかし、これらもまた古い常識です。

アメリカのクリーブランドクリニックの研究では、運動強度が高いほど死亡リスクが低下するとの結果が出たそうです。70歳以上では、強度の高い運動をする人は、平均的な運動をする人に比べて死亡リスクが30%低下し、もっとも運動強度の高いエリートでは運動強度の高い人に比べて死亡リスクがさらに約30%も低下しました。研究レポートでは、「心疾患や心肺機能の障害、骨や関節の疾患などがある人は、医師に相談して適切な運動の仕方を指導してもらうなど調整をすれば、安全に運動を続けられる」ことが報告され、「運動不足の状態は、心臓血管疾患や糖尿病、喫煙習慣などのよく知られた健康リスクと同じか、それ以上、身体に悪い」との見解が示されています。

どれだけ長時間運動を行っても強度が不十分であれば、運動効果は出にくく、反対に運動強度が高すぎると傷害リスクも高くなり、トレーニングを継続することが難しくなります。目的にあわせて適切に運動強度を設定することが、運動を効果的に行うために不可欠です。

運動強度
AdobeStock

「適度な運動」神話を捨てよう

日本では3人に1人が運動不足といわれています。その中には、足腰に不安があるなどで運動ができないという人もいらっしゃいますが、多くは「運動が苦手」とか「忙しくて運動をする暇がない」という人たちです。そのような運動習慣のまったくない人に「身体のために適度に運動しましょう」「毎日30分ぐらい歩きましょう」といっても、腰が引けてしまうでしょう。「適度な運動」が足かせになって、ますます運動から遠ざかっていたという人も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

ですが、どんなに運動が嫌いな方でも、立ち上がったり歩いたりすることはできるでしょう。それだけでも立派な運動であることが、研究によって示されています。「適度な運動」にしばられることはないのです。

1日に消費するエネルギーで大きな割合を占めるのは、日常生活でのこまめな動きです。まずは、テレビを見ながらあるいはスマホをいじりながら寝転んだりじっと座っている時間をなるべく少なくして、立って何かをしましょう。たとえば家の中なら、洗いものや掃除といった家事に加えて、出したものはすぐに片付けたり歯磨きしながら部屋を歩いてみたり。外でも、車を使わないで歩く、階段を使う、仕事の休憩時間に身体を動かすなど、日常生活の中でこまめに動くことでエネルギー消費を増やすことができます。それを習慣化することで、長期的に運動量を増やすことができます。

身体をこまめに動かす習慣がつけば、運動もさほど億劫に感じなくなるはず。といっても、はじめから頑張らなくていいのです。たった5分、10分の運動でも、何もしないでいるよりは、健康にもたらす効果が大きいことがわかっています。ラクな運動から始めて、少しずつ強度をあげていきましょう。

また、「足腰の関節などに不安があって運動を控えている」という方も、医師と相談しながら、身体を動かしてみてください。運動をすることで関節の痛みが軽減し、高齢者では運動によって転倒や転倒によるケガのリスクも低くなることがわかっています。

すでに運動習慣があるという方は、これまでより少し強度をあげてみてください。運動の強度をあげるというのは、心拍数をあげるということです。すると血管が拡張し、皮膚を含む全身の血流が活発になります。血流の増加によって細胞への酸素の供給量が増えると同時に、老廃物が体外へと流し出されます。その結果、健康的な輝きが手に入るというわけです。運動を習慣として維持し、少しずつでも強度をあげていくことが望ましいとされています。

先ほどのクリーブランドクリニックの研究では、運動を習慣として続けている人と運動不足の人との差は、時間が経つごとに拡大していったそうです。ですが、運動を始めるのに遅すぎることはありません。むしろ、これを知った「いま」が絶好の機会です。この本をちょっと置き、いますぐ立ち上がってデスクまわりを歩いたり、腕や首をまわしてストレッチをしてみてください。運動習慣のスタートです。

運動
AdobeStock
画像
若返りの医学 ―何歳からでもできる長寿法』(さくら舎)より

著者/太田博明
1944年、東京都に生まれる。1970年、慶應義塾大学医学部を卒業し、1977年に慶應義塾大学医学博士を取得。1980年、米国ラ・ホーヤ癌研究所に留学。1991年、慶應義塾大学病院産婦人科に女性医療の嚆矢となる中高年健康維持外来を創設。当時から更年期ばかりでなく、高齢者の健康維持・増進に着目。同年同大学病院漢方クリニックが開設され、産婦人科から兼担講師として唯一参加。1991年に慶應義塾大学医学部専任講師、1995年、助教授となる。2000年、東京女子医科大学産婦人科主任教授(母子総合医療センター主任教授も兼務)。2010年より国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授、山王メディカルセンター女性医療センター長。2019年より藤田医科大学病院国際医療センター客員病院教授。2021年より川崎医科大学産婦人科学2特任教授、同大学総合医療センター産婦人科特任部長。
日本骨粗鬆症学会理事長、日本抗加齢医学会理事を務め、現在は同学会監事。1996年に日本更年期医学会(現日本女性医学学会)の第1回学会賞受賞。2015年に日本骨粗鬆症学会学会賞、2020年に日本骨代謝学会学会賞をいずれも婦人科医として初受賞。著書には『骨は若返る!』『筋肉は若返る!』(以上、さくら舎)、『抜群の若返り!「骨トレ」100秒』(三笠書房)などがある。監修には『AGEsと老化』(メディカルレビュー社)、『相談しにくいちつとカラダの話』(朝日新聞出版)、テレビ出演にNHKの「あさイチ」「あしたが変わるトリセツショー」、NHK BSプレミアム「美と若さの新常識」などがある。

広告

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

軽いストレッチ
運動強度
運動
画像